食:バランスを探し出す

ファッショナブルなセレブ・シェフの世界に、エラ・ウッドワード(Ella Woodward)は、よりホリスティックな食への姿勢を提唱するニューウェイブとして現れた。リサージェンス&エコロジストはエラの新刊発売を祝してインタビューを行った。

エラさんは、好評を博した「美味しいエラのレシピ集(Deliciously Ella)」を初めとし食についての書籍を出版され、ここ数年の間に広く知られるようになりましたが、食に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?

2011年6月のことなのですが、ある朝起きるとひどい体調不良だったのです。お腹はまるで妊娠6ヶ月のように膨らんでいたし、疲労感、激しい動悸もあって、二日酔いになったような状態でした。その後4ヶ月経てこれらの症状は徐々に悪化し、私は何人もの医師から診察を受け、数え切れない位の検査のために病院を行ったり来たりするようになりました。何が原因なのか誰もわからなかったのです。この時点で私は立ち上がる際に視界を失うこともあり、痛みなしにはもの食べることも出来ず、ベッドから起き上がることもままならない状態でした。

 後に、私は起立性頻脈症候群 (postural tachycardia syndrome) であると診断されました。これは自律神経系に影響を及ぼす慢性疾患で、それが乱れることで体内機能のほとんどが正常に働かなくなるのです。心拍数、血液の循環、消化、免疫システムなどが乱れた状態になっていました。

 従来からある薬も約半年ほど試してみましたが残念ながら効果がなかったようで、私は依然としてベッドから起き上がる事も出来ませんでした。そこで、食べるものによって自分自身で治してみようと思ったのです。自然食品と菜食中心の食事を始めましたが、当初私は料理の仕方を知らず、勉強のための動機付けとしてブログを書き始めました。具合が良くなり薬を飲まなくて済むようになったのはそれから18ヶ月後なのですが、本当に素晴らしい効果でした。

あなたの食べ物や食べ方に対する「哲学」とは、どのようなものでしょうか?

私は加工や精製を施していないそのままの素材を使った、自然食品に焦点を当てています。食生活の中心は野菜、果物、ナッツや種、豆類、全粒穀物、スパイスなどです。こんなシンプルな素材だけで、自分の手で沢山の美味しいものを作れることに折に触れて感激してしまいます。

あなたはメディアによっては「クリーン・フード (clean food)」の効能を賞賛する新たなトレンドに関連づけられているようですが、「クリーン・フード」とはどのようなものですか?

私は「クリーン・フード」という単語は好きではありません。まるで他の食品が汚いと言っているようですし、それは私の食に対する見方ではないのです。このように食事の仕方をあるカテゴリーに限定してしまうと、罪悪感が生じやすくなりむしろ健康的ではないと思います。私にとっては食とは楽しむことであり、個々人で最適なバランスを探し出すものなのです。

エラさんの食べものや食べ方に対する姿勢というのは、緑の思想家 (‘green’ thinkers) とも呼ぶべくベジタリアン、ヴィーガン、オーガニック食品や農業、パーマカルチャーなどの実践者の方々と比べてどのように違うとお考えですか?また、どのような点では共通していると思われますか?

私は自分の食事法にこういうものだというレッテルを貼りたいとは思いません。先ほども申し上げたとおり、何か決められたことを行うということよりも自然食品であることが本質ですし、物事の柔軟性を欠いてしまえば厳格すぎるように感じるものですから。私たちは皆それぞれ違っている訳ですから、個々に合う方法を探し出さなくてはならないし、自分が今行っていることで過度に規範となることは避けたいと思っています。私は自分の食事法を皆さんにお伝つえしてはいますが、このやり方に従って欲しいとは思っていませんし、そのことは明確に示してきたつもりです。ただ単純に、調理法と食事法に対するインスピレーションを湧き起こすアイディアを共有しているだけなのです。

エラさんの食事法とレシピはご自身の健康問題から生まれたものですが、どんな方にも合うものだと思いますか?

もちろんです。野菜は誰にだって楽しめるものですから!

