ひと縫いひと縫いで世界を変える

穏やかに抗議するアートというクラフティビズム (craftivism) へのサラ・コルベットの転換

翻訳:坂井 晴香

自然、人々、作品、創造性の中にはたくさんの美しさがあります。しかし、私たちはそれをより美しく、温かく、公平にすることができると私は知っています。私は3歳以来の活動家ですが、数年前に燃え尽きて、どこにも合わないと感じ、諦めようとしていました。そう私は自分のアクティビズムにクラフトを活かせると気付いたのです。私はクラフティビスト (craftivist) になりました。

 効果的なクラフティビストとは、不正義に対する怒りやより良い世界への情熱を創造的な作品や活動に投影して表現する人です。そうした作品は不正義の根本原因に取り組む一役を担い、長期的にポジティブな変化を作り出すのに役立ちます。

 穏やかな抗議というアートを通じてクラフティビストになるのが最も効果的な方法だと私は信じています。それが、一人かグループで、害のある構造に対して効果的に反抗し、人々を同じようにするよう惹きつけ、愛、親切、謙虚さの価値を通じて不正義と害悪に挑み、望む世界への道すじを表す方法です。穏やかな抗議というアプローチは私たちが暮らしたいと望む世界をモデル化する、美しく、温かく、公平な方法で行うアクティビズムの目標に見合っています。

 作品の材料やその活動は社会における潤滑油になり得ます。公共交通機関で、公園で喫茶店であなたが一人で縫っている時、人々があなたに何をしているのか尋ねることが多いでしょう。私の経験では、言葉を使わずに、社会の変革に関わる強い言葉を持つ小さなクラフティビズムの物を縫うことのほうが、見知らぬ人をより一層巻き込

めることが多いのです。その好奇心を利用するために、彼らがあなたを見ていることに気付いたなら、笑いかけて、縫い作業に戻りましょう。

 このテクニックが緊張のない開かれた、親しみやすい会話の基盤となります。もし誰かがあなたに何を作っているのか尋ねたら、おもむろにそれを見せて、メッセージを読みあげて、あなたがこの作品を通じて何をしようとしているのかを話し、最も効果的に見せるのにどこにメッセージを付けたらいいか助言をもらってみてください。最後に、あなたが疑問を持ち、反抗している問題について会話を始める質問をしてみてください。

 あなたと他者の間に敬意あふれる安全なバリアを手工芸が作り出してくれます。というのも、目を見て会話してひどく攻撃的になったり集中しすぎたりするのを避けてくれるからです。

 私のクラフティビズムとしては、垂れ幕、政治的決定を下す人に送るその人に合わせたハンカチ、彫像に付けるフェイスマスクがあります。あなただったら、すでによく認知され個々人の記憶や文化的歴史に結びつく物に換えても良いでしょう。

 私は性差別を訴えるのにバービー人形の見た目を変えました。私はかつてロンドンの南部のクラパムジャンクション駅からウォータールーの事務所へ行くのに通常電車に乗っていました。家に帰る途中、駅の裏口の階段で10代後半の男女がたむろしているそばをよく通り過ぎたものです。彼らは迷惑をかけることはなく、ただ集まっていました。私が注意を払ってみると、少年たちはかなり騒々しく陽気、少女たちは何も言わずにくすくす笑っていることが多かったです。少年は女の子に腕を回していて、それを見て私はこの少年たちは自信を持ち、会話をひっぱり、そして女の子たちはかわいらしく座り、何も話さないようにしなければいけないと感じているのだろうかと考えました。きっと、私は状況を汲み取ることができたのでしょうが、穏やかな反抗というアプローチで、私が見たと考える性差別をぜひ指摘したいのです。

 殴られ、傷つけられてテープを目や口に貼られたバービー人形のイメージを作ろうと私は決めました。このグループと通行人に対して、性差別が私たちすべての人生に及ぼす影響について考え議論するのを促すために、メッセージの書かれた小さなプラカードを彼女に持たせました。私は、そのグループの近く、でも近すぎず、目線より下の位置に置いて、人々の好奇心を惹くようにしました。二人の若者が現れ私に何をしているのか尋ねました。考えることや会話を促すために選んだ手書きメッセージを見せ、読み上げました。「女性たちの状態を見れば国家の状態を知ることができます。」とインド独立後の初代首相であるジャワハルラール・ネルー (1889-1964) の言葉です。

