沓名 輝政

たのしあわせ研究所所長。自給研究家。ぢきゅう人。マザーアースニューズ日本版代表。週1起業家。日本折紙協会認定講師。国際折紙講師。

記事一覧(112)

創造的に生きる

ドナルド・ウィニコットの発達心理学を理解する翻訳:馬場 汐梨今朝、私の居間の窓からの眺めは15cmの雪ですっかり変わりました。枝が明るい日の光で輝いています。クロウタドリやスズメ、シジュウカラが歌い、餌を探そうとどっさり積もった雪を払い落としています。生きていることは気持ちがいい。しかしもし私が窓の外を見て、頭では見事な景色だと思いながらもそれを感じることができなければどうでしょう?喜べるものが何もなかったら?すべてが非現実のように感じたら?生きていると感じるのではなく、内心では死んでいるように感じていたら?もしそこに、意味がなく、創造性のアンチテーゼである無益さしかなければ?これはとてもよくある経験です。ほとんどの人にとっては幸運にも一時的にしか続きませんが、一部の人には永遠に感じます。リサージェンスは先陣を切って、自然と人類の断絶が広がっていることを警告してきました。小児科医で精神分析医でもあるドナルド・ウィニコットは私たちの中の断絶や分離に興味を持っていました。まずは創造性に関する彼の考え方を手短に概説します。 1970年、人生の終わりに近づいていたウィニコットは次のように書きました。「創造性とはつまり、幼児体験に属するあるものを、人生を通じて保有することです。それは、世界を創造する能力です。幼児にとっては難しいことではありません。なぜなら母親が幼児の要求に応えることができれば、幼児は自分で想像し考えつくまで、世界が存在するという事実を最初は理解しないからです」ウィニコットは平均的な「ほどよい」母親はわが子が生まれた数週間に感じる一体感で、本能的に子供に自分が世界を創造できるのだという幻想を創り出そうとします。不必要な影響、例えばうるさい騒音や怒鳴り声、冷たい水、長い間お腹を空かせることなどからわが子を守ります。子どもが外の現実にうまく対処する許容度に合わせて徐々に、子どもが圧倒されないように気をつけながら、「少しずつ」世界を見せていきます。 ウィニコットは母親たち(と父親たち)の子育てに関する自信をつけさせます。日々のストレスや疑念や困難についてもはっきりと述べる一方、彼は親の自然な能力を信じているからです。おそらく彼は「移行対象」という言葉を提唱したことで最も有名でしょう。ある時期になると幼児は布きれやおもちゃやリボンなどの何か特定のものに関心を持ちます。ウィニコットはこれらのものはたいてい不可分であると気づきました。それらは愛され、嫌われ、捨てられた後にまた見つけられます。特に夜には不安を鎮めてくれるにも拘わらず、ただなぐさめてくれるだけのものではないのです。 ウィニコットはこの成長は幼児にとって外界になじむ過程で移行します。その対象は幼児/子どもによって創られたものでも、外界に属するものでもありません。ウィニコットはそういう対象を、「自分」でもなく「自分ではない」でもないので、「移行」と名付けました。それらは本当に主観的なもの(幼児によって創られた)でもなく、完全に客観的なものの世界(自分ではない)に属するわけでもありません。より小さな幼児では外側として世界を経験していませんが、発育期の幼児は彼らがコントロールできない「自分ではない」が存在することを理解し始めます。 移行対象は主観的な現実と客観的な現実のギャップを耐えられるものにします。最終的には移行対象は子どもにとって意味を失いますが、子どもの内的世界と外界の間にある中間領域は残ります。「移行対象や移行事象は経験し始めの基礎となる幻想の領域に属するものです」とウィニコットは述べています。「この経験の中間領域は、内的世界か外界の共有された現実のどちらに属するかという観点では問題にされていませんが、幼児体験の重要な部分を占めており、人生を通じてアートや宗教、想像の世界、そして創造的な科学の仕事のような強い経験の中に生き続けます。」 ウィニコットはそのような幻想は健康と創造的な生活に欠かせないと考えていました。ある音楽に没頭したり、あるアートや雪景色に驚くいたりすることは、世界が外界ではなく自分と不可分なものだと感じる瞬間です。それはあたかも自分が世界を創ったかのような瞬間です。これは遊びに夢中になった子どものそのままの延長です。フロイトやクレインとは違い、ウィニコットは遊びの中身よりも事象を重視しています。彼はいつもタゴールのギタンジャリにある「果てしない世界の海辺で子供たちは遊ぶ」という詩に魅了されていました。彼は遊びの無意識な象徴主義の精神分析的な研究は避けていました。「遊びは内なる精神的な現実でも外界の現実でもありません…もし遊びが内でも外でもないとすれば、それはどこにあるのでしょう?」と彼は問います。彼は遊びを中間領域に位置付け、子どもたちと関わる人々に繰り返し訴えました。「私たちは幼児に、これを創ったの?それとも転がっているのをただ見つけたの?と尋ねることには決して賛成できません。」その矛盾を問うことは遊びの現実離れした特性を壊すことになります。大人たちが、子どもたちが忙しく遊んでいる時に何をしているのかを言わせて、知識の未熟さに気を惹かせようすることの何と多いことでしょうか? ウィニコットは中間領域を(内なる精神的な現実と、共有された外の世界と対比して)3番目の空間と考えており、そして人生に生きる価値を与えるのはこの3番目の空間で、そこに人間の文化的な生活のすべてが存在するのだと考えていました。自分固有の「自分らしさ」を作り上げるのはこの中間領域での遊びの経験です。彼はこの領域での経験が累積すれば文化的な経験の共有資源に貢献すると考えました。創造性は普遍的なもので、特別な才能を必要としません。それは生きているという感じに含まれます。「個々の子どもや大人が創造的になれて個性すべてを発揮できるのは遊びの中であり、遊びの中でしかありえない。そしてそれぞれが自分自身を発見できるのは創造的でいることでしかありえない」これまでに他の精神分析医や心理学者がこのように考えたことはありませんでした。また「移行対象」という言葉は心理学の領域を超えて日常の言葉になりました。 去年のリサージェンス&エコロジスト誌をぺらぺらめくると、普通の人々の毎日の創造性を強調している記事がたくさんあります。与えたりもらったりする機会のあるコミュニティとつながることは幸福感や活力、創造性を高めてくれます。そのようなコミュニティは個人の悲しみや苦しみの時代に母のような支えを与えてくれます。「思いやりのフロム(思いやりは最良の薬:リサージェンス307号)」の素晴らしい記事は2人の創設者とボランティアの創造性だけではなく、合唱団で歌う中で自分自身の創造性を再発見した利用者のそれも例として紹介しています。 自然と繋がりなおすことの利点について書かれた記事がたくさんある中で、ピエール・ラビはサティシュ・クマールとの対談の中で(リサージェンス&エコロジスト303号)、時は金なりの不自然なシステムの奴隷になり下がって自然から遠ざかった人間について語っています。その精神が自然と人間を引き離していますが、断絶は現実的ではなく、私たちは根源、母なる地球に立ち戻る必要があると彼は考えています。美しい雪景色を見た人が頭でそれが美しいと知っていながらその素晴らしさを本当に感じることができないというのも同じく自然から遠ざかっていると言えます。そういう人は少なくとも一時的に、生きている感じや創造性を失っています。その精神が人間と自然の間にあるというラビの考えは、ウィニコットの「精神-身体」に関する精神の概念と共鳴しています。健康について言えば、精神や知識は「ほどよい」ケアで構築される精神身体的なまとまりの不可欠な部分です。精神は細胞や肉体を想像で表現したものです。幼児の自我の健康的な成育を阻む重大な影響があるとき、知性が引き継ぎ世話人のようにふるまいますが、のちの人生で現実を感じることができなくなったり、心身症という結果をもたらしかねません。そのような断絶や病は母なる地球との幼少期のつながりに注意すべきだというサインとみることができるかもしれません。 ウィニコットは、人間は生来、貪欲でも、利己的でも、嫉妬深くも、快楽主義でもないと考えました。それは環境、特に人生の最初の数年間子どもを取り巻く環境が重要であると。完璧である必要はなく(実は完璧を求めることそのものが問題です)ただ子どもが生まれながらにして持っている創造性を開花させるのにほどよければよいのです。病や放置、トラウマはこのプロセスに干渉して、自分自身の中で断絶を残します。リサージェンスのいくつかの記事で述べられている人間と自然の分離に帰結するのではないかと思います。 最後の言葉でウィニコットの紹介を終わります。「創造的に世界に向かい、世界を創造しなさい。あなたが創り出したものだけが、あなたにとって意味があるのです」クリス・ブローガン (Dr Chris Brogan) は精神分析のサイコセラピストで、ドナルド・ウィニコットの著作を広めるために設立されたスクイグル協会の理事です。squiggle-foundation.org

