芳香の港の 芳しき再生

 サティシュクマールは消費者主義の喧騒の香港で新鮮な緑の芽を見出す。

「なぜ香港に行きたいのですか?」と友人に尋ねられました。私の計画を知ったからです。「そこは消費主義と物質主義の中心都市ですよね?」

 もちろんそうです。しかし、高層ビル、長い橋、明るく照らされたトンネル、大手銀行、大企業のほかに、シンプルさ、持続可能性、スピリチュアリティに向けた新たな動きを表す人々やプロジェクトがあります。香港の大量消費者文化では、この環境保全の考え方は矛盾しているように見えるかもしれません。しかし、多国籍企業の本拠地である香港島は、数多くの島や中国本土地域の九龍および新界を含む領土のほんの一部です。香港の行政区域のわずか25%しか建設されていないと聞かされました。そこに730万人もの人々が住み、残りの土地は丘、森林、草原、畑、農場で構成されています。この土地には特別な保全、ケア、耕作、建築業界の途切れる事のない、いわゆる開発者の欲望からの保護が必要です。

 彼ら「開発者たち」が自然のままの牧草地や畑の素朴な景色を見るたびに、開発が望まれている未開発地域とみなしています。香港の友人たちは、いわゆる未開発の土地の擁護者です。彼らは、銀行、企業、建設業者の経済の他に、銀行の経済とは別のもう一つの経済 ー 自然の経済 ー があることを示す素晴らしい例を挙げています。実際、開発者は経済ではなく、「金儲け」を行っています。彼らは自然や畑や森林を、資源として、お金を稼ぐ商品として、見ているのに対し、環境保護主義者は、自然が利益のための「資源」ではないことを常に思っている一方で、 むしろ、自然は全ての命の源と認識しています。

 私はこれらの生態学者、環境学者、自然保護者を支援するために香港に行きます。驚いたことに、香港の行政区域の40%がカントリーパークと自然保護区に指定されています。 ビルを建てるマニアが、第二次世界大戦後に原生の熱帯雨林の多くをなくしたにもかかわらず、第二次熱帯雨林がまだあり、保護と保全を必要としています。この保全ムーブメントの支持団体のひとつが、私の友人アンドリュー・マコーリー ( Andrew MacAulay) が率いる嘉道理農場曁植物園 (Kadoorie Farm and Botanic Garden) です。200人のチームスタッフが、シンプル、持続可能性、スピリチュアリティという理念を守るために勤勉さと献身をもって取り組んでいます。 彼らは350エーカーのパーマカルチャーと森林生態を管理し、地元の学校や国内外の来訪者向けの教育プログラムを運営しています。

 アンドリューは、「持続可能性はスピリチュアリティがなければ完全ではありません」と言います。「私たちは恐れからだけでなく愛からも環境保護主義者です。 私たちは自然を愛し、また動物、植物、鳥類、昆虫 ー そう、全ての命を愛しています。私たちが何をしているのか、皆さんがカードリーファームに来て、自然を知り、美しく、寛大で、豊かな人生を体験するために、私達が何をしているのかを見て欲しいです。皆さんは自然の生活が魅惑的で活気に満ちていることを、見て、嗅いで、味わい、触れると、不思議で魔法のような不可欠なものに出会うのです。」

 アンドリューは保護主義者にとどまらず、詩人であり哲学者でもあります。もはや積極的に家業には関わらず、その代わりに地球という惑星、そこに住む人々のために暮らしを開発をしてきました。(彼はまたリサージェンスの長年の支持者です。)嘉道理農場(Kadoorie Farm: 貧しい農民の自助のために60年前に設立)の生物多様性、環境意識、食糧生産の促進、保護、強化を通じ、香港のような場所でも良い手本となれることを示してきました。

 この農場は農業生態学、パーマカルチャー、自然農業、有機農業の輝かしい例となり、動植物の保全の不可欠な部分として食料生産がなされています。

 「私たちは皆食べ物を必要とします。食糧をなくしては生き残ることはできません。しかし、食糧生産者や農家は見下げられています。 彼らはほとんど敬意を払われません。 嘉道理農場の仕事は農家に尊厳を取り戻すことです」とアンドリューは話しました。

