未来の先生

教育システムは環境危機の一部です。私たちは、消費主義に支配されない子供たちの自由な心を育てる必要がある、とアンソニー・エルドリッジ・ロジャーズは著します。

翻訳:斉藤 孝子

 環境問題の解決策を探る会話はどれも、私たちの人間としての行為、毎日の行い、すなわちどう暮らし、どう食べ、どう動き、どう消費し、どう温かく暮らし、そしてどう街を造るかに戻ってきます。エコロジー的に健全な未来への鍵は、子供たちや若者が何をどう学ぶかに在ります。つまり、彼らの周りの人々、あなたや私、メンターやロールモデルからこの世界について何をどう学ぶかです。

 私は中毒症回復分野でも仕事をしてきました。依存症患者が、依存している物質や行動から自ら立ち直ろうとする時に経験する困難の中には、類似点が見られ、それらを研究しています。彼らは変化することに抵抗します。同様に、私たちも、受けてきた教育のせいで、それが目の前にある課題への健全な対応策にもかかわらず、ライフスタイルを変えることに抵抗があります。熱心な環境保護主義者でさえ、その主張を貫くこと、例えば、動物性食品の摂取を止めビーガンを支援する、あるいは不必要に旅客機に乗らないなど、なんと難しいことでしょうか。長年の習慣はなかなか変えられません。社会習慣を変えるのは更に難しいです。

 しかし、そうある必要はないのです。行動抵抗(変えることが最善かつ最も論理的な行動指針だと分かっているのに、変えようとしない行動)の原因の多くは、子供時代および大人への道を見つけようとしていた若い頃に植えつけられます。

 教育機関の事なかれ主義の問題は、私たちの日々の行いが健康に暮らせる環境を壊している(それはスローモーションでの危機です)と分かっているのに、本質的に過去、私たちを今ここに連れてきた過去のままでいることです。教育システムは富の発達の産物です。私たちが過去 2 世紀にわたって恩恵を受けてきた富は、天然資源や人的資源を持続不可能に搾取してきた上に築かれました。そこから生まれた教育システムですから、そのやり方に合わせていたし、今でも大部分がそのままです。教育システムは、ここ数十年、消費社会のすさまじい席巻とその社会状況を支えることに、また残念ながらいわゆる知識人や株主、企業の強欲に縛られてきました。 教育システムそれ自体が異なるパラダイムに根ざし、明日の問題解決に力を入れている種々の関心事と共に在るのでない限り、今私たちが必要だと思っている世界を、子供や若者たちが作り出すような影響を持つことはないでしょう。

 私たちが問うべきは、教育や教えられ方が、必要な時に自らの行いを変え易くするのか、それとも難しくするのかという質問です。

 世界の教育制度は、私たち皆が直面している事柄と別のところに存るはずがありません。私たちは問題の一部になっていることに責任を取らなければならないのです。

 どのように教え、また若者たちにどう学んで欲しいかという点で、私たちは危機に直面しています。それは子育ての問題でもあります。子供のためにする教育上の選択について、親は実際どれ程理解しているか、つまりそれが私たち皆の利益になる選択なのかを自問する必要があります。

 驚くことに、教育機関の大部分は、20 年後の世界は 10 年前とほぼ同じであるかのように教えています。これに基づいた決定は、幼稚園、小学校、その先へと押し込まれるすべての 5 歳児にとって迷惑千万です。子供時代を本質的に奪われたこれらの子供たちの多くが、信じ難い競争圧力に直面し、その結果、うつ病や不安など精神衛生上の問題を頻繁に発症します。更に悪いことには、自動化と緊縮化の襲来で急速に変化したり消えつつある時代遅れのカリキュラムを彼らは教わるのです。

 未来を、願わくば私たち皆が確実に生き残り繁栄する別の未来を望むのなら、子供たちを教育システムの最悪の局面から救い、子供たちが直面する脅威に対し反動的に解決しようとする動きを押しとどめねばなりません。

 私たちは過去へでなく、未来へ早急に進まねばなりません。教育達成度を測る、統計、SATS [米国の大学進学適性試験]、テストや試験崇拝等、従来のやり方に異を唱える勇気が必要です。

 今の形での消費主義に隷従しない自由な心、自然界と健やかに繋がり、変化を恐れず、自分の前途に胸躍らせ、不安に苛まれない心を、子供たちの中にどう育てるかに関心を持たねばなりません。最も重要なことは、エコロジカルな変化が啓発されているにもかかわらず、それを妨げている経済階級の中で恐れずに役割を担える若いリーダーを育成することです。

 ですから、未来をより良いものにするために私たちの努力が投入できる領域があるとすれば、それは、産業革命初期に作られ、私たちを現在の環境危機へと導いた教育システムの抑圧から、子供や若者を解放することです。

 私たちの多くが失ったものを育てなければなりません。つまり私がグリーンマインドと呼んでいるものです。技術革新に喜び、その恩恵を受けながらも、土から萌え出る草に素足をしっかりおろして地球とつながる心です。

 これは喫緊の問題なのです、というのも変化の速度が速く、私が 25 年前想像したより速いからです。

 変化に抵抗する時間はもうありません。未来の子供たちは、それに抵抗する教師や大人を許さず、最後には私たちを排除するでしょう。

 次の 5 つに従うなら、私たちは教師、教育者、保護者として、子供たちの頭と心の解放に向けて動き出せます。

 まず、尊重と情緒的知性に焦点を当てましょう。それは管理薬としての承認に特徴づけられる恐怖に基づく熾烈な競争や威圧、トップに入り損ねたことに対する罰としての不承認とは真逆に在ります。

 第二に、協力は私たち人類が成功した最高の進化戦略です。子供や若者とあらゆるレベル、あらゆる年齢層で協力することに焦点を当てましょう。学習を高める中でどの声も同等に聞き入れます。

 第三に、自然界での遊びを奨めて保護しましょう。地球をよく知らなければ、地球への深い理解はあり得ません。つまり我が家をよく知らないのと同じです。子供たちには、足先に草を感じ、風や雨を顔に感じ、花のかぐわしい香りを嗅ぎ、鳥のさえずり、虫の鳴き声や羽ばたきが聞こえることが必要です。子供たちは自然界で遊ばねばなりません。

 第四に、学習過程を管理することはできるだけ控えましょう。安全と実用に必要なことは指導します。それ以外は、何を、いつ、どのように、誰と一緒に学びたいのか、本人たちに任せます。その興味や情熱を高め追求できるよう、その自主性に任せます。

 最後に、これも重要なことですが、指導は今述べた自主性が発達するにつれ、ファシリテーション(「facilitate」という言葉はたやすくするの意)へと変容する必要があります。

 これら 5 つを実行するなら、私たちは多くのことができ、教師、親、メンター、年長者としての仕事が新しい方法で生き生きとしたものになるでしょう。今日そして明日の子供たちは、世の中で直面しなければならない課題について、問題が拡大する中ほぼ座視するだけだった世代にでなく、私たちの中に、大人たちが結束するさまを見るでしょう。この惑星の健全で、より緑豊かな未来のために、真のパートナーシップを持つことができるのです。

アンソニー・エルドリッジ・ロジャーズ (Anthony Eldridge-Rogers):社会起業家。「Jump、Fall、Fly: From Schooling to Homeschooling to Unschooling」の共著者。www.jumpfallfly.com / サーカス、演劇、独創力により、希望ある変化、幸福、環境によい行動を促すよう地域社会に働きかける社会企業、Jump Fall Fly を共同設立。www.jumpfallfly.org

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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