切断と同調:学びの教訓

新学年が始まり、学生の幸福を重視する上でWi-Fi、携帯やソーシャルメディアから離れるべきだとキム・サミュエルは語ります。翻訳:坂井 晴香ロンドン大学で経済学を教えているリチャード・レイヤードについて私は考え続けています。学生生活の本質的な特徴は、他者を気遣うことを学生たちに教えることであるべきだと彼は述べています。情が深く面倒見が良く、世界をより良い場所にする若者になるようにするのです。 彼の意見に心から賛同します。自らのコミュニティにおいて責任感を感じることで幸せを感じ、満たされる学生たちを見ることが私にとって教えるという経験の中で最たる喜びの一つです。 しかし私のミッションがそうだとしても、私の大学の業務に関わる職員や教員皆がそれを応援してくれるでしょうか。そのように私たちが価値を見出すとするなら、学生中心の最も有益な方法で大学にある資源に焦点を当てることではないのでしょうか。一人の完全な人間になることが大学の知性溢れる機能の一部であり、大学はその点において優れているべきです。しかし、学生がストレスによって心に負担をかけられていると、精神的な生活を学生は十分に楽しむことができません。 数多くの指標が私たちが危機に面していることを示しています。2015年、ロンドン拠点の公共政策について研究する機関 Institute for Public Policy Research によると、大学1年で精神的に健康ではない学生数が2006年以来500%も増加しています。同期間で、学生における自殺者数は79%増加しています。 カナダとイギリス全土にある私の所属する大学において、私は警鐘を鳴らす方法を考えてきました。学生、教授、事務局がみな同じく、学生の幸福を高め、危機が起きた時に対応するための重要なサービスについて組織化し、呼びかけ、出資しています。ブリストル大学の職員の一人によると、精神的な健康は全国において副学長の議題のトップに置かれています。しかし、私たちの為すこと全てにおいて、依然として道のりは遠いです。私たちの大学ではもうすぐ輝かしい若者へ新しい授業を開こうとしています。学生のために精神的な健康へのニーズに応える学内システムを構築する責任があります。。。(記事全文は定期購読またはバックナンバーをご利用ください)。。。教室の中では、教授が生徒に物質的なものだけでなく彼らを取り巻くコミュニティにも関わることを助ける一役を担うことが必須です。テクノロジーは現代的な教室において手助けとなりますが、価値ある関係性を構築するには人間同士の交流が必要です。これは教育者としての業務を補完するものではなく、統合的なものです。守られ、尊重され、大事にされ、見てもらえると人々が感じる教室に気を配ることで最良の学びとなります。私の経験では、教授と学生、学生同士の相互交流が促進される慎重な努力が教室での経験をあらゆる面で高め、学ぶことと同じように教えることが今以上に報われるのです。 もちろん、精神的な健康のような重要課題の組織的変革には、学長の協力的なリーダーシップが求められます。伝統的な精神的健康へのサービスに投資し、上述の学生中心のアプローチを探求することに加えて、職員が責任を持って学生の幸福が何によって決まるのかを追い続けるべきです。 レイヤードの決まり文句をやさしく言い換えると、大切にしたければよく吟味すべし。大学を学生が幸せに、健康でいられる場所にする努力を見極め、適正にし、改善するのに、一貫した信用できるデータが役立つでしょう。キム・サミュエル (Kim Samuel) は、前リサージェンス理事、Samuel Centre for Social Connectedness の創設者、モントリオールのマギル大学の実務家教員。www.socialconnectedness.orgTurn Off, Tune In: A Lesson in Learning • Kim SamuelSchools and universities need to cut down on wifi

大地の民族の教え

気候変動への対処:先住民族の文化から何を学べるか。グレブ・レイゴロデッツキーがカナダ西部からレポート。翻訳:浅野 綾子「この大地を歩くとき、私たちは喜びと敬意をもって、謙虚に、ゆっくりと足を運ぶ。私たちが踏みしめるこの土塵は、元は祖先の身体だったからだ」 クラクワット族 (Tla-o-qui-aht) の長老、リーバイ・マーティン (Levi Martin) は言いました。机の向こう側に見える彼の姿は高くそびえ、挨拶に私の手を握ります。そして木のテーブルの上やベンチについた朝露をシャツの袖で拭いました。「それで少し遅くなったんだ」リーバイはウィンクして、私の向かいに座りました。彼の顔にいたずらっぽい笑顔が広がりました。 「ああ、何て気持ちのいい日だ」そう言ってリーバイは伸びをし、息をつきました。手は灰色のあごひげを真直ぐに引っ張っています。夏の朝、トフィーノには霧が立ち込めます。クレイクォットサウンドの夜の冷気は、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州の海岸沿いを伝い、ヒマラヤスギやボート、浜辺、外に置かれたベンチの周りに漂います。でも、午後になるまでには焼ける太陽の光が霧を裂き、沿岸の空気は温められ、霧が引いていきます。私たちの湿った身体にはこの温かさが快く感じられました。私たちはコモン・ローフ・ベイクショップ (Common Loaf Bake Shop) の2階にあるテラスでランチをとることに決めました。 ベランダの下には、ファースト・ストリートがトフィーノの船着場まで伸びています。船着場は、バン・ネベル水路 (Van Nevel Channel) を横切ってオピットサットの町までの短い距離を渡る乗客を、水上タクシーが流れるように運んでいく場所です。オピットサットはヌーチャルス [ヌートカ族] の言葉で「集いの場所 (a gathering place) 」。リーバイの生まれた場所であり、クラックワット族の数千年来の冬の町でもあります。その標高730mの Wah-nah-jus(ローンコーン山)の麓の海沿いには赤、白、青の平屋が並んでいます。 人々が敬うヒーラーであり、スピリチュアルリーダーでもあるリーバイは、1945年に生まれました。彼の育った環境は、クラクワット族の文化や言葉、伝承が世界のすべてでした。16人兄弟の末子で、生まれた時に授けられた部族の名は「Kaa-mitsk (戦う者・狩る者) 」。幼少期は家族と共に過ごし、Wah-nah-jus 周辺で狩りや採集、釣り、わな猟もしました。でも、アハウサット、ヘスクィアット、ヌートカ、カイウクォットというバンクーバー島西海岸沿いのコミュニティに住んでいた他の多くの子供たちと同じように、リーバイはクリスティ・インディアン・レジデンシャル・スクール(Christie Indian Residential School:先住民族の子供たち向けの寄宿学校)に送られました。1898年から1983年の間、カトリック教会がミアーズ島で運営していた学校です。。。。(記事全文は定期購読にてどうぞ)。。。「私たちの命と、生きとし生けるものすべての生命を維持する4つの聖なる要素がある。もっとも強大な力をもつ要素。」 最後にリーバイは語りました。「火、水、空気、それに母なる大地だ。それら無くしては何者も生き残れない。でも、これだけ強大な力をもちながら、これらの要素は1つだけでは命を支えることはできない。水を取り去れば生きながらえるものはない。同じことが他の要素にも言える。なぜなら、生命を維持するためにはすべての力を合わせる必要があるからだ。すべての力を合わせるのは、スピリットの力の働きだ。同じように、すべての人々は、先住民も入植者も、力を合わせなければならない。でも、私たちとスピリットの繋がりは絶えて久しい。どうすれば力を合わせられるか全く見当がつかないのだ。これを早く何とかしなければならない。私たちは力を合わせ、互いに学び合い、どのような形であっても、直面するすべての困難に対処するという希望を持たなければならないのだ」グレブ・レイゴロデッツキー (Gleb Raygorodetsky) は保全生物学者、フィランソロピック・アドバイザー、研究者。世界中の伝統的コミュニティに居住して活動した幅広い経験を持つ。カナダ・アルバータ州の環境・公園省、環境モニタリング・科学部、先住民族の知識・コミュニティモニタリング・市民科学支局 (Indigenous Knowledge, Community Monitoring and Citizen Science Branch of the Environmental Monitoring and Science Division) の事務局長。本稿は最近ペーパーバッグで Pegasus 社から出版された彼の著書「The Archipelago of Hope: Wisdom and Resilience from the Edge of Climate Change(仮題:希望のアーキペラゴ~気候変動の危機からの知恵と回復力))」から抜粋編集購読登録はこちらからどうぞ。Lessons From the Peoples of the Land • Gleb RaygorodetskyWhat can we learn from Indigenous cultures about responses to climate change?

