先ゆくアーケード街

レイチェル・マーシュが、革新的な新しいソーラープロジェクトについて報告。

翻訳校正 :沓名 輝政

アーティストのヒラリー・パウエル(Hilary Powell)とダン・エーデレン(Dan Edelstyn)は、驚くべきことを行っています。エネルギー価格の上限がますます上がり、気候危機が悪化する中、彼らは「行動する草の根グリーン・ニューディール(Grassroots Green New Deal in action)」と呼ぶものを作り出しているのです。「パワー(POWER)」と名付けられたプロジェクトでは、イギリスのウォルサムフォレスト区にあるビクトリア朝様式のアーケード街の屋根に沿って太陽光発電所を建設し、公正な移行を目指す7つの地域団体に資金を提供するものです。このプロジェクトの紹介ビデオで、映画監督のエーデレンは「私たちは、炭素ゼロのアーケード街になれると信じています」と語っています。「そして、このアーケード街は、政府が英国全体で今すぐできること、すべきことの見本となるでしょう」

その資金を調達するために、彼らは自分たちでお金を刷っているのです。これは、彼らが以前にもやったことです。2018年の「バンク・ジョブ[Bank Job:同名でイギリス最大の強奪事件を基に作られたサスペンス映画がある]」という、地元の組織のために数千ポンドを集めたプロジェクトで、彼らは負債を買い取り、120万ポンドまで(文字通り)爆発させました。「バンク・ジョブ」は、金融危機とエコロジー危機がいかに絡み合っているかを強調し、だからこそ「パワー」はその両方に同時に取り組んでいるのです。人々の支払い能力に関係なく、既存の街路にソーラーパネルを設置し、断熱材を入れることは、まだ誰もやっていません。「パワー」は、コミュニティが一体となったときに何が起こるかを示す「公に見せて行動する」プロジェクトを目指しています。

「パワー」は、印刷されたお金(「グリーンバックス」と呼ばれる)の直接販売と会員制度から100万ポンドの資金を集めることを目標としています。1860年代の米国のグリーンバックスは国権による資金作りでしたが、「パワー」のグリーンバックスは、ウォルサムフォレストの人々、歴史、場所を称える「ソーラーパンク」の美学を持ち、その売却によって支援される地元の組織と直接関係しています。印刷物制作者のパウエルは「私は、これらの組織を生態系と考えたいのです」と言い、その範囲と効果を高めています。

グリーンバックスは、「公共をつくる」行為として、変電所で印刷され、地元の人々が、それぞれの印刷工程で訓練を受け、ロンドンの生活賃金にあたる給料をもらうものです。「そのためには、会話をすることが大切です。触れ合いの要素がとても役に立ちます。お金、経済、気候といった大きな概念について話しているわけですから、圧倒されることもあるでしょう」とパウエルは言います。

急成長している「パワー」会員制度は、会員が自分たちの街と生活を脱炭素化するための知識とツールを提供しています。政治家が失敗したとき、前進する道を見出すビジョンを持つアーティストが必要です。しかし、パウエルはこう付け加えます。「説教をするのでも、熱弁をふるうのでもない。行動で示すことで、自分も変われるという機運を高めるのです」


www.power.film

レイチェル・マーシュは版画家、グラフィックデザイナー、作家。


ソーラーアーケード街(Solar Streets)

「パワー」は無料の会員制で、プロジェクトの最新情報を毎週提供し、このアーティストビジョンの仕組みを紹介する映画「バンク・ジョブ」の無料視聴など、多くのビデオを公開しています。

有料会員制度では、ワークショップやリンク、自分の街を脱炭素化するためのツールに加え、グリーンバックの一部が提供されます。また、プロジェクトをサポートするためにグリーンバックを直接購入することもできます。

solarforschools.co.uk は、あなたの学校を太陽光発電所にするための情報とサポートを提供します。

ダン・エーデレン(Dan Edelstyn)の著書『Mini Movies to Millions』には、その方法が紹介されています:tinyurl.com/mini-movies-book

パワーが支援するプロジェクトは、プロジェクトゼロ青年プロジェクト(Project Zero Youth Project)、オーガニックリー(OrganicLea)食べ物を育てる協同組合、HEET エネルギー効率アクション、食べるか暖をとるかを無くすフードバンク(Eat or Heat Foodbank)、PL84U-AL SUFFA、物語と夕食と(Stories and Supper)、カッパーミル・スウィフト(Coppermill Swifts)子供サッカークラブ、バーン・クロフト(Barn Croft)小学校(こちらもソーラーに移行するもの)、ウォルサムフォレスト区移住者アクション(Waltham Forest Migrant Action)です。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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