多様性は中心街を生かす

ナオミ・カントンは商店主がネットやスーパーマーケットの優位性を否定している街を訪れた。

翻訳:馬場 汐梨

小売業者でアナウンサーでもあるメアリー・ポータスは政府の指示で2011年にイギリスの中心街の未来についてのレビューを述べました。そこでの彼女の発見は、中心街が消滅に向かっているということでした。

 おそらくリサージェンス&エコロジスト誌の読者のほとんどにとっては驚くことではないでしょうが、買い物の女王と称された女性が、郊外の小売店やショッピングモール、スーパーマーケットとインターネットが小さな店や小売店を危機的な状況に追いやっていると主張しました。

 「自営の肉屋やパン屋、燭台屋に占められていた中心街の時代は、一部の例外的な環境を除いて終わった」とポータスは挑発的に述べました。

 2017年初頭までに状況は更に悪化したようです。流通会社パーセルヒーロー (ParcelHero) の消費者研究所長デイビッド・ジンクスは、『2030年:中心街の終末 (2030: Dead End for the High Street)』というレポートを発表しました。その中で、小売業者や評議会、計画機関が行動を起こさないと、イギリスの店舗はEコマースや宅配会社との競争で2030年までに半数が消えるだろう述べられています。ネットは現在イギリスの小売の売り上げの15.2%を占めていますが、2030年には40%に到達すると予測されています。

 しかし、私がたまたま立ち寄ったサマセットの伝統的な市場の街、イルミンスターはこういった絶望的な予測を否定しています。そこでは小さな店が栄えていて、閉店して板を打ち付けた店はありません。地元の人によると、外の人が街を羨ましがっていて、店はテスコの大型店舗と適切に共存しているそうです。では、その秘訣は何なのでしょうか?

 ペットショップに入ると、鳥の餌や猫のおやつ、うさぎのケージ、魚の餌や犬用バスケットがあるだけでなく、他のものに紛れて、ナットやボルト、ネジ、パズル、おもちゃ、釣り竿、洗礼の贈り物、チョコレート、ケーキ、電池、庭の飾り、クレヨン、ティーバッグ、ゴミ袋やモデルカーも売っています。

 「まるでアラジンの洞窟です」と緑豆を買っていた客は言います。彼女の買う物の中にペットフードはありません。「もしペットフードしか売っていなければ生き残れていないでしょうね。何かを買いに入って別のものを買うんです」と付け加えます。

 「今はたくさんの人がネットで買い物をします。ほら、バンが止まっていますね」と1980年代からBD Garden & Pet Suppliesを経営しているブライアン・ドルーリー (70) は言います。「店を続けるにはこれらのすべてを売らなければいけないのです」と言い、15年前にテスコが街にやってきたときに商品ラインを増やすことに決めたと付け加えました。「ひとつの商品ラインでは生き残れないと思いました。私たちは若い世代を惹きつけたいし、だから彼らを呼び込むなら何でも」。

 しかし客は入る店が何を売っているかわからなければ混乱するのではないでしょうか?

 「いいえ、イルミンスターではみんな慣れています。」

 トランジション・タウンで試みているように、イルミンスターのローカルビジネスはお互いをサポートすることに尽力するのだということが分かりました。

 「地元の獣医は私たちからペットフードを買って支えてくれようとします」とドルーリーは言います。

 イルミンスター書店 (The Ilminster Bookshop) に、もちろん、本を買おうとして立ち寄りました。そしてそこには本がずらりと並んでいる一方で、ブルゴーニュのピノノワール、アルザスのゲヴュルツトラミネールなどのワインボトルやサイダーやビールが側の棚に陳列されています。イリーナ・グエンは「私たちは中にカフェを置くことも考えたのですが、他のコーヒーショップと争いたくなかったんです。それで私たちはワインにしました。地元のワイン商店も閉店したところだったので。義理人情があるので、近くに酪農家のお店があるので私たちはチーズを売り始めることはしたくありませんでした。でも、風の中で立っていられるのは最も根の多い木ですよね」と、夫と一緒に店を経営するドリュー(40)は付け加えます。

