沓名 輝政

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ポール・ブラウン (Paul Brown) が敬意を表したグリーンピースの船とその使命をめぐる躍動(言葉を選ぶと)する活動記録。「Rainbow Warriors: Legendary Stories from Greenpeace(虹の戦士たち:グリーンピースの伝説的物語)」マイテ・モンポ (Maite Mompó) 著ニューインターナショナリスト。2014年。 ISBN: 9781780261720グリーンピースには、強い精神的な要素があります。設立に関わったネイティブ・アメリカンとクエーカー教徒双方からの影響で、グリーンピースの船の乗組員たちに受け継がれています。乗組員たちは、自然環境を守り、反捕鯨運動に見られるように生きものを守るという理想に身を捧げ、原子力にも強力に反対しています。 グリーンピースの旗艦の名は、クリー族【ネイティブ・アメリカンの一部族】の伝説「虹の戦士たち」に由来します。この伝説は、戦争とこの地球の破壊に終わりをもたらす、高い霊性を持つ人たちのグループについての伝説です。グリーンピースの「戦士たち」の抗議スタイルは、クエーカー教徒が核実験反対の証人となったことが源です。クエーカー教徒たちは、大気圏実験を防ぐため侵入禁止海域まで航海し、自ら危険な場所に身を置いたのです。 この本は、グリーンピースの船自体、より正確に言えば初代「虹の戦士号」とその名を継いだ船合わせて3隻の旗艦と、7つの海を航海し、傷つくことや逮捕される危険に身を晒しながら理想の実現を目指した乗組員たちに賞賛を送るものです。 私もかつてはこの船や他のグリーンピースの船に乗り、この本に出てくる多くの人たちと航海を共にしました。乗組員たちの献身、操船技術たるや類まれなもので、この本はそのことを讃えるものとして申し分ありません。。。しかし、これで全てではないのです。 どんな組織の中でもあるように、いつも事が計画通りに進むわけではありません。特に、知能的で時に威圧的な相手(フランス軍のような)に対する時は。 この本の中には、いくつかの判断ミスについてのごまかしや、成功や運動の勝利を強調しているところがあります。また、強い個性を持った多くの人たちが活動に貢献する中で、乗組員と、陸上で活動方針を決める事務方のメンバーとの間で意見の食い違いも生まれます。大抵これは理想実現の創造のために生まれる緊張状態ですが、その大部分はここには書かれていません。 ある意味、この本は、イメージに敏感なとある組織のありのままの活動記録というよりは、むしろグリーンピースの公式活動記録のようなものと言えるでしょう。 初代「虹の戦士号」は、底引き網漁船を改造して帆を取り付けたもので、1985年にオークランドでフランスの秘密情報機関に爆破され写真家が一人亡くなった事故の前に私も乗船したことがあります。この出来事までは、グリーンピースの歴史は「ダビデとゴリアテ」の物語【弱小な者が強大な者を倒す喩えとして使われる旧約聖書の物語】をたどるものでした。しかし、この国家的テロリズム行為によって、世界中から同情と寄付が集まり、グリーンピースはほぼ一夜にして飛躍的に拡大を遂げたのです。以来今日まで成長を続けています。 この本は、組織の急成長により引き起こされたストレス、もしくは急成長に伴う船の高度化や費用、そもそも船の高度化や費用をかけることへの道徳的な是非については触れていません。また、どの運動なら収益があるか、収益の見込めない運動のいくつかをとりやめるべきかというような経営上の決定についても触れられていません。 しかしながら、公平な視点から言えば、著者がグリーンピースの世界に足を踏み入れたのは、初代「虹の戦士号」が沈められ、その名を継いだ2代目の船が活動を再開してからずっと後のことです。著者がグリーンピースの活動に参加した時は、すでにグリーンピースの伝説が築かれた後でした。先人たちや今も後に続く者たちが持つ理想家としての魂、この魂が著者の中にもあることに疑いはありません。本質的に、この物語は善良な人々の物語であり、グリーンピースにはそうした人たちが大勢関わり続けているのです。 この本には、地図、図表や写真がふんだんに使われており、グリーンピースの活動の様子や、多くの国々の人たちが参加している様子が分かります。地図や写真などが数多く用いられていることは何ら驚くべきことではありません。活動の様子を社会に知らしめるために写真家やジャーナリストを同船させることは、グリーンピースのメッセージを世に送るために不可欠なことなのです。このような周知活動は大変上手く行われています。 最後に、これは世界をより良く変えようとしている組織と、「虹の戦士」の化身となった3つの船の乗組員たちに捧げられた本です。乗組員たちはこの本の中でまさに勇猛な名戦士として扱われています。もしかしたら、この本の一番の読みごたえは、グリーンピースの運動それぞれを詳細に記した背景事情と、なぜグリーンピースがそうした運動を担うことを決めたのかという部分かもしれません。その理由は簡潔で力強く、読者自身があたかもグリーンピースの活動家になったかのように、読者をグリーンピースの活動の世界へ引き込みます。というのも、環境をめぐる彼らの主張のほとんどに反論の余地はないからです。この本を読み、私が思いをより強くしたこと。それは、もしグリーンピースがなかったら、この地球の豊かさはもっと失われていただろうということです。ポール・ブラウンは、環境ニュースネットワーク (Climate News Network) の共同編集者であり、ガーディアンの元環境部記者。反捕鯨運動や反核デモのためにグリーンピースに同行し、南極海に航海した経験を持つ。翻訳:浅野 綾子Sailing To Save The Planet • Paul BrownReview of Rainbow Warriors: Legendary Stories from Greenpeace Ships