深き憂い

オリバー・ティッケルが海の惨状と奥深さを知る海洋生物学者に会います。翻訳:斉藤 孝子海洋研究者・活動家であるアレックス・ロジャーズ氏が、初めて驚きの海洋プラスチック汚染を目にしたのは2015年のことでした。「私はその年、ホンジュラス、ベイ諸島のウティラ島でダイビングをしていました。そこは全て美しいサンゴ礁だったのですが、島の周りに来た時、どこまでも延々と続くゴミの漂着物が眼前に現れました。それはプラボトル、発泡ポリスチレン、ガラス繊維、人類が出す想像しうるあらゆる種類のゴミでした・・・あんな凄まじい量のゴミは見たこともありませんでした。恐ろしいものでした。」 ロジャーズ氏が海洋プラスチックを目にしたのはそれが初めてだったわけではありません。初めて見たのは、その3年前、彼とそのチームがマダガスカルと南極の間のインド洋で海山を探索していたときでした。「私たちは世界最果ての地で、深海のサンゴと水深1,500mまでの堆積物のサンプルを採取していましたが、その時これらプラスチック繊維もみな見つけていました。最初は一瞬、『素晴らしい。 次の論文になる!』と思いましたが、次の瞬間には『とんでもないことだ。こんなものがここにあるということは、どこにでもあるに違いない』と考えていました。」 海洋プラスチックは実に恐ろしく、確かに地球規模の問題なのですが、人間が海や海洋生物の健康に与えている唯一の脅威ではなく、最も深刻な問題ですらありません。「海洋のまず一番の問題は気候変動です。なぜならその脅威の大きさと範囲が途方もなく、海洋化学、海洋循環、海洋生態系、極地の海氷、そして氷原へと、次々に地球全体に連鎖反応を起こしていくからです。そしてこれらの変化は、人間の時間スケールに対して完全に不可逆的なものです。」と氏は語ります。 次に来るのが、過剰漁獲と破壊的漁業です。生態系全体が産業漁船によって吸い上げられ、海底は底引き網で荒らされます。一例を挙げます。「1960年代、ロシアや日本の船団が、太平洋の天皇海山群[北太平洋の 西側にある海底山脈]に巨大な魚群を発見し、そこに何があるか知ることすらなく、それらを牽引し始めました。漁業資源は崩壊しました。まもなくニュージーランド、オーストラリア、EU漁船団が深海の底引き漁を始めました。漁業資源が次々と壊され、生息環境に大きな被害を与えました。 彼らは船底の底引き網で海底をえぐり取りながら漁獲し、オレンジラフィー[ヒウチダイ科]のような漁獲対象種に甚大な被害を与えました。オレンジラフィーは、成長がとても遅く、30〜40才まで成魚にならず、年間に自然死する割合が極めて低くて150才まで生きる魚です。そこに何があるのか、つまり魚数動態に関する科学的調査が一切ないまま、漁業界全体があっという間に勢いづきました。ようやく調査が追いついた頃には、時すでに遅しでした。現在、漁獲量ははるかに持続可能にはなっているものの、ほとんど全ての魚が底引き網で漁獲されており、それこそが破壊的な産業漁業の最たるものです。」 3つ目が汚染です。全ての有毒化学物質を含む使い捨てプラスチック、重金属などです。「プラスチックが重大な危険であることは確かですが、どれほど危険かはまだ分かっていません。私たちは主に3つの影響を見ています。つまり、漁網等による生物たちの巻き込み。餌と間違えられての誤摂取。極端な場合、鯨類の消化管を完全に詰まらせます。そして毒性です。」 「プラスチックは海水からポリ塩化ビフェニール (PCB) などの残留性有機汚染物質を引き寄せ凝縮させますが、プラスチックそれ自体によくフタレートや難燃剤及びポリ臭化ジフェニルエーテル(PCB類の代替として登場したPBDE類)などの有毒添加物が含まれていて、現在それらが鯨の組織内で発見されています。多くの生物たちが、マイクロプラスチックを餌と間違え食ベています。ですので、私たちがそれら有機汚染物質を取り除いたと思った後もずっと食物連鎖に戻って来る循環が続くだろうと懸念されています。」 ロジャーズ氏は最近、スーパーで買ったシャワージェルに、環境に有害な化学物質が入っていることを見つけ、愕然としました。 それは紫外線遮断剤として最もよく知られているオキシベンゼンで、最近、サンゴ礁に与える害が理由で2021年からハワイでの販売が禁止になったものです。 「最初、その化学物質を見て本当に驚きました。しかしその後、そのオキシベンゾンが何にでも入っていることに気づきました。日焼け止めやシャワージェルだけでなく、シャンプー、ヘアコンディショナー、メーキャップ、マスカラ、さらにはいくつかの食品にさえです。濃度は低いかもしれませんが、排水管を通って環境や飲料水に入って来ます。しかも人々は複数の製品を使用します。肌を通して体内に入り、さまざまな汚染物質の影響が組み合わさる可能性があるのです。皆、自分が買うものは無害だと思っています。販売されるからには安全でなければなりません。しかし、そうではないのです。私たちは皆、これらの化学物質を認識し、それらを避けることが必要です。」 海の暗い話ばかり続きましたが、朗報、少なくとも希望をもてる理由があります。温暖化による暖かい海で、サンゴ礁やそれが支える海洋生物たちが生き残れるかと恐れるよりも希望をもてそうです。氏のものも幾つか含まれる新しい研究ですが、サンゴの生態系が以前考えられていたよりもずっと深く、表層水が熱くなっても生物多様性の安全水域として機能する冷たい水域にまで広がっていることがわかりました。これらの発見により、水深40~150mまでの新しい中光ゾーンが、以前考えられていたよりずっと重要となり、海洋学者は深海域の区分を再検討し始めています。。。(記事全文は定期購読をご利用ください)。。。「増加する世界人口に持続的に食糧を供給し、生物多様性を保全しながら、存亡にかかわる真に大きな気候変動問題に共に対処するために必要なこととは真逆に、ナショナリズム、軍国主義、単独行動主義が広がりつつあります。これら全ての国際的緊張の高まりが、直面している真の問題、つまり地球を100億人が住める状態にどうやって保つかという問題から私たちの関心を大きく逸らせています。」オリバー・ティッケル (Oliver Tickell) はリサージェンス&エコロジストへの定期寄稿者、「国際法と海洋プラスチック汚染: 法を犯す者に責任を課すこと(仮題:International Law and Marine Plastic Pollution: Holding Offenders Accountable)」報告書の執筆者。購読はこちらからどうぞDeep Trouble • Oliver TickellA marine biologist with tales of woe and wonder from the sea