 彼らは地元の独立卸業者から仕入れたワインを売り、地元のヘアサロンが夜遅い営業の時にはボトルをあけてくれます。彼らは今プロのワインテイスターとのイベントを企画しています。「クリケットのクラブと協力してガーデンパーティーでのワインテイスティングをする予定で、それにはネット告知も必要です」とグエンは言います。

 次に私は毛糸店に目をつけました。毛糸の束があるだけでなく、グリーティングカードやラッピングペーパー、靴、靴下その他の服やおもちゃ、台所用スポンジも置いています。

 ではこの多様化の戦略は段取りされたものなのでしょうか?イルミンスターの商工会議所長のフィリップ・ワイアットによると、店主たちは同時に多様化し始めたそうです。「特に計画は何も作られていません。おそらく店主たちは客に欲しいものを聞いて、街で売っていないものを売り始めたのでしょう」

 「高まる圧力に直面して、スモールビジネスや自営の小売業者は伸びるために多様化し続ける必要があるのです」とスモールビジネス連盟 (FSB) の全国会長のマイク・チェリーは言います。「資産に依存しているため賃料の上昇に伴うビジネスレート [英国の事業用固定資産税] の上昇の影響を受ける小売業者にとってこれはとても的を得ています。

 チェリーは小さな小売業者は地域経済にとってものすごく重要であると付け加えます。FSBの調査によると、小中規模のビジネスに使われた1ポンドあたり63%が再びその地域で使われるのに対し、チェーンや大規模なビジネスで使われた1ポンドでは40%しか使われません。

 「私は店が多様化したことにとても満足しています」と、世帯数6,000のその街に11年間住んでいるコリン・ガーランド (45) は言います。「欲しいものが手に入るチャンスが増えますからね。毛糸店に行ってグリーティングカードや服を手に入れるのもいいと思います。」

 次にリサイクル・アップサイクルのインテリアショップ、The Green House に入ってみました。ざるで作られたランプのかさやスケートボードで作られた時計の反対側にはグルテンフリーのカフェがあります。

 その店のオーナーの娘、マーサ・ヴィッカリー (21) は、次のように説明します。「人々は入ってきて私たちが売っているものに少し混乱して出て行くか、2時間見て行くかでした。私たちがカフェをしていることの意味は、人々は入ってこれて私たちがしていることを理解してくれるということです。それはお互いを助けて全体としてよりよく働けるということを象徴しています。母と父は店をコミュニティ・ハブにしたいと考えています」と、誰がひいてもいいように置いているピアノを指しながら言います。

 マーガレット・ポーレイン (84) はそのカフェにいます。「テスコは家族向けです。私はオレンジの大きな袋はいらないから、食品を求めて小さなお店にいきます」と言います。「ここの多くの人は、小さい店が続くようにテスコを使わないようにしています。」

 彼女は「ここには最も素晴らしい肉屋があります」と付け加えます。「彼らにどうやって料理するかを聞くこともできます。会話があり、顔を覚えています。交通手段がなくてもここで何でも買えます。賃料が高い分店はできるだけたくさん売る必要がありますからね。」

 私は八百屋に立ち寄ります。今はもう陳列棚にシルバーのジュエリーが置いてあってペポカボチャが置いてなくても驚きません。人参やクレソン、ネクタリン、ブラックベリー、花豆類などの側にリボンや編み物のゾウ、地元で生産された紅茶やコーヒー、リンゴジュースやビスケットが置かれています。「人々は種類の多さを好むし、それによって普段は来ない客も来ます」と9年ビジネスを経営しているマイク・アダムス (44) は言います。

 「フルーツや野菜は当店の主力ですが、あまり多くの利益幅はありません。もし別の商品を扱っていなければまず間違いなく閉店していたでしょうね」と彼は言います。

 それでも、店は売りに出されています。

 「来店数は始めたときから50%まで落ち込んでいます」とマイクはいいます。「そのいくらかは、うちの固定客が亡くなったり引っ越してしまったことと関係があるでしょう。その代わりをまだ見つけられていません。」彼はまた別の意見も伝えてくれました。「人々はここに来て季節ものを買っていましたが、最近ではネットで欲しいときに買うようになりました。でも、この近所の人たちは買うのを増やして与えてくれるのです。」

