海を守る5ステップ

人権と環境に関する長年の活動家ビアンカ・ジャガーが、海洋プラスチック汚染に対し一致団結して取り組むことを呼びかけます。

デイビッド・アテンボロー (David Attenborough) は最近次のように述べました。「私たちは何年か、海は非常に広大で、そこに住む生物たちは無限にいるので、自分たちができることなど知れていると思っていました。しかし今、それは誤りだったと分かります。 海は人間の歴史の中でこれまでにない脅威にさらされています。」 地球は70%が海洋で、太平洋だけでも地球の半分を覆っています。海は世界の生息可能空間の97%を占めています。しかしその地球上最大の生息地 ー そこはかつては生物多様性を生み出す肥沃な生態系でした ー は、わずか1世紀の間にプラスチックの墓場と化しました。私たちが習慣を変えなければ、息苦しい汚染された世界を子や孫らに残すことになります。

 私は40年近く、人権、社会正義、環境を守る活動をしてきました。2005年には、変革の力になろうと、また最も弱い人々の為に声をあげようと、ビアンカ・ジャガー・ヒューマン・ライツ財団を設立しました。 私はニカラグアで生まれ育ちました。海は私の人生でいつも大事な役割を果たしてきました。休日の多くは手つかずの自然のビーチで過ごしました。海辺の暮らしは私にとって天国そのものです。世界の海や沿岸の汚染が進むのを見ると本当に悲しく思います。 私は、プラスチックの危険性には以前から気づいていたので、その使用は最小限にするよう抑えています。これを書くにあたり、私はその問題の大きさから最新の情報に当たりましたが、それらから分かったことに愕然としました。 1907年、世界初の完全な合成プラスチックであるベークライトが発明されたとき、それは魔法の素材に見えました。軽く、耐久性があり、破壊的になど見えません。それ以来、特に1940年代以降、さまざまな形態のプラスチックが私たちの生活のほぼあらゆる場面に組み込まれてきました。過去50年間で、プラスチックの生産は年間1500万トンから3億2000万トンに増加しました。今後20年間で更に倍増し、2050年には4倍になると予想されています。

 この増加は、人口増加と世界中で起きている消費者主義や都市化と直結しています。ほとんどの場合、プラスチックは短時間しか使用されません。例えば、食品を開封し、その袋や包装はすぐ捨ててしまい、長期的な影響を考えません。さらに、もっと大きな環境問題に付言すれば、プラスチックの約99%が化石燃料由来の化学物質から作られているのです。

 プラスチックの特性は、現代生活の多くの要件を満たす解決策だと思われましたが、今やそれが海を傷めつけています。根本問題は、そもそも長期使用に耐えるプラスチックが短時間使用に終わり、再利用やリサイクルではなく、そのまま処分されることがいまだに当たり前でいることです。そして、陸地から始まった問題は、最後は川や海に行きつきます。今日、途上国の世界では、子供たちは有毒なプラスチックスープの中で体を洗い、泳ぎ、そして汚染された水を飲まされているのです。 私は現在の海に、プラゴミ(数十億トンの水ボトル、ビニール袋、捨てられた漁網)が1億5000万トンもあることを知り驚愕しました。私たちは、毎分大型ゴミ収集車1台分、つまり年間800万トンという大量のプラゴミを海に投棄していることになります。有効な介入がなければ、2050年までには、このプラスチックの破片重量は、海にいるすべての魚よりも重くなる可能性があります。そして、このプラスチックやマイクロプラスチックは一度海に出たら最後、回収する術はないのです。。。。(和訳全文は購読登録にて

。。。昨年のデイビッド・アッテンボローの素晴らしいテレビシリーズ「青い惑星 (Blue Planet) II」では、死んでしまった赤ちゃんクジラを数週間、脇に携えて泳ぐ母クジラの、胸がつぶれるような映像がありました。この象徴的な映像は、ニュースやソーシャルメディアで抗議を引き起こしました。赤ちゃんクジラがプラスチック汚染から生じた母乳中の毒素で死亡した可能性があることを知りショックでした。それは国中が恐怖を感じた瞬間でした。私たちには、プラスチックが海に何をしているのか、心底感じられるようなそういう瞬間がもっと必要かもしれません。 マイクロプラスチックが海洋食物連鎖に浸透しているのなら、私たち自身の食物連鎖も同じでしょうか? 研究者たちは最近、シーフードを食べる人は年に11,000粒子のプラスチックを食べていると推定しました。マイクロプラスチックは私たちの体に侵入し始めています。今後、健康への影響はどうなっていくでしょうか?