海を守る5ステップ

人権と環境に関する長年の活動家ビアンカ・ジャガーが、海洋プラスチック汚染に対し一致団結して取り組むことを呼びかけます。デイビッド・アテンボロー (David Attenborough) は最近次のように述べました。「私たちは何年か、海は非常に広大で、そこに住む生物たちは無限にいるので、自分たちができることなど知れていると思っていました。しかし今、それは誤りだったと分かります。 海は人間の歴史の中でこれまでにない脅威にさらされています。」 地球は70%が海洋で、太平洋だけでも地球の半分を覆っています。海は世界の生息可能空間の97%を占めています。しかしその地球上最大の生息地 ー そこはかつては生物多様性を生み出す肥沃な生態系でした ー は、わずか1世紀の間にプラスチックの墓場と化しました。私たちが習慣を変えなければ、息苦しい汚染された世界を子や孫らに残すことになります。 私は40年近く、人権、社会正義、環境を守る活動をしてきました。2005年には、変革の力になろうと、また最も弱い人々の為に声をあげようと、ビアンカ・ジャガー・ヒューマン・ライツ財団を設立しました。 私はニカラグアで生まれ育ちました。海は私の人生でいつも大事な役割を果たしてきました。休日の多くは手つかずの自然のビーチで過ごしました。海辺の暮らしは私にとって天国そのものです。世界の海や沿岸の汚染が進むのを見ると本当に悲しく思います。 私は、プラスチックの危険性には以前から気づいていたので、その使用は最小限にするよう抑えています。これを書くにあたり、私はその問題の大きさから最新の情報に当たりましたが、それらから分かったことに愕然としました。 1907年、世界初の完全な合成プラスチックであるベークライトが発明されたとき、それは魔法の素材に見えました。軽く、耐久性があり、破壊的になど見えません。それ以来、特に1940年代以降、さまざまな形態のプラスチックが私たちの生活のほぼあらゆる場面に組み込まれてきました。過去50年間で、プラスチックの生産は年間1500万トンから3億2000万トンに増加しました。今後20年間で更に倍増し、2050年には4倍になると予想されています。 この増加は、人口増加と世界中で起きている消費者主義や都市化と直結しています。ほとんどの場合、プラスチックは短時間しか使用されません。例えば、食品を開封し、その袋や包装はすぐ捨ててしまい、長期的な影響を考えません。さらに、もっと大きな環境問題に付言すれば、プラスチックの約99%が化石燃料由来の化学物質から作られているのです。 プラスチックの特性は、現代生活の多くの要件を満たす解決策だと思われましたが、今やそれが海を傷めつけています。根本問題は、そもそも長期使用に耐えるプラスチックが短時間使用に終わり、再利用やリサイクルではなく、そのまま処分されることがいまだに当たり前でいることです。そして、陸地から始まった問題は、最後は川や海に行きつきます。今日、途上国の世界では、子供たちは有毒なプラスチックスープの中で体を洗い、泳ぎ、そして汚染された水を飲まされているのです。 私は現在の海に、プラゴミ(数十億トンの水ボトル、ビニール袋、捨てられた漁網)が1億5000万トンもあることを知り驚愕しました。私たちは、毎分大型ゴミ収集車1台分、つまり年間800万トンという大量のプラゴミを海に投棄していることになります。有効な介入がなければ、2050年までには、このプラスチックの破片重量は、海にいるすべての魚よりも重くなる可能性があります。そして、このプラスチックやマイクロプラスチックは一度海に出たら最後、回収する術はないのです。。。。(和訳全文は購読登録にて)。。。昨年のデイビッド・アッテンボローの素晴らしいテレビシリーズ「青い惑星 (Blue Planet) II」では、死んでしまった赤ちゃんクジラを数週間、脇に携えて泳ぐ母クジラの、胸がつぶれるような映像がありました。この象徴的な映像は、ニュースやソーシャルメディアで抗議を引き起こしました。赤ちゃんクジラがプラスチック汚染から生じた母乳中の毒素で死亡した可能性があることを知りショックでした。それは国中が恐怖を感じた瞬間でした。私たちには、プラスチックが海に何をしているのか、心底感じられるようなそういう瞬間がもっと必要かもしれません。 マイクロプラスチックが海洋食物連鎖に浸透しているのなら、私たち自身の食物連鎖も同じでしょうか? 研究者たちは最近、シーフードを食べる人は年に11,000粒子のプラスチックを食べていると推定しました。マイクロプラスチックは私たちの体に侵入し始めています。今後、健康への影響はどうなっていくでしょうか? 海と私たち自らに引き起こしている害を止めるべきです。自らの行いを改める必要があります - そしてそれは今です。具体的な手順 国連事務総長アントニオ・グテーレス (António Guterres) は、昨年の国連海洋大会の開会式で次のように述べました。「長い間進歩の妨げになってきた領土や資源権益を捨てない限り、海洋状態の劣化は続きます。長期にわたる世界的大惨事を防ぐには、短期的な国益を脇に置かなければなりません。私たちの海洋を保全し、それらを持続可能的に利用することが、生命そのものを保全することです。」 海洋プラスチック汚染の世界的惨状は、絶滅の危機にあるカメからクジラやイルカにいたるまで、海洋野生生物を死に追いやり、世界中のサンゴ礁に影響を与えています。それはまた、オリバー・ティッケルが気付いたように(弊誌305号「方法はある。必要なのは意思。」参照)、 それを黙認している国々による明確な国際法違反でもあるのです。 プラゴミの海への廃棄は、世界と地域両方の多くの国際会議や慣習法によって既に禁止されています。法律は明確ですが、強制力はありません。とりわけ、大きく豊かで強い国々からのプラスチック汚染の被害者である小さな島国は、今まで彼らに対抗することに消極的でした。けれども、それがまもなく変わってくれるだろうことが私の希望です。 世界と国の廃棄物管理におけるパラダイムシフト、つまり技術と政策両方の用い方を変えること、そして私たちの生き方や考え方をしっかり変える必要があることは明らかです。 これは、使える援助と資金の種類にも言えます。例えば、多国間開発銀行のような国際的資金調達機関には、開発途上国がプラスチック汚染に対処するのを支援する無利子融資を提供するよう圧力をかける必要があります。 一方、私たちも自らの行動を改めるよう、早急に動かなければなりません。以下、有毒プラスチックの海への激流を抑制するための、今とるべき最小限の方策です:1 使い捨てのプラスチック包装を減らし、厚紙、紙、野菜製品など堆肥になり持続可能な代替素材を見つける。2 プラスチック包装の回収とリサイクルのためのインセンティブを導入する。飲料容器の預託物回収システムは成功した例の1つ。3 世界各地のプラゴミ排出量の多い国々の回収・再生システムを改善する。これらの国々が自国の出すプラゴミを適切に管理できるようにする。4 公的でないゴミ拾いやリサイクルシステムに頼っている国では、プラスチック廃棄物の価値を高くし収集を奨励する。5 プラスチック素材は廃棄せず再使用する。それらが長期的な製品に作り変えられる再処理過程に確実に入るようにする。 ドイツの南アジア美術史家であるハインリッヒ・ジマー (Heinrich Zimmer) は、「無限で不滅の水は、万物の始まりと終わりである」と評したと言われています。私たちはこの惑星と海に、回復不能の損害を与えてきました。しかし、多分、まだチャンスはあります。 抜本的かつ迅速な行動をとるのは今この時であり、世界を変える十分な専門知識があることは確かです。子供、孫、そして未来の世代のために、私たちは行動しなければなりません。 この記事は、リサージェンス・トラストのハーバート・ギラード (Herbert Girardet) が企画したロンドンでの最近の会議で、彼女自身が発表したものの抜粋編集です。www.apeuk.org/ocean-plastic-crisis-summit ビアンカ・ジャガー、ハーバート・ジラルデット、サティシュ・クマールは、9月21日ウェールズのティンターン寺院 (Tintern Abbey) で開催される「平和への道 (Ways to Peace)」フェスティバルで講演を行います。tinyurl.com/ways-to-peace-2018ビアンカ・ジャガー:ビアンカ・ジャガー人権基金の創設者、社長兼最高経営責任者購読登録はこちらFive Steps to Save Our Seas • Bianca JaggerCalling for a concerted effort to tackle plastic pollution in our oceans