 私は彼らに尋ねました。自信を持ってガールフレンドを「守る人」になるべき、あるいは、ひょっとしたら、彼女のためにあらゆる代償を払うべきだだと感じているかどうかと。または彼らが女の子に囲まれる中、ただありのままでいて、お互いを対等に扱っているのかどうか尋ねました。私たちはおしゃべりしまた。彼らが時々感じている男であることへのプレッシャー、そして、女の子はおそらく彼らにかわいく見せることへのプレッシャーを感じていると彼らが思っていることについて。私は他の人に見えるようにバービー人形をそのままにしておいて良いか彼らに尋ねました。彼らは応えました。「うん、僕らがちゃんと見ておくよ。」その写真は沢山の本や雑誌で出版されただけでなく、ブログやソーシャルメディアにおいて何年も共有され、男女平等の議論を作ってきました。

 クラフティビストになることは、ただ単に縫物好きな人になることではありません。それは不正義へ疑問を投げかけ、平和を促し、関わるすべての人にとってより良い世界を手に入れるための方法を見せるために作品を磨く人のことです。私たちが本当により良い世界を作りたいかどうかは、活動を通じて何をしているかで試されます。

やりきれない気持ち

その淑女が泣いた日を私は決して忘れません。意図されたものではありませんでした。数年前、私は故郷のリバプールにいて、最近よく知られている低価格の衣料品店の市内初の支店がまさに開店するところでした。たくさんの安い服の本当の犠牲(尊厳のない労働慣習、低賃金、埋立地に埋められる「ファストファッション」)を示すべきだと、迷いなく思いました。開店日のデモを立ち上げるために私は友達を集めました。支払い、労働時間や仕立て屋が服作りにおいて受けている扱いについて事実をもとにプラカードを作りました。

 彼女は80歳ほどに見え、とても小さくか弱かった。彼女が買い物の詰まった大きな袋を持って私のところへ歩いてきました。そして動揺した声でプラカードの情報が本当なのかどうかを静かに尋ねました。悲しいことに本当で、やり方を変えるよう企業に対して、同時により倫理的な店での買い物をするように異議を唱えるべきだと私は答えました。

 彼女だけでなく彼女の子供や孫にとってなんとか買うことができる唯一のお店の一つだったと彼女は私にささやきました。彼女の眼は涙で満たされ始めていました。私の眼も涙で満たされ始めていました。私は公の場に私たちのメッセージが出て行くよう集中してきましたが、私たちの抗議についての人々の様々な反応について、また人々がそのようなお店で買い物をする様々な理由について考えたことがありませんでした。

 私たちのデモでポジティブな結果がいくつかもたらされました。用意したビラは全て配りました。地元の新聞やラジオに私たちの抗議が載りました。私たちの嘆願に400以上の署名が集まり、その日の終わりにお店のマネージャーへ手渡しました。私たちのやってきた類のデモは、出来る限り効果的だったと確信しています。ただ私たちは、店の中に入るのに列を作る人や通り過ぎる人に対して、両方の「当事者」が互いに耳を傾け話し合えるような形で、声が届いたとは感じませんでした。そう、あのチェーン店の倫理的でないやり方を知って泣いてしまった淑女のことを考えずにはいられませんでした。

 再び店の外から抗議するとしたら、別の方法でやれたらと思います。そのメッセージとは、より興味をそそるようなもの。いかに私たちみんなが、スローダウンして、何をして何を買うのかを考える時間をとるようにすべきかということに注力するのです。そのような企業が、製造過程により注意深くなれるように、新たな少数の服を作るべきです。そして、私たち消費者は、買い物の過程をゆっくり楽しむべきです。私たちにどんな服が必要で、どんな服が長くもつのか考えながら楽しむ — 一瞬の衝動に負けることなく、大事にする服を買うのです。

 クラフティビストが使うのは、小さくとも、店のそばでよく見える視覚的に興味をかきたてるエリア、そこでかたつむりのように見えるケーキを作る。そして他のクラフティビストが詳しい情報をフライヤーで外に知らせます。ファッション業界の隠れた醜い一面に取り組むのに役立つだけでなく、私たちが服により感謝するために、スローファッションの大切さについて友好的に話をするよう促したいのです。私たちはこの手作りのカタツムリの画像と興味をかきたてるメッセージをシェアしようと思うのです。これは人々が企業の製造過程をより調べるように促し、情報に基づいて消費者が選択する助けとなります。

 あの年配の淑女が涙を流すのではなく、彼女が世の中で見たいと望む変革に加わるのを後押しするのです。

サラ・コルベット (Sarah Corbett) の著書「How to Be a Craftivist: The Art of Gentle Protest」(Unboundより出版) から本稿を再掲。


Changing The World A Stitch At A Time • Sarah Corbett

Craftivism - the art of gentle protest

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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