 彼は魚を売ろうとしたが客が支払いたい金額で供給することは不可能だとわかったと言います。「お客はまとめ買いが必要になり、ただ私たちは十分な客を呼び込めない。それでは利益幅がありません。」

 それにもかかわらず、すぐにでも店舗が取り上げられそうなのはおそらくイルミンスターの再生力を表すのでしょう。

 「もし店が空になったらすぐに取り上げられます」と南サマセット地区カウンセラーのキャロル・グドールは言います。

 ほとんどの市議会議員はテスコが街の他の店の来店数を増やすのに寄与したと思っています。しかしその大型店の開店に反対した州市議会議員のリンダ・ヴィジューはその意見に同意せず、来店数が増えたのは近年新しい家が建っているからだろうと言います。

 テスコは独自の分析をしています。「大型店の駐車場は買い物客が中心街を訪れることに寄与したでしょう。そして我々の存在は街が提供する小売りを上乗せしています」とスポークスマンは教えてくれました。「私たちの店の同僚たちはローカルコミュニティの中でとてもアクティブです。去年は2万ポンドもの慈善寄付金を集めましたから」と彼は付け加えます。

 「人々は今もう少し個性的なものを探しているのです」と The Green House で創作物を売っているアーティストのカーリー・ブラウンは言います。「Nando’s や Topshop ならどの街でも行けますが、イルミンスターではもう少しニッチなものがあります。」

 実際、Local Data Companyと英小売協会によると中心街の自営店は 2017年の前半に急成長を見せました。国のチェーン店が減少した一方で、自営店の新規開店は2016年よりも大幅に増えました。

 「チェーン店は面白みがなく味気ないんです — でも、こちらの店では違うのだという点は、味気なくはないということなんです」とブラウンは結論付けました。

 もしイルミンスターの店がテスコとうまく共存しているのなら、ネットの脅威にも負けず生き残れるでしょうか?ジンクスの予想に基づくと生き残るということかもしれません。もし伝統的な中心街が生き残るならば、私たちはヴィクトリアン様式に戻って主に自営の店を含めてサービスや専門技術を奨励し、買い物の社会体験の中での地位を再び高める必要があります。おそらくイルミンスターのような街はその道を示してくれています。

中心街の変わりつつある顔

 PwC に集められた調査によると、2016年の最初の6か月でイギリスの中心街で2,656の店や小売店が閉店しました。これは1日に15店のペースです。 英小売店協会 によれば、最も減少したのがパブや女性用洋服店、新聞販売業者、電化製品店で、理髪店やカフェ、タバコ店/電子タバコ店や美容院の数は増えています。

 しかし小さいことが今もうまくいく…

自営小売店や店主はイギリスの全小売、レジャー施設の65%を占めています。

イギリスのトランジションネットワークは地元の商品を売る自給自足の街作りを勧めてフードマイレージの無駄をなくそうとしています。2007年には 初期のトランジション・タウンのひとつ、デヴォンのトットネスがローカルビジネスでしか使えないトットネスポンドを始めて、お金が地域経済の中に留まるようにしました。そして各地で同じような枠組みが生み出されました。

ウェールズとイングランドの境界のポーイスにあるヘイ・オン・ワイに新しいスーパーマーケットをつくる計画に反対して成功した圧力団体がありましたが、それは20の本屋を含む街の自営店の多くが閉店に追い込まれることを恐れてのことでした。スーパーマーケットは新しい学校を作ることを約束しましたが、そのグループ、プランB (Plan B) はスーパーマーケットを作らない違う方法で学校を建設する方法を考え出しました。

サマセットのフルームの街では、Pixieと呼ばれるスマホアプリがスタートし、買い物客が自営店でものやサービスに支払ったらポイントがもらえるようになっています。

Diversity Keeps a High Street Alive • Naomi Canton

Small traders defying the advance of online and supermarket shopping in their town

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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