環境ニュース集

翻訳:斉藤孝子ハリネズミケア、囚人の社会復帰に効果司法省はハリネズミの保護を通して、イングランドの囚人や元犯罪者の社会復帰を図っています。サステイナブル活動チームでエコロジーリーダーを務めるフィル・トーマスは、「ハリネズミプロジェクトは増えつつあります。」と、リサージェンス&エコロジストに語りました。「それは修復的司法[当該犯罪に関係する全ての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来へのかかわりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス]とハリネズミ保護に一石二鳥です。」 昨年の冬に始まった最新のプログラムの1つでは、マンチェスター、ウィジントンロード(Withington Road)元犯罪者用認可居宅に11匹の低体重ハリネズミが預けられ、元犯罪者たちがそれらに冬眠の準備をさせ春に放せるよう、その世話をしました。 「動物の世話をするにはスタッフとのチームワークがしばしば必要なので、このプロジェクトは、権限ある人とのかかわりが苦手な元犯罪者にとって特に効果をあげています。」と、司法省サステイナブル活動チームのエコロジー技術サポートで働くベアトリス・フィンチ(Beatrice Finch)は言います。 ウィジントンロード認可居住支援員であるジャッキー・モリス(Jacqui Morris)は、ドッグズトラスト(Dogs Trust)が元犯罪者に与えた肯定的な効果を見て、地元のハリネズミ慈善団体に働きかけました。彼女は「これがもたらした効果は目を見張るものです。動物たちと共に働き世話することは、治療になり自尊心を築く助けになります。」と語ります。 世界的企業であるセルコ(Serco)が運営する民間刑務所、HMPドンキャスター(Doncaster)[救済刑務所] でのプロジェクトでは、2017年後半、3匹のハリネズミ用の特別な生息環境を作ることに囚人たちが関わりました。そこでは今、野生に放す目的でハリネズミの飼育繁殖が始まったところです。多くのプロジェクトが進行中です。「私たちは他の認可居宅でのハリネズミプロジェクト開始に向け積極的にお手伝いしています。」とトーマスは語りました。プラスチックを避ける海鳥 海洋汚染広報(Marine Pollution Bulletin)に掲載された論文は、オーストラリアの尾長水薙鳥は他の種に比べ、わずかな量しかプラスチックを食べないことを示しました。その13年間の調査で、この鳥もプラスチックをいくらか食べてはいるものの、体のサイズへの明らかな影響が見られないことも分かりました。 「海鳥の体内のプラスチックを監視することは、プラスチック汚染を国際規模で測定する最善策の1つです。海洋プラスチックに関する多くの研究は、1つの場所での1つの種の1年間のもので、長期間については表していません。先の論文の優れた点は、それが長期にわたるデータを与えてくれたことです。」とは、ロンドン自然史博物館の鳥類上級キュレーター且つその論文の共同執筆者であるアレックス・ボンド(Alex Bond)の弁です。tinyurl.com/nhm-shearwaters-plastic 自然の薬草や芳香植物種、絶滅に直面する可能性 野生生物取引監視ネットワークであるトラフィック(TRAFFIC)によって発表された新しい報告書によると、IUCN(国際自然保護連合)の脅威種リストの基準に基づいて評価された世界の薬用植物および芳香植物5種のうちの1種が、絶滅に直面する可能性があります。野生植物由来の成分は、医薬品、化粧品、食品および飲料を含む多くの製品の重要な成分です。 「企業はよく、これら成分の『天然』や『自然』特性を強調するマーケティング戦略を持っていますが、それらの調達が生態学的そして社会的に持続可能かどうかには殆ど注意を払っていません。多くの植物が今までにないプレッシャーを受けており、価値のある種たちが全く知らないうちに消滅する危険があります。」とワイルド・アット・ホーム(Wild At Home)の報告書は述べています。 一部の概算によれば、薬用植物およびアロマ族植物の取引量の60%から90%は、野生で採集されたものです。しかし、多くの野生植物取引は非公式で、取引生産統計は、栽培されたものか採集されたものかの区別がありません。IUCNのガイドラインに基づいて評価されているのは、28,000種のわずか約7%です。 この傾向を逆転させるために、報告書は完全なトレーサビリティ[追跡可能性]を提供し、協同組合を設立し、野生収集成分の持続可能な利用を促進するためフェア・ワイルド(FairWild)のような認証提供を提案しています。報告書は、消費者に、自分が使用している製品に含まれる潜在的な野生成分を探し、持続可能な形で収集されている品質かどうかを問うよう勧めています。甘草、フランケンセンス、アラビアゴム、シアバター等12種の植物製品に特に注目しています。www.fairwild.orgtinyurl.com/wild-at-home新しい釣り用フック、海鳥や亀の混獲避ける延縄漁業では野生生物を救うよう設計された装置が増加、アンナが報告します。 アホウドリと海ガメに安全な設計がされた英国の発明は、最近のクラウドファンディングの後押しで72,000ポンドの追加支給を受けました。それは、世界中の遠洋漁業者が毎年マグロやカジキのような魚を捕獲するために装備するフック約30億個分に相当します。けれどもそのフックは魚が見つかる深さに到達する前に、致命的な混獲をしてしまいます。つまり推定30万羽の海鳥を殺傷し、そのかなりの割合がアホウドリで、海ガメも同様です。アホウドリ22種のうち15種と、海ガメ7種のうち6種が絶滅の危機にあります。 新しい資金提供で、デボン拠点の会社が製造した6,000のフックポッド(Hookpod)をブラジルのマグロ漁船5隻に装備し、さらに海鳥が多い海域のニュージーランドで船舶のフックポッド費用を補助できそうです。 「各フックポッドは支線に永久的に取り付けられ、フックは底にはめ込まれますが、そこにはフックの針先が安全に固定されるように一組のバネ付きゲートがあります。それがボートから投げ込まれ、水の中に沈んでいきます。」とフックポッド最高経営責任者ベッキー・インガム(Becky Ingham)は、語ります。 「20メートルの深さで空気室の圧力が上がり、ピストンが作動し、これがポッドを開けフックが解放され、漁が始まります。」 10メートルの深さで開くフックポッドを使った最初の試行では、海鳥の混獲が95%、カメの混獲が50%減少しています。現在のフックポッドは、2倍の深さで開くことにより、カメの80%を護れると期待しています。アンナ・ターンズ(Anna Turns)は、フリーランスジャーナリストであり、プラスチックに反対する子供たちの活動、プラスティック・クレバー・サルコム(Plastic Clever Salcombe)の創設者です。www.hookpod.com皇太子の、環境・芸術・精神の問題に関する働きを記念する会議ウェールズ皇太子の環境・精神・芸術の分野における貢献を表明する会議が11月に開催されます。彼の70歳の誕生日を祝し、11月17日土曜日、カンタベリー大聖堂プレシンクで行われれます。皇太子の哲学を支え、2010年の彼の著書「ハーモニー」に明記されている調和の土台となる精神的原則に焦点を当てます。 BBCラジオ3やテメノス・アカデミーのイアン・スカリー、WWF-UK(世界自然保護基金英国支部)のトニー・ジュニパーら共著者を含む殆どの講演者は、皇太子と緊密に協働してきました。リサージェンス・トラストはサティシュ・クマールにより、また有機農業については持続可能食糧信託(Sustainable Food Trust)のパトリック・ホールデンとハイグローブ(Highgrove)にある皇太子所有地の長年の農場経営者デイビッド・ウィルソンによって語られます。ブリストル癌ヘルプセンターのロージー・ダニエルは新しい健康観を提示し、リチャード・ドゥーン(Richard Dunne)教頭は調和の原則を教育に適用することについて話します。ケイス・クリッチロー(Keith Critchlow)は神聖な幾何学に関する映画に出演します。 この日は「ラジカル・プリンス」の著者、デイヴィッド・ロリマーが議長を務めます。彼は「歴史上の分岐点にあるこの時に、科学、医療、環境、農業、建築、幅広い社会問題に皇太子の調和の原則を適用することは、多くの体系的課題に取り組む建設的アプローチとしてこれ以上に重要なことはありません。」と述べました。tinyurl.com/harmony-conferenceこの環境ニュース集は、特に断りのない限り、マリアナ・ブラウン(Marianne Brown)が執筆編集しました。マリアナ・ブラウン (Marianne Brown):リサージェンス・エコロジスト副編集長      購読登録はこちら。A round up of environmental stories • Marianne BrownHedgehogs, seabirds and medicinal plants

つながりを作り波を起こす

関係と相互依存は、エコロジーの基本概念です。「私たちの周りの世界を見ると、私たちは混沌や無秩序に投げ込まれているのではなく、私たちは素晴らしい秩序の、命の壮大な交響曲の一部です。」このように物理学者でディープエコロジストのフリトフ・カプラ (Fritjof Capra) は今号のリサージェンス誌上で述べています。 彼のエッセイは22ページから始まり、科学における現代の発見が、宇宙における私たちの居場所や宇宙とのつながりについての精神的な(必ずしも宗教的ではないですが)考えをどのように模倣し始めているかについての驚くべき議論です。 つながりのテーマと私たちの生活の意味づけは、今号全体に行き渡っています。 カプラが主張するように、つながり、関係性、相互依存性は生態学の基本的な概念です。 つながりと関係性と親密な関係はまた、宗教的経験の本質です。 ですので、小さな第一歩は、自然界における私たちの居場所を認識することから、その関係性の大切さとお互いの関係を有り難く思うことです。 もちろん、科学理論とのあまりにも明白なつながりを描くことには注意が必要です。私たちのほとんどが(正直者だとすると)、それを神秘的なものと融合した発想で理解することはまずできません。 カプラの考え方には、科学的批評家だけでなく、スピリチャルな意識のある支持者もいます。 しかし、「私たちは宇宙に属しています。この所属経験は、私たちの人生を根本的に意味のあるものにすることができます」と、彼は私たちがいつも感じてきたようなことに触れています。 おそらく、社会的でスピリチャルな環境活動家に染み込む情熱を説明するのはこの経験です。 このことは、今号のリサージェンスに寄稿した活動家や理想主義者の中には確かに当てはまる人がいます。 1980年代初頭から、ビアンカ・ジャガー (Bianca Jagger) は、ますます彼女の強力なエネルギーを人権に、そして最近では環境キャンペーンに注いでいます。 今号では、彼女はプラスチック廃棄物による海洋汚染の問題に注意を向けています。 新しい世代の活動家の3人の女性がジョアンナ・ブランデル (Joanna Blundell) の記事「人々を代表する」に登場します。 エミリー・ペン (Emily Penn) は海洋への情熱から、汚染に対する彼女のキャンペーンを知らせています。 サフィア・クレシ (Safia Qureshi) は、コーヒーカップとサヨナラするよう私たちの中毒と戦う決意をした若い起業家です。一方で、ハンナ・ステーンベルへン(Hannah Steenbergen)は、42エーカーの農場を基にするリトリートセンターの開発を支援しています。 また他のページでは、本誌は劇作家ジェナ・ワット (Jenna Wat) に(核兵器禁止キャンペーンに目を向けた)一人芝居の「ファスレーン (Faslane)」についてインタビューします。 ゼンビ・マッチ (Thembi Mutch) は、地元の沿岸地域社会と協力している環境運動家について、モザンビークから報告します。 そして、ヴィクトリア・マンスロープ (Victoria Manthorpe) は、気候変動の課題に対応するために自宅を設計した3人の建築家を紹介します。 私たちの芸術と書評のページも同様に熱狂的です。 単独で立っている巨石への訪問に関するミリアム・ダーリントン (Miriam Darlington) の短編小説は、巨石そのものと同じように魅力的です。クリスティン・トゥーメイ (Christine Toomey) は、よく生きる方法について、仏教徒と禁欲的な教えとのつながりを調べます。ケイト・ブリンコ (Kate Blincoe) は星の下で夜を過ごします。 そしてジニ・レッディ (Jini Reddy) は、民話と癒しとの間の魔法の関係を楽しみます。 この場を借りて、そう、悲しいことではありますが、今号では、持続可能でグリーンな財政のための活動家であり、リサージェンスの長年の友人であったテッサ・テナント (Tessa Tennant) の追悼があります。彼女は今年早くに亡くなり、彼女の生涯にわたる業績について受賞したほんの数週間後のことでした。 受賞演説でテッサが、彼女らしく明言したのは、成功に欠かせなかった要因は他者の支援。 一言で言えば、私たちみんなのつながりです。 「進歩にはチームワークが必要ですので、私だけの成果ではありません。」テッサは続けて「現状に挑戦することを恐れず、より良い世界をつくることに専念した多くの人々を認めてお祝いの言葉としたいです。」グレッグ・ニール編集長定期購読はこちらMaking Connections and Making Waves • Greg NealeRelationship and interdependence are fundamental concepts of ecology

