マオリ族の伝統が家族の修復に役立つ


伝統的な文化からインスピレーションを受けた、家庭内の揉め事への対処方法は子どもに良い影響を与えているとアンドリュー・パップワースとティム・フィッシャーは言います。

北ロンドン、カムデンのコミュニティホールで、人々のグループがとても個人的なディスカッション(家族による家庭内虐待の認識とどのようにその問題を解決するか)に集中していました。そのミーティングではアルナと、3才の娘のルビ、そしてルビの父親であるアビックが中心でした。 「家庭内虐待はミーティングの最初からディスカッションの議題に挙がっていました。そしてそれが子どもや家族にとって悪いということも」とアルナは言いました。「私の家族は起こったことに対する懸念を現し、彼らがどんな形であれ虐待を受け入れるつもりはないことをはっきりさせることができました。私にとって、家族の両サイドが起こったこととそれが間違っていたのだということを受け入れることが重要でした」 このイベントはカムデン・ファミリー・グループ・カンファレンス・サービス (Camden Family Group Conference Service) の独立したコーディネーターによって組まれた、同じような家族会議のうちのひとつでした。これらのファミリー・グループ・カンファレンスの目的は、拡大家族を巻き込んで全員に発言の機会を与えることで、ソーシャルワークのプロと家族のパワーバランスを調整することです。マオリ族の慣例 過去20年に渡って発展してきたこのやり方は、ニュージーランドの原住民マオリ族の経験をなぞるものです。1980年代、ニュージーランドのソーシャルワーカーたちはマオリ族のコミュニティからの懸念へ反応を示し始めました。マオリ族の人々は保護される子どもたちの多さや、子どもたちが非マオリ族の機関や世話人の元に移動させられること、そしてたくさんの子どもたちが受ける虐待を恐れていました。 マオリ族たちは長い時間かけて確立されてきた彼ら独自の、家族のネットワークでミーティングを開いてコミュニティの子どもたちや家族が直面する問題を話し合い解決する方法を教えました。ニュージーランドではソーシャルワークの危機に陥っていたので、マオリ族の慣例を試してみることになり、そして1989年には大幅に法律化されました。その頃から、(どのコミュニティであれ)ニュージーランドの子どもたちが家庭で危害や排除に直面している状況はファミリー・グループ・カンファレンスで議論されるべきものとなりました。これは問題を法廷に持っていく前にしなければならず、法廷に持っていくのはそれでも解決されなかった場合のみです。この慣例は今やイギリスを含む他のいろんな国でも広がっています。 このモデルを採用することは、研究によって裏付けられているように、解決策が家族で作られて家族に根付いているということです。大抵自分たち自身にあるものが使われますが、時には法廷機関からのどんな支援が必要かを決めることもあります。このことによって、プロのソーシャルワーカーによって決められた解決策(例えそれが一等親と話し合われたものであっても)よりも永続的で持続可能な解決策を得ることができます。プロのソーシャルワーカーの存在は家族を駆り立てて責任を負う気にさせます。プロがいないと、家族がいい決断ができ、そしてその機会があるというポジティブなメッセージになります。 ファミリー・グループ・カンファレンスを通じて家族と話し合い、そのモデルの使用が伸びていくさまを見るのはとても楽しいです。ソーシャルワーカーのプロとしての私たちにとって、伝統的なプロの権力のある立場で取り組むよりもとてもポジティブです。ほとんどのファミリー・グループ・カンファレンスでは家族がそのモデルを採用して計画を立てるという結果になっています。それらのプランは決まって合意されます。家族のプロたちは想像性に富んだ永続的な解決策が思いつかず諦めていました。家族とプロの関係性が変わり、それが創造的なものであることが明らかになりました。ファミリー・グループ・カンファレンスは修復的司法の協議でかなり成功しているアプローチの一部です。カギとなる材料は正直さ、明確さ、(子どもや拡大家族の)参加と、エンパワメントです。決断は家族のメンバーが自分たちで下します。 ファミリー・グループ・カンファレンスを通じて児童虐待や育児放棄を含む難しい問題に取り組むとき、コミュニケーションとその解決策は、家族とプロにとって経験値になります。マオリ族の家族は、そういう難題に取り組むときに重要なのは会って話すことだと昔から知っていました。中には傑出したマオリ族もいて、ニュージーランドの非マオリ族の白人のソーシャルワークという職業が1980年代半ばに危機に陥っていたときに、このことに気づいて、マオリ族が議長をした取り調べの結果、実践方法が大幅に変化しました。 ピーター・ブロック (Peter Block) は著書「コミュニティ:所属することの構造 (Community: The Structure of Belonging, )」で、ファミリー・カンファレンスがどのように構成されるかに関わる必要不可欠なことについて述べています。彼は集まることの重要性を強調しています。そして問題について話すだけではなく、コミュニティが人々の不足しているものではなく持っているものに焦点をあてて組織されているか、また人々にレッテルを貼ることは彼らの潜在能力を最大限に発揮する力を減らしてしまうということも強調しています。