スウェーデン、ファストファッションから倹約へ

翻訳: 斉藤 孝子

リチャード・オレンジがマルメ【スウェーデン第3の都市】から、交換よりも修理を推奨する資金計画について報告します。

春から秋にかけて月に1度、スウェーデン南部のマルメの公園に数百の出店が立ち並び、親たちは自分の子が大きくなって使えなくなった服やおもちゃ、器材を、わずか5クローネ(50ポンド)で売り払います。毎回、何千人もの新しく親になった人たちが、ガレージセールや子供用品のフリーマーケットに買い物に来ます。5歳になってやっと親から新品を買って貰える子もいます。

スウェーデン人は長い間ロッピー【蚤の市】を愛してきました。しかし最近は、それが社会現象のようにまでなっています。

「僅かこの2、3年の間に何かが起こったのです」と消費削減に着目している社会起業家、ヘンリック・バークマン(Henric Barkman)氏は語ります。「スウェーデンは非常に高い生活水準にあり、物質主義の後に来る、より高度な発展があります。他の多くの国では、中古品を持つことにまだ恥ずかしさがあるのに対し、スウェーデンではほぼ、意識が高いという評価を得るようになりました。」

ファストファッションチェーンのH&Mや、比較的短命のパーティクルボード【木材の小片を接着剤と混合し熱圧成形した木質ボード】の家具メーカー、IKEAの発祥地は、倹約の国に変わろうとしており、スウェーデン政府もこの取り組みに乗り出しています。

今年1月、衣服・靴・自転車から洗濯機・食器洗い機・冷蔵庫・オーブ ンまで何でも、その修理費用を安くする税制改革と付加価値税(VAT)の削減が実施されました。

スウェーデン金融市場及び消費者問題担当大臣のパー・ボラン(Per Bolund)氏は、それら立案について国際的な報道が非常に肯定的であったことにとても驚いた、と語ります。

「非常に大きな関心が寄せられています。世界中の国々が苦労している問題なのです。これは幾分タブー視されている政策分野で、なぜなら、消費全体を削減する政策は、国民から否定的に受け取られがちだからです」と語ります。

スウェーデン政府に6議席を持つ緑の党議員であるボラン氏は、彼自身の消費削減に熱心で、国の持続可能消費政策の発表に向け、自分が着るスーツや靴をレンタル品で済ませた程です。

この変更により、自転車・靴・皮革製品・衣料品および家庭用織物の修繕や保守にかかるVATは25%から12%に引き下がります。また自宅の家電品を修理した場合、その労働コストの50%を所得税から控除することができます。

「それは相当なものです。大幅なコストダウンをもたらし、ものを修理することが、より合理的で経済的な行為になります」とボラン氏は言います。

国内の家電修理サービスであるマルム・カエル・オー・ベーム (Malmö Kyl och Värme) を経営するフレアドリック・ペアソン (Fredrick Persson) 氏は、この改革により、全く新しい業界が生み出されると考えています。

「ブーム、それも大ブームとなるでしょう」と彼は予測します。「今は家電品がとても安く売られているので、補償外(家電の補償期間外)は、それほど修理をしないのですが、このような税制があれば顧客は修理を選択するでしょう。素晴らしいことです。」

ボラン氏は、新たな優遇税制が、修理産業の発展を活気づけ、国のインテグレーション政策【人種・文化的背景に関わらず全ての人に平等の権利・責務・機会を保証する政策】のもと、正式な教育を受けず職に困っている人々、特に、アフガニスタンやシリアからの移民に働き口を提供すると期待しています。

自社、ラ・コンピューティート (re:Compute-IT) で、コンピュータ・テレビ・その他電気製品のリサイクル品を販売しているトーマス・ソーデベーリ (Thomas Söderberg) 氏は、インテグレーション政策のもと、すでに修理人員にシリア難民を雇用しています。