土・手・口

食を本当に健全なものにするにはどうしたらよいか、サティシュ・クマールが説明します。翻訳:斉藤 孝子 食べ物は私の人生で重要な役割を果たしてきました。母には5エイカー[約2ヘクタール]の畑があり、様々な野菜に加え、メロン、キビ、緑豆、ゴマを育てていました。私はよく母に連れられて畑まで歩き、種蒔きや水やり、収穫を手伝ったものでした。 母は料理もとても上手く、チャパティ(発酵させない平たいパン)やダール[剥いた小粒の豆を挽き割ったもの、またそれを煮込んだ南亜料理]、ジンジャー、ウコン、コリアンダー、クミン、カルダモンを使った野菜料理を一緒に作るよう、よく私を誘ったものです。「食べ物はあなたの栄養源であり、薬でもあるのよ。」と、よく言っていました。 以来、私は野菜作りや料理を楽しんできました。インドのガンディアン・アッシュラム(宗教の修練所)で暮らしていた時のモットーは、「食べる者は食物を育てなければならないし、育てる者には十分な食べ物が必要である」でした。食物に対するガンディアンの考え方は、土・手・口の間の距離はできるだけ短かくあるべき、でした。食べ物が自分の庭先や農家の直売所から来るのなら新鮮です。長距離輸送され、プラスチック包装されたものに、本来の新鮮さはありません。ですから、グローバルに考えながらも、食物は地産地消することです。 1982年、私は、支援下さる方々と共に、ハートランドにスモールスクールを作りました。開校初日、子供たち・親御さん・先生たちが集まったその日、私は、このスクールを他の学校とどのように差別化を図るべきか尋ねました。答えは、スモールスクールでは、子供たちと先生が毎日一緒に昼食の準備をし、食前のお祈りをし、一緒に美味しいものを食べ、一緒に後片付けをしよう、というものでした。なぜなら粗末な食事のもとで良い教育はできないからです。如何に食べるべきかを知らなければ、ダーウィンやシェイクスピア、科学や歴史について学んでも、なんの意味もありません。野菜の育て方を学ぶこと、料理を学ぶこと、共に食べるのを学ぶことは、教育において、読み書きと同じくらい重要です。 多くの学校では、食品は大量供給者により遠くから運ばれます。そういう食品はとかく美味しくありません。子供たちが食べないので多くが無駄になります。そして子供たちは糖分や塩分の多いジャンクフードを買い食いするわけですが、味はそこそこでも、栄養にはなりません。 若者たちは結構、BA、MA、PhDの学位をとって大学を卒業しますが、その多くがパンの焼き方やちゃんとした食事の支度を知りません。そこで私は、1982年、全ての学校に菜園とキッチンを作ろうという運動を始めました。スイミングプール、体育館、理科実験室はあるのに、菜園やキッチンのある学校は殆どありません。なぜ食べ物を軽視するのでしょう? 食べ物は豊かな生活の基本なのに、得てしておざなりになっています。 1991年、私は成人向けのシューマッハーカレッジの設立を手伝いましたが、そこでも同じ方針を採りました。学生や参加者全員がキッチンに呼ばれ、作業するよう誘われます。料理をする間、授業をとり損ねるわけではありません。なぜなら料理が授業だからです。現在、大学には6エーカーの菜園があり、6ヶ月の園芸学特別コースがあります。学生は4月に入学し、9月末まで大学に住み菜園で働きます。教師、学生、見習いなど、全部で15人がこのコースに参加します。彼らをグローワーと呼んでいます。 これは実地コースですが、ある程度の理論、つまり、有機栽培、パーマカルチャー[永続可能農業]、アグロコロジー[農業生態学]、バイオダイナミック農法についても学びます。グローワー以外でも、大学で勉強している者は皆、少なくとも週に1度は栽培と料理に携わります。シューマッハ・カレッジが力を入れているのは、知識、心、労働の教育です。 シューマッハカレッジでの食事は、野菜が主です。動物に対する思いやりが、人間や全ての生きものへの思いやりを育む基礎であることは、間違いないと思います。菜食ベースの人は1エーカーの土地があれば済みますが、肉食ベースの人は5エーカーが必要です。動物たちはますます工場式農場で飼育され、その多くが日の光を見ることもありません。こんな不幸な動物たちが人間によって消費されるのです。人間は、そんな不幸せな動物たちの肉を食べて、どうして幸せになれるでしょう?そういう工場式農場や屠殺場を維持するのに必要な水も莫大な量です。ですから肉を食べる方へは、食べるなら少量を、そして放し飼いで楽しく幸せに生きた動物の肉だけを食べて下さい、というのが私のアドバイスです。 野菜料理を楽しむには、料理法を学ぶ必要があります。食品が上手に料理され、新鮮で美味しければ、肉が欲しくなることはありません。 菜食だとひ弱になる、との心配は無用です。かつて環境についての話を乞われ小学校に呼ばれましたが、話の後、ある生徒から「好きな動物は何ですか?」と質問がありました。 「象」と答えると、「なぜですか?」と訊きます。 「象は草食動物だけど、とても大きくて強いですね。大きく強くなるために、肉を食べる必要はない、ということです。」と私は答えました。 「では、二番目に好きな動物は何ですか?」との質問に「馬」と答えると、生徒はまた「なぜですか?」と訊くので、「同じ理由です。馬はとても強く、車のパワーは馬力で測定される程なのに、馬は草食です。」と答えました。すると生徒は「私は今からベジタリアンになります!」と宣言したのです。 肉を食べないと十分な力がつかない、というのは完全な神話です。私の家族はジャイナ教信者で、ジャイナ教信者は2000年以上にわたって厳格な菜食主義を通してきましたが、その多くが、楽しく健康に生き、80代後半や90代になっています。 菜食は、有機栽培のものにすべきです。工業的に生産される農薬や殺虫剤は、しばしば石油からできており、その採掘には地中数千フィートの掘削が必要であり、この化石燃料は温室効果ガスを発生し、地球温暖化を進めます。食べ物が化石燃料由来の化学肥料で栽培され、また化石燃料を使って長距離輸送されては、その環境被害でせっかくの菜食主義の良さも目減りしてしまいます。食べ物が地元産で野菜中心で有機栽培であることは、不可分です。 次のステップは、モンサントなど多国籍企業が生産する遺伝子組換え(GM)種子を使用しようかなどと決して思わないことです。種は土壌、気候、環境の条件に合わせて何千年も進化してきました。遺伝的に工作された種は、実験室の中で開発され、大方が大儲け目当てです。 昔ながらの農家にとっては、種は神聖なもの、つまり生命の源です。農家はそれぞれに、自分たちで種を保存します。ところが、モンサントのような営利会社にとっては、種は単に儲けるため、そして農家を会社依存にさせるための商品でしかありません。したがって、GM[遺伝子組換え]種子は商品であるだけでなく、非民主的でもあるのです。農民から種を保存する自由を取り上げます。GM種子の方が収穫量が多いというのは錯覚です。実際、収穫量では多いかもしれませんが、栄養的な質では劣っています。フェイクフードを沢山食べるより、栄養ある食品を少量食べる方が良いです。GM種子由来の食品はフェイクフードです。 地元で育ち、野菜を主にし、有機で遺伝子組換えのない、健全な物を食べましょう。サティシュ・クマールは2018年8月25-26日のリバー・コテージ祭 (River Cottage Festival) で食品やその他の問題について講演する予定です。www.rivercottage.net/festival/2018。まもなく始まる新しいポッドキャスト、リサージェンス・ボイス で、食べ物についての彼の話をさらにご視聴頂けます。ご期待下さい。サティシュ・クマール: リサージェンス・トラストの名誉編集者購読登録はこちらからどうぞ。Earth, Hands, Mouth • Satish KumarThe value of wholesome food