 彼は正しいです。 銀行や企業で働く人の多くは莫大な給与を受けていますが、土地で働く人々の大半は生計を立てる程の収入なら恵まれています。 なぜでしょう? なぜ栄養があり、美味しくて健康的な食べ物を生産するよりも、スクリーンの前でコンピューター相手に働いている人達が重要だと思われているのでしょう。 現代世界の価値観と優先事項は、「捻じ曲がって」いて、地球という惑星に住む生命がこのような悲惨な状態にあるのも無理がない程です。

 だから、嘉道理農場は単なる農場ではなく、教育の中心となっています。 それが、私を招聘している理由です。 私は、「私たちのルーツとの再接続:スピリット、文化、自然」というテーマで、一般講演と3日間のコースを30人へ行いました。このコースは、大埔(タイポー)の旧警察署に新たに開設された教育機関である綠匯學苑(グリーンハブ)で行われました。嘉道理農場は、香港政府と協力して、このグレード1の建物(1899年設立)をエコリノベーションしました。持続可能な生活のビジョンを示すためであり、香港の人々が環境を尊重し保護しながらもうまく暮らして行けることを実証するためでもあります。

 グリーンハブは、丘の上に位置し古代の森に囲まれた平和と静けさのオアシスです。 香港各地の人々が、非常に想像力を働かせて心地よく復元された古い建物を見に訪れ、Eat Well Canteen という食堂の中で健康的でオーガニックで地元産の美味しい食べ物を楽しんでいます。 これは、その指針です。

 肉を避ける

 季節にあった地域のものを食べる

 料理を学ぶ

 簡単な料理をする

 廃棄物を最小化する

 リサージェンス & エコロジストの読者には、これらの原則は普通のことでよく知られているのでしょうが、香港では、革命的な概念を表しています。

 幸運なことに、この食堂だけが使命なのではありません。 香港島の中心で私はMANA! レストランの創業者、ボブシーガイアに会いました。彼は、ビジネスを実行し、同時に環境にやさしくすることは簡単な仕事ではないと認めていました。 しかし、ボブシーは断固として、彼のビジョンの成功を決意しています。

 「香港の人々は忙しいです。 私は彼らに「ファストスローフード」を提供したいと思います。新鮮な食材で廃棄物ゼロの品質の高い食べ物を手に入れられることを証明したいと思います。」と彼は言います。「今では、すべての残飯を月に2トン堆肥にしています。 これらの残飯は有機農場に送られ、そこで土壌のための食料となります。 食品廃棄物は自然に対する犯罪です! 私たちのモットーは「ちゃんと考えて食べよう(Eat Like It Matters)」です。

 ボブシーの言葉を聞いて、私は近代英国の皮肉を思い起こしました。空腹の人々がフードバンクで食べ物に列をなしている一方で、食べ物の推定40%は家庭、レストラン、スーパーマーケットから捨てられています。 いわゆる先進国は、食べ物に関してひどく非効率です!

 アンドリュー、彼の姉妹のデボラと私は素晴らしい食事とインスピレーションの時間を MANA! で過ごしました。そして、私はレストランでの恵みに非常に感銘を受けました。

 「この食料を私たちに与える地球、

成熟させ美味しくする太陽。

親愛なる地球、親愛なる太陽、あなた方のおかげで私たちは生きています。

あなた方へ真心を込めた感謝をお返しします。

この有難い祝福された食事に感謝します。」

 「香港という言葉は「香り高い港」を意味します。 かつて人々がサンダルウッドのように香りのある木材を輸出していた頃は、香港の港から甘い香りが放たれていました。 こうして香港という名前になりました。この香りの木々はもう輸出されていませんが、私たちの食べ物の香り — 動植物の甘い香り — がまだここに存在し、それらを保護することが必要です」とボブシーは言いました。


サティシュ・クマールは『土と心と社会』の著者。

翻訳: フリッツ 郁美


A Scent of Renewal For the Fragrant HarbourSatish Kumar

Fresh shoots are emerging amidst the consumerist bustle of Hong Kong

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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