僕の掴んだアルゴリズム

マット・ハーヴェイ (Matt Harvey) の理解では現代の資金調達方法は妙に不安にさせる。インターネット誕生から、孤独の本質というものが変わりました。スマートフォンは、僕らのポケットにインターネットを突っ込んでいるようなもの。かつて僕は、飼い犬のテスとビーチを歩きながら、素晴らしい isolation(孤独)、それだけを味わったものです。それが今では、素晴らしきiSolationを楽しみ、iPhoneのiTunesから両耳へと音が注がれ、電子犬iPupと興奮状態の海で、 電子の波iPaddleに戯れるのです。ピー!というアラート音で中断を余儀なくされるまでですが。 これは歓迎すべきアラート音だと付け加えるべきですね。これもインターネッツ的事象のひとつで、僕たちのKickstarterキャンペーンの進行状況を知らせる音なのです。クロエ(プロデューサー)とトーマス(コンポーザー)と僕は、Kickstarter.comというサイトを使って、エコミュージカルシアタープロジェクトのクラウドファンディングを募りました。これはそう簡単なことではありません。    初公演の開催地が、最初のトランジションタウン、トットネス(僕の住む街)だからでしょうか、プロジェクトの仮題『ミュージカル:トランジションタウン (Transition Town: The Musical)』は、こんな混乱と共に受け入れられました。「トットネスに関するミュージカルだって?」「いや、トランジションに関するものなんだ。初回公演がトットネスで行われるんだ」「ああ、じゃあトットネスが舞台ってことだな」「いや、舞台は想像上の街なんだ」「へえ」そしてここで懐疑的に、「『ミュージカル:トランジションタウン』ねぇ?」「そうさ」「本気?」「そう、本気」「プロデュースは誰がするわけ?」「えーと、色んな人が…」「色んな人ぉ?」…僕らの街では「本気?」位の捉えられ方だけど…ええと、他所の地域だと「本気ぃ?!?」くらいの反応なのです。 懐疑的になるのは無理もありません。差し迫った必要性が背景としてある中、トランジションタウン・ムーブメントの持つ幅広さと大望を一体どうやって伝えるのか、しかもミュージカルで?誤って伝えてしまうのではないか?僕たちは、どうするべきか分かってはいないということをここで告白します。一方、僕たち全員の人生をよりシンプルにするために、代替案のタイトルを使うことにしました。『スイムバイ:私の裏庭の素晴らしきもの (SWIMBY: Something Wonderful In My Back Yard) 』。この方が明確、だろうか…? 僕の頭の中には、ベン図があります。大規模な人数で構成されるグループがいて、このグループは気候変動や石油資源への依存を懸念し、通常、実用的なステップに関心があり、頭を悩ませる人々は反応として選択できます。それ故『トランジションタウン』です。また、大規模なグループで、ミュージカルシアターに対して無条件の愛を持ったグループがあり、『Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド・ウェバー)』を生み出しました。