海辺の詩人

ベン・オクリ著翻訳:斉藤 孝子彼は象形文字を解き明かして朝を過ごし、昼過ぎに海から現れた。海沿いに続く足跡の意味に思いを巡らし、世界の反対側から巡り回る叫びを解釈していた。 海は、得体の知れない怒りで、古代の寺院や繁栄する町々を破壊した。地震は山々や人々の運命に裂け目を打ち込んだ。魚たちの噂話は、三日月の土地で起こった不完全な革命の報をもたらした。 錬金術の記号と格闘しながら、彼は歴史のざわめきに気づいていた。昼近く、イソギンチャクと海底に咲くアカシアの中を散歩した。暖かい海域へ回遊するマグロに魅せられた。長い朝だった。人間の歴史の長い朝だった。あいまいな衝動に促され、人が2本足で立ち上 がった瞬間から、100万年後、自身の意識に立ち上がった瞬間まで。長い朝だった。ピラミッドの発達や核の現実への悔いをかろうじて目にできた時間だった。とは言え、夢に出入りする魚らと語らうには十分な時間だった。。。(全文は購読登録にてどうぞ) 「魔法のランプ」から:ベン・オクリ著・ローズマリー・クルーニー絵「我らの時代の夢」 アポロ社Head of Zeus出版べン・オクリ (Ben Okri): 詩人、小説家定期購読はこちらPoet by the Sea • Ben OkriA short story, illustrated by Rosemary Clunie

なぜ環境キャンペーンは季節との関連付けが大切なのか?

地球のカレンダーにアクティビズムを根付かせるようにニック・ロビンは訴えかける翻訳:坂井 晴香 今年の夏至は特に大切でした。1年で最も日が長い、6月21日の夏至をストーンヘンジや他のどこかで祝うのに加えて、イギリスでは Clean Air Day(綺麗な空気の日)でもあります。この喜ばしい偶然には深い共振があります。と言うのも、毎年700万人もを苦しめる有害な大気汚染から解放されることへの差し迫った必要性が身に染みるほど強く照らし出されているときであろうからです。とはいえ、このように季節と時期を合わせることは例外的です。 季節の年間周期と環境キャンペーンを結びつけるのは珍しいことです。私たちはこの世界の現実と持続可能性への苦闘を結びつけていないことで好機を逃しているようです。季節の法則 もちろん本来、私たちは四季とつながりのある生き物です。地球が太陽の周りを1年で公転し、特有の自転と傾きがあるので、私たちが受ける光や温かさが変化するのです。イギリスでは大体3か月ごとに春、夏、秋、冬がそれぞれ来るという構成です。 これら4つの季節は、キリスト教のカレンダーにおいて最もはっきりと、私たちの文化に変換されています。日照時間が最も短い、冬至の数日後にクリスマスがとり行われます。キリストの誕生祝いは太陽の再生を示しており、ローマ時代初期のサトゥルナリアという祭りのを基にしています。 しかし、かつてよりも私たちは季節を気に留めなくなっています。地球の年間周期によってではなく空調や温度を管理された室内でより多くの時間を私たちは過ごしています。 現在、農家が労働力に占める割合はわずかです。スーパーマーケットでは、昔はある時期に数週間のみ楽しめた食物を年中手に入れることができるよう提供しています。 現在、私たちの一年は消費資本主義の論理によって大部分が構成されています。イースター、クリスマス、アメリカでの感謝祭といったかつては国家的、宗教的に重要であった行事で見事に埋まっています。実際、感謝祭はブラックフライデーの前兆で、アメリカで最も買い物に忙しい時期。また、環境意識の高い人にとっては、国際的な無買日となっています。 季節はただ隠されているだけではありません。汚染によって季節は混乱させられています。現在バリでは「ごみの季節」に耐えています。毎年ふる雨で、近隣のジャワから大量のごみが流れ込んできます。私たちが大気に押し出している二酸化炭素の有害な層が太陽の熱を閉じ込め、気候の混乱を促します。 昨年の11月にロンドンの私の庭で明るい赤色のポピーを見つけました。従来の開花期の数ヶ月後のことでした。温暖化が最も早くに始まったグリーンランドでは、スゲの一種がほんの10年前と比べて26日も早く春の訪れを示しています。ゆっくりと何世紀もかけて作られてきた人間、動物、植物の相互交流パターンがこの数年の間に覆され、生物種が期待できる栄養源から分離され、豊かな自然がさらに失われていくのを加速させてしまいます。 冬の始まりにユーラシア大陸中に広がるスモッグの新たな季節が化石燃料を燃やすことで生み出されてきました。 それは北京やデリーのような都市で今では悪名高い集中的な大気汚染と冬の寒さが混ざり合う時です。パキスタンでは、11月前後の致命的な時期を「5つ目の季節」と環境学者は言います。 今世紀に入ってからだけでも、大気汚染によって若年層7,000万人が亡くなっています。Health Effects Institute(健康被害研究所)のデータによると、大気汚染は毎年冬に突発し、主要な死亡原因です。 抽象的なアクティビズム 私たちの多くはこの破壊を止めて、持続可能な社会を作ることに取り組んでいます。 しかし自然を再生するための行動は、概して季節に見合う私たちの暮らしの基盤から取り出されます。私たちは環境への慈善活動へ毎年貢献しています。暖かくなる夏の時期にボランティアに参加します。しかし、私たちが四季と切り離されていることは私たちが自然のカレンダーとの繋がりを失っていることを意味します。 したがって私たちは8月や9月にハリケーンが国際ニュースの見出しに上がると驚きます。しかし、これは恒常的なパターンなのです。 社会的環境的な意識を駆り立てる個々の記念日は確実に足りているのです。国連には150もの国際的な公式記念日のリストがあります。その多くは6月5日の世界環境デーのように持続可能性と関連付けられています。しかし、懸念事項につながる理由について明確な論理がそこにはないのです。地球のための記念日(抜粋) 2月2日:世界湿地の日3月3日:世界野生生物の日3月21日:国際森林デー3月22日:世界水の日4月22日:アースデー5月20日:ワールドビーデー5月22日:国際生物多様性の日6月5日:世界環境デー6月8日:世界海洋デー6月17日:砂漠化および干ばつと闘う世界デー6月18日持続可能な料理の日 (Sustainable Gastronomy Day)6月21日:空気の日 (Clean Air Day)(英国)9月16日:オゾン層保護のための国際デー10月4日世界動物の日/聖フランシスコの日 (St Francis’ Day)10月21日:林檎の日 (Apple Day)(英国)11月5日:世界津波の日12月5日:国際スモッグデー (International Smog Day)12月11日:国際山岳デー。。。(記事全文は定期購読にてどうぞ)。。。このように季節を利用することは、私たちの生活の中から自然が消えるのを防ぎ、地域社会や世界中の人々と新たなつながりを作るのに役立ちます。 私たちが持続可能性を生きた現実とするには、旬の味付けがいくらか必要なのです。 賢明なコメントと提案をしてくれたイアン・クリスティーに謝辞を述べます。ニック・ロビンはロンドン大学の経済学部において持続可能な金融の実践教授を務めています。 彼はリサージェンスの理事を辞任し、ここに個人的に投稿しています。定期購読はこちらからどうぞArticle - Why Green Campaigns Need Some Seasoning • Nick RobinsGrounding activism in the Earth's Calendar