 海と私たち自らに引き起こしている害を止めるべきです。自らの行いを改める必要があります - そしてそれは今です。具体的な手順

 国連事務総長アントニオ・グテーレス (António Guterres) は、昨年の国連海洋大会の開会式で次のように述べました。「長い間進歩の妨げになってきた領土や資源権益を捨てない限り、海洋状態の劣化は続きます。長期にわたる世界的大惨事を防ぐには、短期的な国益を脇に置かなければなりません。私たちの海洋を保全し、それらを持続可能的に利用することが、生命そのものを保全することです。」 海洋プラスチック汚染の世界的惨状は、絶滅の危機にあるカメからクジラやイルカにいたるまで、海洋野生生物を死に追いやり、世界中のサンゴ礁に影響を与えています。それはまた、オリバー・ティッケルが気付いたように(弊誌305号「方法はある。必要なのは意思。」参照)、 それを黙認している国々による明確な国際法違反でもあるのです。

 プラゴミの海への廃棄は、世界と地域両方の多くの国際会議や慣習法によって既に禁止されています。法律は明確ですが、強制力はありません。とりわけ、大きく豊かで強い国々からのプラスチック汚染の被害者である小さな島国は、今まで彼らに対抗することに消極的でした。けれども、それがまもなく変わってくれるだろうことが私の希望です。

 世界と国の廃棄物管理におけるパラダイムシフト、つまり技術と政策両方の用い方を変えること、そして私たちの生き方や考え方をしっかり変える必要があることは明らかです。 これは、使える援助と資金の種類にも言えます。例えば、多国間開発銀行のような国際的資金調達機関には、開発途上国がプラスチック汚染に対処するのを支援する無利子融資を提供するよう圧力をかける必要があります。

 一方、私たちも自らの行動を改めるよう、早急に動かなければなりません。以下、有毒プラスチックの海への激流を抑制するための、今とるべき最小限の方策です:

1 使い捨てのプラスチック包装を減らし、厚紙、紙、野菜製品など堆肥になり持続可能な代替素材を見つける。

2 プラスチック包装の回収とリサイクルのためのインセンティブを導入する。飲料容器の預託物回収システムは成功した例の1つ。

3 世界各地のプラゴミ排出量の多い国々の回収・再生システムを改善する。これらの国々が自国の出すプラゴミを適切に管理できるようにする。

4 公的でないゴミ拾いやリサイクルシステムに頼っている国では、プラスチック廃棄物の価値を高くし収集を奨励する。

5 プラスチック素材は廃棄せず再使用する。それらが長期的な製品に作り変えられる再処理過程に確実に入るようにする。

 ドイツの南アジア美術史家であるハインリッヒ・ジマー (Heinrich Zimmer) は、「無限で不滅の水は、万物の始まりと終わりである」と評したと言われています。私たちはこの惑星と海に、回復不能の損害を与えてきました。しかし、多分、まだチャンスはあります。 抜本的かつ迅速な行動をとるのは今この時であり、世界を変える十分な専門知識があることは確かです。子供、孫、そして未来の世代のために、私たちは行動しなければなりません。 この記事は、リサージェンス・トラストのハーバート・ギラード (Herbert Girardet) が企画したロンドンでの最近の会議で、彼女自身が発表したものの抜粋編集です。www.apeuk.org/ocean-plastic-crisis-summit

 ビアンカ・ジャガー、ハーバート・ジラルデット、サティシュ・クマールは、9月21日ウェールズのティンターン寺院 (Tintern Abbey) で開催される「平和への道 (Ways to Peace)」フェスティバルで講演を行います。

tinyurl.com/ways-to-peace-2018

ビアンカ・ジャガー:ビアンカ・ジャガー人権基金の創設者、社長兼最高経営責任者

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Five Steps to Save Our Seas • Bianca Jagger

Calling for a concerted effort to tackle plastic pollution in our oceans

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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