食に関する記事、テレビ番組、新聞のコラムと、かつてこんなにも食への機運が高まったことがあったろうかと感じています。エラさんは何故現在このようになっていると思われますか?このことによる利点と不利益はどのようなものだとお考えですか?また、これらをただの流行やファッションだと考えることに、どのような危険性があると思われますか?

私は人々が本当の意味で料理を楽しむようになってきたのだと思っていて、これは素晴らしいことだと思います。家で食事をするとより安く済むし何よりもより健康的。どちらも良いことです。食に対するトレンドは常に移りゆくものだと思いますが、いかに食べ、それがいかに私たち自身に影響を及ぼすか気づきを増やしていくことは、常に良いことなのではないでしょうか。

昨今は多くの人がそれぞれの予算の扱いに慎重にならざるを得ない現状です。英国でも何千という人々が、物によってフードバンクを利用しています。あなたのレシピはこの状況においてどのような点で適していると言えますか?お金があまりない状況でもより良く、健康的に食事することは可能だと思われますか?

それはその人自身によると思います。健康的な食事を行うことは、すごく高価にも安くもなり得ます。単純にあなたが何を作ることに決め、購入するかによるでしょう。例えば朝食に自家製オートミルクのポリッジを作れば、どんなシリアルを購入するよりも安上がりになるでしょう。また、旬の野菜(人参、じゃが芋など)と豆、米などを使えば、簡単な上に安価な予算で野菜のシチューを作れます。もしデーツやナッツ、スーパーフードの類なんかを沢山買えば高額になるでしょうが、これらはどうしても必要なものという訳ではありません。

同様に、多くの人が(相対的に)お金がある場合でも、時間がないとこぼしています。調理をする時間がなくともより良く健康的に食べることは可能ですか?

もちろんです。先ほども触れましたが何を作るかによると思います。私はよく多めに作って残りを冷凍しています。こうすることで忙しい一日の終わりでも自家製の食事を頂くことが出来ますよ。

環境的な話になりますが、私たちは食事法が環境へもたらす影響に気がつきはじめています。近年では、気候変動と二酸化炭素の排出は世界的に上昇する肉食の割合と密接に関係しているという点があります。食品、農業、食事法に関連しエラさんが最も重視する環境問題は何がありますか?

それについては様々な領域において見る必要があると思います。私自身は先ほどおっしゃっていた「環境に甚大な影響を及ぼす肉食」の消費を減らすことに、特に興味を持っています。このような問題の範囲を取り扱った研究文献や記事、ドキュメンタリーが現在では多く発表されています。

同様に、食品、農業、食事法について考えた時エシカル(道徳的)であるかが考慮されると思います。この事に関し、エラさんが重きを置く部分はなんですか?

何においても、常に品質重視です。工場式農場経営は大きな懸念ですし、私は皆さんに良質な肉、魚、卵を、これまでよりも少ない頻度で購入することを強調するようにしてきました。

何かご自身で育てている野菜等はありますか?

残念ながら今の所は何も。ロンドンの中心部で本当に忙しい毎日を過ごしているので、難しいのです!でも願わくば、いつかは…

ローカルな食品を消費することと、その対極である輸入製品の購入に関して思うことや習慣があれば教えて頂けますか?また、旬のものを食べることに関してもご意見をお聞かせ下さい。

個人的には可能な限りファーマーズマーケットを訪れ旬のものを購入するようにしています。時期でなく入手できないものに関しては代わりに冷凍を買うことも多いのですが、低価格であることもその理由のひとつです。旬のものはやはり美味しいことが多いです!その事に固執する訳ではありませんが、大好きなアボカドなんかを除けば、冬の最中のフレッシュベリー等は高価であるばかりでなく味もしないので、買わないようにしています。

著書の第二弾が発行されたばかりですね。この中でのエラさんの食と食事法に対する姿勢をお聞かせ下さい。

健康的な食事を簡単に手早く手軽にとることについて書きました。

あなたが政府やその他の機関によってなされるべきだと感じる、食品へのサステナブルで健康的なアプローチがあれば教えて下さい。

砂糖への厳しい施策がなされたら良いですね。商品の容器やパッケージの前面にスプーン何杯分の砂糖が添加されているか表示することが、本当の前進と言えるのではないかと思います。トマトソースやスープなんかにどのくらいの砂糖が入れられているかを、皆さん認識されていないです。

