人間と動物

プリシラ・アンダーソン (Priscilla Alderson) は、優しさと信頼は人間固有なものではないと確信しています。

翻訳:斉藤孝子

私は動物より人間にはるかに興味がありますが、私の娘アンナは、動物たちがその生活の中心です。娘は7歳の時、ギリシャ神話のケンタウルスさながらに馬で走り回り、お肉を食べるのも好きでしたが、動物の権利を尊重するため肉食を止めました。

 娘は現在、ドーセットで馬の訓練治療センターを運営していますが、そこでの最近の3つの出来事が、私の動物への見方を大きく変えました。

 まず、2匹の豚の話から始めましょう。その豚たちは壁に囲まれた庭の中にある小屋に棲み、地面を覆っている大量の雑草を根こそぎ食べていました。ペパは何日か具合が悪く小屋から出てきませんでしたが、その姉ジョージは、私の娘アンナが餌を持っていくと、ふだん通りすぐ駆け寄って来ました。でもジョージは、自分の分だけを食べると、残り半分はペパに残しておいたのです。ぺパには優しさや我慢することだけでなく、食べ物を公平に分けるという考えがあるようでした。

 次の例はカーンという、やや気難しく少し脚をひきずる馬です。アンナはカーンの脚に多くの治療を試した後、「ホースウィスパラー(horse whisperer)[心理療法を用いる馬の調教師]」であるゲイナー・ダヴェンポートに往診を依頼しました。

 ゲイナーはまずアンナに、カーンについての情報を一切自分に告げないよう注意してから始めました。ゲイナーは優しくカーンに近づき、安心させた後、自分の頭をカーンの頭に近づけました。それは、まるでカーンの思いとゲイナーの思いがほぼ触れ合っているかのようでした。長い静寂の後、ゲイナーはカーンから知ったことを伝えました。カーンはゲイナーに、自分には心雑音があり11歳であると伝えていました。アンナは心雑音については知ってましたが、9歳だと思っていたのです。記録をチェックすると、カーンはその通り11歳でした。

 カーンはゲイナーに、自分の向かい側の厩にいた白黒の斑毛の馬がその前日連れていかれたこと、その馬は殺され次は自分の番だと怖がっていることも、伝えました。アンナは、その斑毛の馬は新しい飼い主に引き取られ幸せに暮らしていること、その馬もカーンもどちらも殺されたりしないことを話し、カーンを安心させることができました。

 ゲイナーはカーンから、足の筋肉が痛むところを教わりましたが、そこはアンナが思っていたより下の方でした。これらの新たな発見やゲイナーの薬でカーンの跛行は完治し、気難しさが多少は残るものの、穏やかで幸せそうになりました。

 私たちは、ゲイナーの仕事により、馬が人の話をいかに多く聞き、そして数、色、解剖学、時間、死などの抽象的な概念を明らかに理解している、ということに驚きました。問題は、馬がこれから起こる事や人間の意図をどのように想像するのか、現在だけでなく、過去の記憶やこれからの希望や心配に、どれほど多くの感情が反応するのか、です。センターでの治療計画を作る上で、とりわけゲイナーは、過去に虐待を受けた馬たちの記憶や、怪我、心配に耳を傾けることで、本当に重要な働きをしてきています。

 3つ目の例は、フラッシュというジャーマンシェパードです。彼は、大型犬にしては長い13年の生涯を通し、ずっとアンナの親友であり最高の忠犬でした。彼は病状がひどく悪化し、白内障で目は見えず、痛みが続き、殆ど動けなくなりました。獣医さんの往診時、アンナは悲しくも、2日後に安楽死の注射を打ちに来てくれるよう段取りしました。

 彼女はフラッシュをどこに埋葬するか友人らと話し、家の近くにしたいと、壁に囲まれた庭の2本の木の下に決めました。豚たちはつい最近ほかの雑草区画に移ったところで、それまで、犬たちは一度もその庭に入ったことはありませんでした。

 2日後、獣医さんが来ると、フラッシュがどこにもいないではありませんか。アンナや友人らが畑や納屋の周りを探しても見つからず、どうやったらそんな遠くまで歩けるのかと不思議に思いました。ようやく壁囲いの庭をのぞくと、なんと、その2本の木の下にフラッシュが横たわっているではありませんか。フラッシュは、頭を上げると、まるで「アンナ、君を信頼しているよ。そう、正にここで、今こそ、僕は逝くよ。」と言うようにアンナの膝に頭をのせました。

 フラッシュもカーン同様、自分が死にゆくことを含め、複雑でいくらか抽象的な概念を理解していたのでしょう。おそらく、彼はアンナの悲しみを和らげ、自分の死が与える彼女の辛さを少しでも減らしたかったのでしょう。自分の遺体を庭に運ぶという辛い仕事をさせずに済むようにしたのでした。。。(記事全文を読むには定期購読の登録をどうぞ


プリシラ・オルダーソン (Priscilla Alderson):ロンドン大学幼年期研究学教授

Article - Humans and animals • Priscilla Alderson

Are humans so very different from other animals?

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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