僕たちのプロジェクトでは、このふたつのグループが重なり合う部分というのを見つけることができるのか、はたまたそれは存在しないのかを見出します。双方のグループに属する会員同士は互いを排除し合うのか、そしていずれかのグループは、大規模ではないけれど十分に大きな第3グループ(スイムバイを支持する人々)を取り込むことが可能なのでしょうか? 人というのは予測不可能なもの。そうですよね?僕が見つけたこのサイトの奇妙な点というのは、予測機能が付いているということです。最初の寄付が入ると、アラート音と機械のブーンという音ともに、見込みの達成数値を示します。そして、それより尚、奇妙なのは最終日に近づくにつれ、更に確実な早期予測が示されるという点です。 これがあなたのクラウド、群れなのです。僕たちはそれぞれ個々人が、自己決定を下せる自立した分子になるべきだと感じています。これを波のようなひとまとまりとして捉えると、異様なことに僕たちの存在は予測可能です。動揺してしまうくらい、そうなのです。僕など動揺しすぎて、犬ロボ並の下手くそな詩まで書いてしまったほどで、もしかしたらミュージカルでも、取り入れてしまうかもしれません。群衆官制からトム少佐へ群れに交わる際にはご注意を分子が波となる時には僕らの行いはやつらに読まれてしまうんだなぜならどこに行こうとも、僕らが人であることに変わりはないアラスカからイースト・ロージアンメッカからWestward Ho!まで僕らは皆かなりパブロフ的だからコントロールされ、言いなりだ僕らはそれぞれがとても独立しているように見えるけどそして奔放に生きているけれど計画などせず行動するけれど群れ、一群、大群の一部となるとすぐに 僕らは従属してしまうその時々のお題に合わせるようにややこしいアルゴリズム的方程式で、僕らは予測されるそして僕らは影響され、つまみ上げられ、説き伏せられてしまう誘導され、操縦され、徴発される抑制され、細分され、、、丸め込まれ、整頓されてしまうそして僕らは封じ込められる家畜のごとくそれでも僕は喜んでこれをお伝えしよう僕らの主張が称賛または痛罵されようとも無視されない群れもあるだろうまた、聞き入れられるまで、押し寄せる大群もあるだろう今や僕の中からエンドルフィンが溢れてくるようです。僕らの群れは、大群となりました。この一群は勢い込んで押し寄せてきた訳ではありませんが、物腰やわらかに目標に向かって歩を進め、ちょうどアルゴリズム的預言者のお告げのようになったのです。勿論、この歌が素晴らしいものになるかどうかは、予想が付きません。しかし、ここは先立って決められたことに対して、決意が打ち勝てる場所なのです。アルゴリズムの奏でる音楽で踊れないなら、それを素晴らしいものに変えようと決意するだけなのです。マット・ハーヴェイ(Matt Harvey)は『The Element in the Room』の著者。翻訳:齋藤 未由来I Got Algorithm • Matt HarveyCrowdfunding for the Transition Towns musical brings insights into human behaviour