陸と海での保護活動

草原の減少ストップに、牛の野草飼育が貢献か新たな研究が、伝統的農業へ転換するメリットを明らかに。マリアンヌ・ブラウンからのレポートです。翻訳:浅野 綾子 牛の飼育では、栽培用に改良された牧草を餌にするのが慣行的です。農家に種の多様性に富む草原での放牧を奨励すれば、イギリスの草原保護に一役買うかもしれません。 セーブ・アワ・マグニフィセント・メドウズ (Save Our Magnificent Meadows:私たちの素晴らしき草原を守ろう) の運動に向けた新たな研究によれば、野生の草原で飼育した牛の栄養価は、慣行栽培の牧草で飼育された牛と比べてはるかに高くなり得るとのこと。この運動にかかわる団体の1つプラントライフ (Plantlife) のトレボー・ダインズ (Trevor Dines) が当誌に伝えた話です。野生の草原で飼育された牛に対する消費者の需要を創出できれば、その草原管理について農家の経済的な実行可能性を高め、草原保護の経済的な実行可能性も高めることになるとダインズは言います。 英国で1930年代から、野生の草原の97%超が消失し、結果として貴重な昆虫の個体群が減少しています。 周囲に残っている野生の草原はほとんどなく、人々はどうやって草原を楽しめばいいのかわからなくなってしまっているとダインズは言います。「草原に腰を下ろして、キンポウゲをつむ。こんな姿は暮らしの風景から消えてしまいました」とダインズ。「野生の草原ほど胸がわくわくする場所はないんですよ」 野生の草原を保護することに関心をもってもらうために、プラントライフでは、ナショナル・メドウズ・デイ (National Meadows Day) を開催。今年は7月7日に行われます。このイベントでは、虫取りや、チョウの見分け、ダインズが「五感全部が奮い立つ」と言う草原を走り抜ける機会ももうけています。 以前、昔ながらの草原では、1から8月のはじめまでは草が伸びるにまかせ、その後は干草用に草を刈り取りました。さらに、9月と10月には、草のない状態での家畜放牧が続いて行われました。今日では高度に管理された農業技術(1年に2回か3回、貯蔵牧草の刈り取りがあります)が採用され、野草が育つ十分な時間がないのです。 「草原は、再野生化の議論で見落とされています」とダインズは言います。「私たちは森林にこだわり過ぎてきました。でも、バランスが必要なんです。草原を必要とする種があります。草原には、森林とは異なる役割があるのです」www.plantlife.org.uktinyurl.com/cattle-meadows農家は、どのようにして野生の草原を保護できるのか。当誌の新しいポッドキャスト「Resurgence Voices」に向けて、マリアンヌ・ブラウンが、2015年ナショナルメドウズ賞 (National Meadows Award) の受賞者オードリー・コンプトン (Audrey Compton) と語ります。マダガスカルでジンベエザメの新たなホットスポットを発見専門家は、ジンベエザメを保護するため、観光の制限が必要だと言います。メリッサ・ホブソンのレポートです。翻訳:浅野 綾子マダガスカルは、若いジンベエザメが捕食活動をするホットスポット。「Endangered Species Research」ジャーナルに掲載されたマダガスカル・ジンベエザメ・プロジェクト (MWSP) の新たな研究が伝えています。 この研究では、2016年の9月から12月のシーズン中、ノシ・ベ (Nosy Be) 地域で、85のジンベエザメの個体が識別されました。比較されるのは、同年、70の個体が識別されたタンザニア、33の個体が識別されたモザンビークです(両方とも、ジンベエザメの目撃地として世界的に有名です)。この新たな発見で、ジンベエザメツアーマップにマダガスカルも仲間入りできそうです。 MWSPは、海洋大型動物保護財団 (Marine Megafauna Foundation) 、フロリダ国際大学 (Florida International University) 、マダ・メガファウナ (Mada Megafauna:ノシ・ベ地域の海洋大型動物を保護する団体) が協働するプロジェクト。2016年に、生物学者であり、この研究の主執筆者でもあるステラ・ディアマン (Stella Diamant) によって創設されました。 当時、ほとんどの科学者はマダガスカルにジンベエザメの個体群がいることに気づいておらず、地元住民もおそらく30頭程度にすぎないと見込んでいました。それ以来、MWSPが写真識別によって確認したジンベエザメの個体は250頭近くに上り、通信衛星のタグを利用して個体の動きを追跡しつづけています。 「今ならここにジンベエザメがいると世界に発信できます」とディアマン。「マダガスカルは、若いジンベエザメにとって重要な季節的生息地なのです。ですから、ジンベエザメの効果的な保護を確実にしなければなりません」 ジンベエザメに悪影響がないよう確実にするため、観光客が殺到した場合は適切な対処が必要との配慮はもっともなことです。ディアマンは、ジンベエザメの周囲での行動の要点をまとめた行動規範をつくりました。この規範を守れるように、地元の観光業者一人一人をディアマンがサポートしています。 「観光業者がこの行動規範の重要性を理解し、行動を変えはじめた時のことと言ったら、それはもう特別なできごとでした」とディアマンは言います。「海中で、ボート一艘がすでにサメと遭遇していたとしたら、他のボートは皆、すぐに近くに行こうとしないで待ったのです。見つけた1頭に皆がこぞって集まらないことで、ツーリストはサメと良好な交流ができ、いい写真もとれた。サメも邪魔されずに辺りを長く泳ぎ回ることができたのです。素晴らしいことでした」www.madagascarwhalesharks.orgメリッサ・ドブソンはフリーランスの旅行記者、広報コンサルタント。購読登録はこちらからどうぞ。

祝宴の時、断食の時

私たちの日々の食事は旬を反映し尊び、際限ない消費ではない。ジュリア・ポンソンビ。翻訳:佐藤 靖子北半球では冬の季節に入ると、1年で最も日の短い日、明るい時間より暗い時間の方が長い時に向かっていることに気付きます。冬至を過ぎると、明るい時間は次第に長くなります。お祝いすべきことかもしれませんね? 古代ローマの異教徒の世界では、不屈の太陽(Unconquered Sun)(Sol Invictus:無敵の太陽神)の祝祭日は12月下旬と1月初旬に合わせました。今日キリスト教徒の世界では正義の「太陽Sun」(息子 Son)が世界に生まれた瞬間という概念を祝っています。こうして、光の登場が事実上も、そして例え話としてもクリスマスー公現祭の起源として祝われました。こうしたお祝いには祝宴がつきものでした。 北半球で1年のこの時期と一致する天文行事は、前近代の出来事として非常に重要なものです。冬至が古代エジプト人によってオシリスの誕生日を祝う時と考えられていたことも、古代ギリシャ人によってディオニュソスの誕生日を祝う時として、スカンジナビアの古代スカンジナビア人によって女神フレイヤの誕生日を祝う時として考えられていたことも驚くには当たりません。11月~12月の期間に当たるものに、ユダヤ人がエルサレムの神殿の再献納を祝う、ハヌカがあります。「光の祭り」としても知られています。インドには、ほぼ同じ時期にヒンドゥー教の「光の祭り」、ディワリがあり、イギリスで11月5日に行われるボンファイヤー・ナイト (Bonfire Night) を彷彿とさせる花火が最後を飾ります。こうしたお祭りは全て世界に光が再来したことを歓迎する喜びに関するものです。 今日では、私たちのライフスタイルは自然や季節ごとの指標となる事柄から大きく離れてしまいました。それらはかつて広い屋外から直接、日々私たちの意識に入って来ました。。。次第に暗くなっていく空、寒さ、痩せた土。私たちはこうしたもの全てに気付き、もっと悩まされたことでしょう。室内の暖房や明かり、温室、ふんだんな在庫があるスーパーマーケット、人と食べ物の国際輸送などの形でもたらされる近代の覆いがなければ。 永遠に潤沢にあるという誤った感覚を与える化石燃料の消費は、私たちにはそれが何であるか良く分からないという別の不確定要素を表しています。エネルギー供給は、現代世界において私たちが知覚するニーズ、「全体の」ニーズに対し非常に円滑に調整されるため、それを有限な物として見ることを妨げられてしまいます。快適さを作り出すために、資源が収奪される方法を私たちは認識していません。電気 - 容器の中の日光 - はスイッチボタン一つで電源を入れることができ、そこに季節はありません。 伝統的に、祝宴は自然や、歴史的、宗教的、個人的な行事の指標として発生しました。祝宴は1年のうちで人々が景気づけを必要とする時期によく催されました。集まって太陽の光の再来を祝い、更には来る年の植物、動物、鳥や蜂の世界の繁殖を歓迎しました。祝宴は社会的な結束の確認と関わっており、また、自然や文化の暦の周期的な潮の干満、そしてそれらがいかに密接に絡み合っているかを思い出させました。また、祝宴には媒体としてその季節に適した食べ物が用いられました。そのため食物の乏しい冬は、ドライフルーツやナッツ類が祝宴のために作られる砂糖菓子の主な材料でした。一方、春はアスパラガスのような大地からいち早く出てくる新しい芽が祝宴を祝福することができました。 今日、私たちは地球の資源のごちそうを楽しむ祝宴の最高潮に達しました。これは、狂ってしまった祝宴と断食の行動様式を、制御し、尊敬の念を持って再構築する必要があることを象徴しています。ここで断食(祝宴の対立法的手段)が効果を発揮し始めます。祝宴の準備をする時はいつも、一歩下がって、自制して、人生を一休みする必要があります。立ち止まって考えます。胃を休ませて、脳が再び焦点を合わせられるようにします。断食はダイエットではありません。断食は悪い習慣に気付くこと、予期することであり、それを止めることです。だから冬至の祝宴(もしくは何か他の祝宴行事)の前に24時間断食をすることにするなら、化石燃料の断食もしてはいかがでしょうか?ジュリア・ポンソンビ (Julia Ponsonby) はシューマッハーカレッジの食料部門の代表で「Gaia’s Kitchen, Gaia’s Feasts and The Artof Mindful Baking」の著者。彼女の旬のレシピは リサージェンスのハームページをご参照 www.resurgencejapan.com購読登録はこちらからどうぞ。Time to Feast, Time to Fast • Julia PonsonbyOur daily diet should reflect and respect the seasons