「中東の国々を見ると、私たちより遥かに多くのものを修理します」と彼は言います。「スウェーデンでは、この20年、私たちは『何かが壊れたら新しいものを購入する』と思いながら育ちました。」スウェーデンの技術者が、壊れたテレビには電源基板ごと交換する傾向があるのに対し、シリアの技術者は破損した2つのコンデンサのみを交換し、コストを大幅に削減してます、と付け加えます。

ラ・コンピューティート (Re:Compute-IT) は、エシルストゥーナ (Eskiltuna) 市で中古品やリサイクル品販売店ばかりのショッピングモール、 リドゥナ (ReTuna) にあります。モールは、緑の党員ら主導で1年半前に、新しい市立リサイクル・焼却センターに開設されました。

「私たちはスウェーデン初、また世界初の存在であると思います」とセンターマネージャー、アンナ・バーリストラム (Anna Bergström) 氏は言います。「非常に大きな関心が寄せられています。30以上の市町村から訪問を受けていることから、私たちが初めての、そして唯一の存在と思われます。後に続くものが出て来るでしょう。」

スウェーデンの他の町や都市には、共有と再利用の独自の施策があります。マルメでは、地元の図書館で電動工具を借りられます。フリティスバンケン(Fritidsbanken:「レクリエーション銀行」)は、スポーツやレジャー機器を無料レンタルし、現在スウェーデンの20以上の町や都市に作られています。

スウェーデン企業らも時流に乗っています。H&Mは3年前リサイクルと再販のために顧客の古着収集を始めました。スウェーデンのジーンズ会社ヌディー (Nudie) は、店内で顧客のジーンズ修繕を行いますが、昨年は36,331枚を修繕しました。スウェーデンの洗濯機メーカー、エレクトロラックスは自分の洗濯時に有料で他人の洗濯もします、という人々を結ぶ携帯電話アプリ「ウーバー・フォー・ランドリー」を検討中です。

H&Mは、不要品をより簡単にオンライン再販できるようにするスウェーデン初の会社、セルピー (Sellpy) の最大の投資者でもあります。同社では、不要な衣類や電子機器などを入れるバッグを顧客に送り、回収し、その中身を分別し、オンラインショップで販売し、顧客に利益の40%を還元します。バークマン (Barkman) 氏は、スウィンガ・バサール (Swinga Bazaar) というアプリを開発中です。これは、イギリスのサイト、ストリートバンク (Streetbank) やオランダのピアビー (Peerby) と同様、お隣さん同士の貸し借りを簡単にするアプリです。

これは抵抗が全くないと言っているわけではありません。「中道保守の野党側はこの方針に否定的でした。少なくとも2、3の野党がこの予算計上に反対しています」とボラン氏は指摘します。

エレクトロラックスのサステナビリティ担当副社長ヘンリキ・ソンズトラム (Henrik Sundstrom) 氏は、新しい家電製品のエネルギー効率の向上は、買換えの方が良いということだ、と反論します。「15年前の製品を持ってる場合、おそらく新しいものを買う方が環境に良いでしょう。 材料資源は重要ですが、使用時エネルギーは実際遥かに大きな影響を与えています。」

しかし、これは始まりに過ぎないとボラン氏は確信しています。

「スウェーデンでは現在、価値観の転換が進行中だと思います。材料消費を減らすには、ものをもっと長く保たせる必要がある、という情報が増えています」と彼は言います。

過去20年間にスウェーデン都市部に新たに建てらたショッピングモールは変わらなければならないと、バーリストラム氏は考えています。

「私は、これがビジネスの将来の在り方だと思います。現在目にする全てのショッピングセンターは、私たちのようなものに成らざるを得ないでしょう。私たちの住むこの世界を保持するつもりなら、今日のような形で消費し続けることはできないのですから。」と彼女は言います。

リチャード・オレンジは、スウェーデンからリポートするフリー・ジャーナリストです。

Sweden Begins The Shift From Fast to Thrift • Richard Orange

A project to repair, rather than replace, old goods is reducing consumerism


リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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