世界をわたるオペラ

ミュージシャンのデビッド・マーフィーは、ラヴィ・シャンカールの「Sukanya」(東と西の音楽の力を統一する画期的な試み)の進捗報告をします。 

翻訳:沓名 輝政

ラヴィ・シャンカール (Ravi Shankar)、偉大なインドの シタール奏者 は、最も影響力のあるミュージシャンのひとりでした。彼が影響を与えたのは、様々な人生を歩む人々、あらゆるジャンルの音楽のミュージシャンで、ジョージ・ハリスン、ユーディ・メニューイン、ジョン・コルトレーンやフィリップ・グラスなどの名前が含まれています。ラヴィ・シャンカールの音楽はすべての文化や世代の境界を瞬く間に越え、世界中に広がりました。

 私は、2004年から2012年12月の彼の他界まで、ラヴィと多くのプロジェクトをする素晴らしい役得に恵まれました。これらのプロジェクトには、ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と共演した彼の「シンフォニー」の世界初演があり、ソリストとしての彼の娘アヌーシュカと一緒でした。

 私は、新しい作品を準備していたラヴィとのセッションを決して忘れないでしょう。彼の作曲は、ベートーヴェンの西洋古典の世界のように、創造的な「恍惚」に入ることでもあり、そこから彼のアイデアが溢れ出します。私は、これらのアイデアを紙の上に書き下し、西洋の楽器、インドの楽器と声で実現するようにラヴィと協働します。コンピュータ技術は、このプロセスに理想的でした。私が彼と一緒に仕事をしていた何年かの間に、技術が開発され、楽器音のコンピュータシミュレーションは、はるかに正確になりました(コンピュータがシタールのような音を出そうとして常に彼を楽しませつつ!)。つまり、私たちは試行できるということです。彼のアイデアの様々なオーケストレーションとハーモニーを用意して、彼の理想的な音に達するまで改善しました。

 ラヴィ・シャンカールの最終的な芸術のビジョンは、世界初の東西オペラを創ること。人を楽しませ、高揚させる作品の中で両半球の音楽を楽しく統合しつつ、彼にとって非常に重要であったインド精神の要素を伝えることでした。私たちがこのことに焦点を絞ったのは、彼の「シンフォニー」の初演のすぐ後の2010年でした。「Sukanya」と題したオペラは、画期的な組み合わせで音楽、音、ビジョンの力を結びつけます。

 私は現在、ラヴィのメモやスケッチ、彼の娘アヌーシュカと彼の未亡人、スカンヤ・シャンカール (Sukanya Shankar) の話から、作業を完了するところです。

「Sukanya」のアイデアは、1995年以来ラヴィの心の中で芽生え、2010年以降ピークに達していました。 90歳の彼は時間に限りがあると考え、信じられないほど急速に音楽活動をして、音楽への思いで、創造的なアイデアの流れが湧き起こりました。彼は伝統的なオペラの型を壊す作品(インドと西洋との間の、音楽、ダンス、演劇の伝統の共通基盤を探る本当に画期的製作)のビジョンを持っていました。このビジョンを満たすためにラヴィは、インドと西洋のミュージシャン、インドと西洋の声、そしてインドのダンサー用に譜面化したオペラを明確に心に描きました。彼は映画や視覚イメージに魅了され、電子投影によって「Sukanya」の視覚的要素を強化しようと構想しました。

 「Sukanya」は、マハーバーラタの物語に基づいています。台本は、インドの作家アミット・チャウドゥーリー (Amit Chaudhuri) です。楽しくて手に入るもの、人生後半の愛の発見に関するもの。また、人生と愛のラヴィ・シャンカール自身の経験に関するものです。

 物語の中で、若い男 Chyavanaが、森の中で瞑想しています。彼の瞑想は、アリが彼の周りに巣を作り始めるほど深くなります。何年も経過して、巨大な蟻塚が形成されます。

 ある美しい春の日、Shryayati王は、春祭りのため、従者と森に来ます。彼のひとり娘 Sukanya は、蟻塚に気付き、2 つの宝石が内側から輝くように見えて、鋭い棒でそこを突きます。

 蟻塚の内側から悲鳴があり、輝きが消え、Sukanya は恐怖で逃げます。王は巨大な蟻塚を調査。 Chyavana(今では偉大な賢人でとても高齢)が、下から現れます。彼は盲目にされていて、代償として彼はSukanyaとの結婚を求めます。

 Chyavana の高い精神性を認めた王は、同意します。 Sukanya は、森の中で幸せに忠実に賢人と一緒に住みます。

 ある日彼女は、アシュビニー神である、二人の美しく若々しい双子の半神によって発見されます。彼らは尋ねます「あなたは私たちのどちらかと結婚し、楽園に住めます。この老人と一緒にいなくて良いのでは?」

 Sukanyaは夫への献身を強く思い、丁重に申し出を断りました。若い半神は再び話します。 「あなたのために話をまとめましょう。私たちがあなたの夫を私たちと全く同じハンサムな若者にします。次に、あなたのパートナーとして私たち3人から1人を選ばなければなりません。」Sukanyaは、このテストを受けることにしました。

 若者は湖に彼女の夫を連れてくるよう彼女にお願いします。賢人、若い半神は同時に水に完全に身を浸します。彼らが再び姿を現わすと、Sukanyaには、全く同じ3人のハンサムな青年が見えました。ここから物語は様々な展開を見せます。全ては来たる世界初演の作品で明らかに!

 晩年のラヴィ・シャンカールは、全く新しい音楽の領域を開拓しました。 Sukanyaは、例えば、インドの声によるパーカッション(コナッコル)の上に浮かぶ西洋スタイルのオペラのセリフでこれを表現しています。これは、絶対的に新しい独特な音の世界を作ります。足して全体が大きくなるように、東西の音楽を届けるというラヴィの目的を閉じ込めたような音です。

 オペラの本質はラヴィ自身の言葉で要約できます。「Raga Sangeet として知られているインド音楽のしくみは、約2000年前のヒンドゥー教寺院のヴェーダ賛美歌という原点まで遡れます。全てのインド音楽の根源です。西洋音楽のように、インド古典音楽のルーツは宗教です。音楽で、自己実現へ向けた精神的な鍛錬ができます。音が神(Nada Brahma) であるという伝統的な教えに従うのです。このプロセスでは、個々の意識を宇宙(永遠不変の本質)の真の意味の啓示の領域に上昇させることができ、楽しく体験することができます。私たちのRagaは、この本質を知覚できる媒体なのです。」

デビッド・マーフィー(David Murphy) は、バージン・レオン (Leon Barzin)、チャールズ・マッケラス (Charles Mackerras)、ラヴィ・シャンカールと協働している指揮者兼音楽監督です。オペラ「Sukanya」は2017年5月に開演。ツアーの全貌は、2016年初頭にロイヤル・オペラハウスやロンドン・フィルハーモニー管弦楽団により発表。詳しい情報は www.ravishankaroperaproject.org をご参照。


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An Opera to Span the World • David Murphy

Bringing Ravi Shankar's last great project to life

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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