エラ・ウッドワード:料理家。「美味しいエラの毎日レシピ(Deliciously Ella Every Day)※未邦訳。Yellow Kite刊 ISBN: 9781473619487」著者。

Finding A Balance • Ella Woodward

Advocating a more holistic attitude towards food

リサージェンスの50周年にあたり、エラさんにシンプルなお祝いのメニューを選んで頂きました。

一押しの「ひよこ豆とキヌアのターメリックカレー」を紹介します。

 このカレーは書籍の発行にあたり私が作った最初のレシピであり、中でもお気に入りのものです。友人全員に振る舞いましたが、誰かが家に遊びに来る際には定期的にリクエストされる人気の一品となりました。このレシピの美味しさのキモはキヌアをココナッツ・カレーミックスで煮込むこと。キヌアがこの素晴らしい香りをすべて吸い上げ、一口食べる度にターメリック、コリアンダー、ジンジャー、チリなどの風味が爆発するようです。私はこれにほうれん草を追加するのが大好きで、鮮やかな緑がイエロー・オレンジのカレーに美しいコントラストを作り出します。最重要事項はターメリックの扱いに気をつけること。すべてに染みを付けるはめになってしまいます。

材料(4人前)

新じゃが芋・・・ 500g

にんにく(皮をむいて潰したもの)・・・3片

粉ターメリック ・・・小さじ3

粉コリアンダー ・・・小さじ1

チリフレークまたは粉・・・小さじ1

粉ジンジャー・・・小さじ1

ココナッツミルク・・・200g

トマト缶・・・400g

塩、こしょう

キヌア・・・180g

缶のひよこ豆(水で洗ったもの)・・・400g

お湯・・・300ml

ほうれん草・・・150g

作り方

じゃが芋を、水を入れた鍋の中に入れる。沸騰させ、ナイフが簡単に入る位までの堅さまで25分間茹でる。湯を切って半分に切る。

 大きめの鍋に切ったじゃが芋、ガーリック、ターメリック、コリアンダー、ジンジャー、ココナッツミルク、トマトを入れて火にかける。沸騰させ塩こしょうをふり、キヌアを追加する。

 すべてに火が回るように蓋をして、とろ火に抑えてコトコト煮込む。45分間はお湯を追加しつつ煮込んでいく。鍋底に焦げ付かないよう15分ごとにかき混ぜる。

 煮込みだしてから約20分経過した時点でひよこ豆を追加する。

 煮込みだしてから40分経過した時点でほうれん草を入れ、しんなりするまで火を通す。

 煮込んだキヌアがふっくらとし堅さがなくなったら、カレーの出来上がり。

チョコレートガナッシュケーキ

これは私のお気に入りのチョコレートケーキ。とっても柔らかくて、しっとりしています。このケーキは6種類の材料を混ぜ15分焼くだけというもので、一番シンプルなケーキじゃないかと思います。ちょっと上等なデザートが必要で、でも時間か気力が限られている時なんかに最適です。

材料

アボカド・・・3個

アーモンドバター・・・大さじ7

生カカオパウダー・・・大さじ8

メープルシロップ・・・大さじ11

アーモンドパウダー・・・140g

チアシード・・・大さじ3

ケーキの型に塗るココナッツオイルも必要になります。

アイシング(なしでも可)

ココナッツオイル、生カカオパウダー、メープルシロップ・・・各大さじ4

作り方

オーブンを事前に180℃に温めケーキ型にココナッツオイルを塗ります。半分に切ったアボカドの果肉をスプーンですくい、種を捨てます。すべての材料をフードプロセッサーに入れ、なめらかになるまで攪拌します。生地をケーキ型に移し、30分間オーブンで焼きます。生地にナイフを差し込んでも何もくっつかないようになったら完成です。ふきんでくるみ、20分ほど冷まします。アイシングを施す場合は、アイシングの材料をすべて混ぜどろっとなるまで攪拌します。ココナッツオイルは事前に温めておいた方が良いかもしれません。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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