パワーバランス どうしてこれがリサージェンス誌の読者に関係があるのでしょうか?ええ、私たちはファミリー・グループ・カンファレンスを用いる経験は楽しく、また権威と人々の力関係を変える可能性についてのいい知らせがたくさんあると考えています。ファミリー・グループ・カンファレンスは様々な力の構造の中で構築されます。そして、対話や合意が達成されるのは家族とプロの機関の平等性がとれているときです。さらに、批判や不信の空気の中でソーシャルワーカーと家族が会うときよりも、はるかに建設的で創造的な結果が得られることがほとんどです。 ほとんどの照会は地域の権威的な法廷機関から来ますが、子どもについての決断を下すのにファミリー・グループ・カンファレンスを用いることは、より伝統的なやり方に対する代替手段です。カンファレンスは家族が受け入れられる公平な場所で開かれます。ファミリー・ライツ・グループ (Family Rights Group) によれば、2017年には84%の地域当局が家族にファミリー・グループ・カンファレンスを紹介しました。 オランダでは、カンファレンスの裏にある原則がよりいっそう考えられています。そこでは、ファミリー・グループ・カンファレンスの発議は法廷機関である必要がありません。今は法律によって、家族のメンバーなら誰でも発議できるようになっていますし、地域当局はそれに対して地域サービスを提供しなければなりません。ファミリー・グループ・カンファレンスはホームレスの問題やメンタルヘルスの要求から起こる困難、これから釈放される囚人の将来や、障害や老化による困難についても取り扱うことができます。 子どもに関するファミリー・グループ・カンファレンスは彼ら自身の現在の問題についてではありません。認識される必要があるでしょうが、プロセス全体にとってカギとなるのは子どもの将来のための計画に家族のネットワークを呼び込むことです。ファミリー・グループ・カンファレンスの効果の証しのひとつは、参加した家族がそのプロセスの支持者になることが多いということです。カムデンでは、メンバーが広報やプロセスにアドバイスをする家族の諮問委員会 (Family Advisory Board) に人々が参加しています。彼らはまた、ファミリー・グループ・カンファレンスに賛同すべきか悩んでいる新しい家族に会うのに立ち会うこともしています。彼らの立場はそうしてきたというもので、それでうまくいっています。希望を与える アルナのような人々にとって、ファミリー・カンファレンスは建設的で変容可能でさえあります。ファミリー・グループ・カンファレンス以降、彼女がいうには家族はルビの最も興味のあることについて協力や対話や計画がしやすくなったようです。そしてアルナはこれが「最も重要なこと」と述べています。 「ファミリー・グループ・カンファレンスを通じて、私たちはお互いをより理解しましたし、それはソーシャルワーカーについても含みます。私たちは課題を片付け、関係性や将来への自信が改善されました」と彼女は言いました。ファミリー・グループ・カンファレンスを編成する上でカギとなる原則・ソーシャルワーカーの懸念に関する情報が明白で正確であること・子どもの拡大家族ネットワーク(親戚や重要な友人)がプロセスに参加すること・プロセスの重要な部分(そして家族をただコンサルティングするのとは根本的に違う部分)は家族のプライベートな時間です。将来の計画を練るためにソーシャルワーカー抜きで家族のネットワークが集まりますが、それがソーシャルワーカーの懸念を解決することになります。そうすれば家族とプロのパワーバランスが変化します。・家族の計画は、子どもを危険にさらすとプロが示さない限りは受け入れられること・子どもを含む全員に発言の機会があること・ファミリー・グループ・カンファレンスは家族が同意した時のみ召集されること(それは家族に課されるべきではありません)そして独立したコーディネーターによって編成されることアンドリュー・パップワース (Andrew Papworth)とティム・フィッシャー (Tim Fisher) はそれぞれ、カムデンのファミリー・グループ・カンファレンス・サービス(カムデンの地方当局の一部)の前支配人と現支配人です。彼らは最近、『ソーシャルワークとソーシャルケアのおけるファミリー・グループ・カンファレンス:意思決定に家族を巻き込む (Family Group Conferences in Social Work and Social Care: Involving Families in Decision Making)』(Policy Press、2018年) の1つの章を書きました。


A Maori Tradition Helps Heal Families • Andrew Papworth & Tim Fisher

Addressing family conflicts is having a positive effect on children


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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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