人、動物、地球のために今行動

英文誌へリンクジョイス・デシルバは、「the other(自分とは違う他のもの」を「another(自分と同質の別のもの)」と見ることが、地球とそこに住むすべての生きとし生けるものに対する、より愛に満ちた思いやりを育む方法だと提案している。

翻訳・校正:林田 幸子・沓名 輝政

もし今日見知らぬ人たち、おそらく他の惑星から来た人たちが、地球にやってきたとしたら、彼らは驚いてこう尋ねるかもしれません。「でもなぜお互いに大多数の人を殺し合っているのですか?なぜ主導権を握っているように見えるこの1つの生物種が、他の多くの生物を殺したり、食べたり、その他の理由で痛みや恐怖を与えたりしているのでしょうか?なぜ自分たちの種の仲間を飢えさせていくのですか?なぜ自分たちが依存している土壌そのものを破壊し、水路や海を汚染しているのですか?なぜそんなに多くの有毒ガスを発生させ、大気を汚染しているのですか?」

 このような質問に対して、私たちはさまざまな情報をもとに答えを出すことができますが、全体的に見ると、この地球上では「大きな愛情の欠如」が起こっているということを認めるのが最善かもしれません。

 私たちの多くは、自分が基本的に優しくて良い人間だと思っています、そしてしばしば他の人に対して優しく愛情深いことをします。貧しい人々のことを大切に思ったり、動物を愛したり、リサイクルをしたり、低い温度で衣類を洗ったり、オーガニックのものや放牧畜産の製品を購入したり、芝生があれば刈らないようにしていることさえも、自分自身に言い聞かせています。きっと私たちはすでに、世界のために自分たちの役割を果たしているのです。。。

 根本的な問題は、私たちが他の人々や動物たちをただの「自分とは違う他のもの」だと見ていることでは?その代わりに、全ての人々とこの世に生きているもの全てを「自分と同質の別のもの」だと考えるなら、もっとよくなるのではないでしょうか。そうすれば、より思いやりのある世界を実現するために、私たちの力強い愛の力を真の強い行動に移すことができるかもしれません。私たちは、なぜ戦争が起こるのか、なぜ家族の確執がずっと続くのかを理解するための手段を講じるかもしれません。正義と戦争のための組織や対話に費やす代わりに、癒やし手や助け手になるかもしれません。有権者だけでなく、自分の国だけでなく、全ての利益のために政府に行動してもらおうと一層の努力をするかもしれません。私たちは、国境を不和と差別の象徴と見なすでしょうか。すべての人を私たちの兄弟姉妹と見ることができるでしょうか?彼らの幸福は、私たちにとっての深い関心事となるでしょうか?

 では、私たちが毎年自分たちの食の好みのために殺している800億匹の動物はどうでしょうか。その4分の3は、工場式農場でひどい監禁生活を送っているのです。私たちは彼らの生活や恐怖にあまりに無関心で、彼らのことも「違う他のもの」として見てしまうことに痛みを覚えず、それぞれが確かに「同質の別のもの」であり、知覚力があって、私たちとそれほど違わないということを、忘れていないでしょうか。

 もし、食べる必要があると考えるのであれば、少なくとも工場で飼育され、その体の一部がテイクアウトやスーパーマーケットの安い肉になったものを食べるのは避けるべきかもしれません。そして、本当に食べる必要があるのかどうか、考えてみるのもいいかもしれません。そしてヴィーガンの食生活で健康的に長生きしている人が大勢いることも認めなければなりません。

 心理学者やカウンセラーは、私たちは自分自身を愛することから始めなければならないと言います。だからといって、好きだからという理由だけでハムサンドやタンドリーチキンを食べ続ける必要はないと思うのです。実際、自分を愛するなら、ある製品が私たちの体に与える健康への影響について調べるかもしれません。世界保健機関(WHO)のがん専門家は、加工肉(ベーコン、ハム、サラミ、ソーセージなど)に発がん性があるとし、赤身肉(牛肉、羊肉、豚肉など)にはおそらく発がん性があると分類しています。

 がんリスクにとどまりません。オックスフォード大学の研究者は、加工肉や赤身肉を食べれば食べるほど、心臓病のリスクも高くなることを明らかにしました。

 また、世界の農作物、特にトウモロコシや大豆の多くが、たくさんの人々が飢える一方で、家畜の餌としてのみ栽培されていることについても、読んで調べてみてもいいでしょう。このことはあまりにも悲惨な現状なので、それを変えるために私たちは天と地を動かす必要があるのです。

 これらの作物の栽培には大量の水が使われ、ほとんどの作物は窒素肥料や化学農薬、除草剤を大量に使用して栽培されています。これらの不自然な添加物は作物に部分的にしか吸収されないため、時間とともに余剰分は川や海に流れ込み、最終的には海の生物が絶滅する「デッドゾーン」の原因になっています。実際の土壌からは、無数の微細な生命体が失われ、私たちのやり方を変えなければ、60回分の収穫しか残されていないかもしれないと言われているほどなのです。

 地球の土壌や水も「同質の別のもの」と見なすことはできないでしょうか。私たちがそうであるように、土壌や水も自然界全体の一部ではないでしょうか?土壌と水の健康と幸福は、生きている地球が将来的に存在するための基本となるのではないでしょうか?

 気候変動の原因となっているガスについて、私たちは機械、自動車、飛行機、暖房や照明、肉の消費、そしてそれらを大量に発生させる産業プロセスへの依存を減らすことができるでしょうか。私たちは皆、個人的にもっとできることがあると思いますし、政府が何もしないことにもっと怒りを表すことができるはずです。私たちは、高速自動車道路を望まないかもしれません、そして私たちが団結すれば、みんなその声を聞くことができるのです。

 愛に満ちた人生を活動的に生きることは、私たちの課題でもあります。

 Compassion in World Farming[畜産動物福祉団体]は、地球とその生物は危機的状況にあると考えます。私たちは、英国、EU、国連に至るまで、ロビー活動やキャンペーンを行うルートを積極的に追求しています。このような重要な問題を議論し、さらに愛ある行動を起こすために、今年5月にロンドンで国際会議を開催します。世界的に著名な講演者や活動家がより深く掘り下げ、現在と未来のために行動するよう、きっと私たちを鼓舞してくれるでしょう。一人でも多くの方が、直接、あるいは動画のリンクから参加されることを願っています。いくつか割引もあります。

 素晴らしい多様な生き物、それぞれの可能性を発揮できる全てのものが住む、活気に満ちた豊かな地球を作るために、この地球を愛ある行動で満たしていきましょう。

ジョイス・デシルバは、Compassion in World Farming の名誉大使であり、1991年から2005年まで同団体の最高経営責任者を務めた。畜産福祉と食肉削減のための運動家として高く評価され、1990年代に英国で母豚の妊娠ストール[肉用の子豚を妊娠した母豚が拘束される個別の檻]禁止を実現し、動物に感覚や感情があるという認識を欧州連合条約に明記させる上で、重要な役割を果たした。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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