カーボンニュートラルにギアを入れる

先進的なコペンハーゲンについて、キャサリン・アーリーが報告します。

翻訳:斉藤 孝子

グラスゴー、エディンバラ、マンチェスター、ノッティンガム、ブリストル、ロンドンに共通するものは何でしょう?どこもすべて、カーボンニュートラル [排出される二酸化炭素を自然エネルギーの導入などによって相殺すること] を目標に掲げ、住宅、輸送、エネルギーシステムからの排出を大幅に削減する計画があります。目標日は今のところ 2030 年から 2050 年の範囲ですが、気候変動は非常事態として扱わねばならないという最近の科学的警告の厳しさを、どの都市も分かっています。

 デンマークでは、CPH2025 気候計画を採択した 2012 年以降、コペンハーゲンが同様の計画に取り組んでいます。これは、2025 年までに市をカーボンニュートラルにすることを目指しており、成功すれば、このような目標を達成した世界初の首都になります。

 市の気候プログラムのディレクター、ヨルゲン・アビルガード (Jørgen Abildgaard) によると、コペンハーゲンは 2005 年以降、排出量を 42% 削減。この削減は人口が 16% 増加したときに起こりましたが、これには主に熱と電力の複合生産でのバイオマス使用の増加とエネルギーを作る風力発電の増加が寄与しました。

 市内約 20,000 の街路灯を LED 電球に取り替え、2010 年比で 57% の省エネを実現。既に 100 年稼働している地域暖房ネットワーク(各住戸内で行うのでなく、近隣の発電所でできる熱が供給されるシステム)は、システム内の蒸気を温水に置換し、供給パイプの温度を下げることで、大幅な節電を達成しました。

 すでに自転車に優しい都市、コペンハーゲンは、港廻りに自転車専用レーンや歩道を新設し、市内各所間のリンクをし易くしました。2010 年以降、交通機関からの CO2 排出量は 9% 減、市内道路網の運転キロ数は 3% 減、そして自転車交通は 12% 増になりました。

 しかし、計画が 2017 年から 2020 年までの第 2 段階に入ると、CO2 排出量を削減するための安価で簡便な手段は全て尽きたことから、市は更に多くを成さねばならないと認識しました。アビルガードによれば、交通渋滞、車両の新型燃料への変換、市の省エネは、特に難題です。

 実際、混雑地帯やエネルギー税の変更などの国の施策が実現できておらず、その移行が予想よりも遅れていると、市は認めています。車所有は上昇し、市の人口増加により更に悪くなることが予想されます。

 検討中のアイデアのひとつに「サービスとしての移動」があります。これは、住民や旅行者に対し、自家用車に代わる手段として、バス、電車、カーシェアリング、自転車、タクシー等、日々の移動サービスの注文と支払いが簡単にできるサブスクリプションスキーム [製品やサービスなどの一定期間の 利用に対して代金を支払う方式] を導入することです。これは 200 の家族で実験されており、成功すれば市全体に展開する予定です。

 最終的にコペンハーゲンが計画に成功する鍵は、協働、つまり、国際的に市民、そして民間部門にある、とアビルガードは言います。「都市の前提条件の 1 つは、ステークホールダーとの緊密な協働関係です。我々は計画を作ることはできますが、それを導入しなければならないのは正に民間部門です。彼らには投資力があります。」と氏は説明します。

 たとえば、市は、地域暖房事業者 HOFOR やエネルギー企業エルステッド (Ørsted) やアセア・ブラウン・ボベリ (ABB) などの企業と共に、開発中の新区域ノードヘブンにおいて、エネルギー生産と建物や交通部門での使用を統合するサービスや製品を検証するために協働しています。このプロジェクトでは、エネルギーの柔軟性を高めるために、再生エネルギーをより効率的なものにしながら、リアルタイムデータを使ってサブシステムやコンポーネントを賢く制御します。

 ニューヨークの気候適応、北京の水と地域暖房プロジェクトなど、世界中の街や都市でプロジェクトが開始されました。アビルガードは言います。「私たちには国際的な協力が必要です。自力で行うには私たちは余りに小さすぎます。」

キャサリン・アーリー:TheEcologist.org のチーフレポーター

Geared Up To Go Neutral • Catherine Early

316: Sep/Oct 2019 

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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