「機械的」ケアを人に優しく

チャーリー・ジョーンズとマーティン・シーガーは、医療スタッフが自発性とつながりに対してより心を開く方法を概説し、それがなぜ重要なのかを説明します。

翻訳:沓名 輝政

優しさとは微妙なことです — 「運用化」しようとしたり、拡大しようとしたりするとたちまち、その本質の何かが失われます。 それは今まさに捕獲されようとしている野生動物のイメージを思い起こさせます。 ある高齢者の病棟で、末期の病気の男性がこうコメントしました。シフトを終えた後の看護師が、彼にホットチョコレートを作ってくれたことに感謝していると。 彼は彼女が親切にしようと決め事以上のことをしてくれたと感じ、気にかけてくれたと感じ、感動し — 「彼女は私のために規則を破ってくれたようなのです」。 当の病棟医長が善意でこれを説明するのに紹介してくたのは、病棟での日常的ケアの一部としての「ホットチョコレート周り」です。自発的な優しさの行為ではなく、ケアの「機械化」の一部となっていたのです。

 ヘルスケアは、本能的で自然な優しさによって導かれる非常に多くの人々にとっての天職です。 思いやりの行為は、苦痛、病気、死(それ自体で感情的な犠牲が必然なもの)に関わる誘いであると私たちは信じています。 思いやりのある人から影響を受けたとケアする人が認められない限り、思いやりは痛みや苦しみを和らげるために作用できません。 このつながりは、苦しみにおける変容の心理的および精神的な基本です。 他者と心情や意向で触れて触れられることは、安心と心地よさを可能にするつながりを生み出します。 これは、私たち全員が他者の反応を認識し理解することを模索しているときの、ゆりかごから墓までの間に起こります。 それは私たち共通の人間性の一部です。

 組織は、人々の生活の痛みを伴う現実からスタッフを保護するように構成することができます。 例えば、質問のチェックリストに重点を置くことで、人間として平等に患者とつながり、発生したことすべてに対応するのではなく、明確な構成と確実性をもたらすことができます。 スタッフは公平無私の感覚を持つべきだとみなすニーズは(よく「専門家であれ」と言われるもので)、患者や同僚との思いやりのある関係を築くのに必要な感情から外れる危険性を伴います。専門家の一面としてあるのは、個々の好みや個人的なつながりが客観的で公平な意思決定のプロセスを妨げないようにすることです。 ただし、この感情面の公平さは、組織的ケアの失敗の中心になることがあります。

ケアするために、私たちは感じる必要がありますが、時に感情は役に立たない筋道に私たちを誘うことがあるのです。 思考を伴わない感情では、時には私たちが他人への気遣いなしに、まったく不適切な方法で対応することになり得ます。 解決策は、行動を起こす前に感情に気づくことができるように、気持ちに意識的な気づきを持たせることであり、この方法が状況に対処するための最善策であるかどうかを検討することです。 これは人々が学んで開発できるスキルです。

 地域レベルで、思慮深く練習する会合やマインドフルネスのグループが提供しているであろう落ち着ける場所では、思考して、そこに在り、常に「行う」ことはしません。その場所では、私たち自身や他人の脆弱性を認め、受け入れることができるの場です。 感情は思考と組み合わせることができます。 個々人やチームは、価値観とつながり直す方法として、自分にとって何が重要かを振り返ることがますます奨励されます。 私たちの経験によると、このような会合は役立つことがありますが、準備と維持が困難です。 また、それらは、より広い社会的問題にあてる絆創膏として個々の療法が機能する方法と多くの共通点を持つと言えます。 私たちはヘルスケアシステム全体の生態学を考慮しなければなりません。

 ケアすることは共感、暖かさ、誠実さを含む対人関係の問題です。 これらの重要な人間の資質は主観的に経験するのが最も簡単なものですが、客観的な結果を重視するヘルスケアシステムでは、ケアの精神的な本質が失われるか希薄になる可能性があります。 ケアは、ケアする人の精神的状態と同程度にしかなり得ず、ケアする人の精神的状態は、支援と労働環境の改善に依存しています。

 ケアする人は、自身のエネルギーが絶えず補充されるように、他の人々との関係を育む必要があります。 これを実現するには、基本的な心理的ニーズに沿って、ケアする人のニーズを認識し、それらを満たすように作業環境を設計する必要があります。

 私たちが「心理的に安全な」ヘルスケア環境と呼んでいるのは、全員が関与していると感じる環境です。それは、会話が日常的に行われる環境で、その目的は困難な感情を通して話すことで、人々がリフレッシュして活力を取り戻して、続けられるようにすることです。またそれは、患者さんが、覚えていて心に留めてくれていると感じるだけでなく、スタッフもそうだと感じる環境です。したがって、質の高いケアを確実にするための最も実用的なステップの1つは、人間としてケアスタッフをケアすることです。心理的な安全性を生み出す単純な行動として挙げられるのは、交代で話すこと、共感、「恐れなく考えていることを言う」という自由です。困難を抱えている同僚との困難な会話(例えば、チームミーティングで)を受け入れるために、包み隠さず厄介で悲しいことについて話すことができなければなりません。私たちは、これらの行動にはある程度の時間がかかること、そしてヘルスケアはペースが速く、非常なストレスがかかることを認識しています。焦点が効率とルールにあると、失うものがとても大きいのです。

 ケアはそれを提供している人々の心の状態に見合うだけ効果的になり得ます。 これは感情的なエネルギーを消費する要因を制限し、そのエネルギーを与える人々を強化することを意味します。 この仕事は、セルフケアや個々の「回復力」に任せることはできないものであり、組織全体で支える関係を維持するシステムを用意する必要があるのです。

患者が、一人の人間として、耳を傾けられ、世話をされ、関わってもらっていると感じた場合、自分たちがヘルスケアの前向きな経験をしたと感じる可能性が高く、そしておそらく自己管理できるよう支えられているとより強く感じて、健康を自己管理しやすくなります。これをより現実化するには、ケアする人が、本当に患者と関わり合うエネルギー、集中力、時間がある精神状態で維持されることだと、私たちは信じています。 私たちは、ケアする人のケアをせずして、患者のケアをできないということです。 人間の健康において、最も強力な要因は人間関係に気を配ることです。 人間関係を尊重することによって、私たちは健康上での成果を最適化し、より思いやりのある職場環境を可能にし、真に効率を改善します。

基本的な心理的ニーズ

私たちの考えでは、人間の状態の上位5つの普遍的な心理的かつ精神的ニーズを以下のように単純化できます:

愛される

聞いてもらう

ふさわしい場に居る

新たなものを生み出す

意義と目的を持つ

これらの普遍的なニーズは、私たちがケアをする側であれ受ける側であれ、全員に等しく当てはまり、ヘルスケアの開発と実施において留意されるべきです。

チャーリー・ジョーンズ (Charlie Jones) は North Bristol NHS Trust の臨床心理学者です。マーティン・シーガー (Martin Seager) は、臨床心理学者/成人心理療法士です。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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