急進的なリサージェンス

昨日、今日、明日、、、まっさらな考えにようこそ。今号では、来年の50周年の祝賀に向けてカウントダウンを始めます。1966年5月のことでしたが、リサージェンスの初版が世に出ました。執筆者たちの主な懸念は、冷戦、それに伴う不安材料は、原子力による滅亡、べトナム戦争その他の紛争でした。しかし、創立編集者のジョン・パプワース (John Papworth) が趣意書に記しているように、リサージェンスはただ単に「もう1つの平和雑誌」ではなく、新世代の多様な懸念をより多く届ける試みでした。 ほぼ半世紀が過ぎ、リサージェンスの初期の号を読返すと心を奪われます。所々イラストが付いたページには、しっかりと響く意見、ルポ、発案があり、文章スタイルの多くは、今日では生真面目過ぎるようなものでした。しかし私が感銘を受けたのは、的を得た内容がいかに多かったかということ。それは今日の懸念の中心となっている問題や着想です。環境への脅威、とても強力な国家や企業に直面する個人や小さなコミュニティーの権利、社会正義の問題点、宇宙における私たちの場所のホリスティックでよりスピリチャルな理解の必要性。そして、初期のリサージェンスは、文学その他の芸術、世界の美を余すところなく見る方法に関するものでした。 こういう理由もあって、今後何ヶ月かの間に、初期の号から記事をいくつか再発行します。素晴らしい執筆者や思想家の何人かを賞賛するのです。彼らはリサージェンスに(3年前に統合後は、リサージェンス&エコロジストに)貢献してきました。レオポルド・コアー (Leopold Kohr) の「新急進主義」という記事から始めます。しかし、単に保管品の埃を払って出すというものではなく、リサージェンスのたゆまぬ精神を思い起こさせるものです。今号の中で、その精神が生きていて活発です。 本当に急進的なグリーン政治家のキャロライン・ルーカス (Caroline Lucas) がリスト化したのは、企業の影響により民主主義が壊された手法。急進的な環境活動家のヴァンダナ・シヴァ (Vandana Shiva) は、 大自然のために起こす運動から健康と富の新たなパラダイムへ向けて動く方法を示しています。チャールズ・アイゼンスタイン (Charles Eisenstein) は、ある若い女性が暮らしの中で急進的に選ぶ物語を語っています。基本理念のエッセイでステファン・ハロッド・バナー (Stephen Harrod Buhner) は、尚いっそう急進的で、文明化自体のまさに概念そのものに異議を唱えています。それから、自身のコラムで、編集長のサティシュ・クマール(Satish Kumar:ステファンが語るのを聞いて以来、彼の文章を特集するのを熱望してきた人で)は、急進的な愛について書いています。 どのページにも、この急進性は芸術ページにも見られます。ロマンチックで急進的なサミュエル・テイラー・コルリッジ(Samuel Taylor Coleridge:エコポエムの新シリーズの最初の話題)から、いかに私たちは大自然を見つめて、いかに見つめられているのかという映像作家サラ・ウッズ (Sarah Wood) の調査まで。それから、論評ページ(今月紹介するのは、新しくて刺激的な本で、いかに大自然と関わるか吟味しているもの)自体が、急進的な思考の新しい世界をたくさん開いています。 ですから、お祝いする事が相当あります。過去の号を振り返るにしても、未来を見据えるにしても、あらゆる挑戦と可能性があります。読者の皆さんも一緒に旅を愉しんでいただけたらと思います。グレッグ・ニール (Greg Neale) 編集者A Radical Resurgence • Greg NealeYesterday, today and tomorrow - welcome to fresh thinking

親密な関係の構築:自分たちの街を我が家のようにする

キム・サムエル (Kim Samuel) は、都市計画は社会的孤立をなくすことに重点を置かなければならないと主張。これまでの世代の建築家は「建築によって世界を説明する方法」を考えましたが、今こそ「建築によって世界を変える方法」を考える時だと思います。私たち建築家はそうした役割を引き受け、人々の生き方や行動の仕方に真の変化をもたらすことができます。– ジャンカルロ・マサンティ (Giancarlo Mazzanti) 大都市の人口急増が目の前に迫っています。国連によると、2050年までに地球の人口の3分の2が都市に住むと予想されています。この都市への人口移動は人口増加と相まって革新的な影響を与えるでしょう。この先35年の間に、世界の都市人口はさらに25億人増加すると予測されています。 都市住人の増加は人類発展の弾みになるかもしれません。都市は基本サービスへのより良好なアクセスや、より多くの雇用機会を提供することができます。都市は効率と改革を促進することができ、多くの場合、知的・文化的な豊かさの中心となります。加えて、人口が集中して生活すると、環境的に格段に持続可能になる傾向があります。例えばシンガポール(540万の人口を抱える都市国家)は、都市インフラによる公衆衛生や下水処理などの課題への貢献を反映し、2014年環境パフォーマンス指数 (EPI) で上位5カ国に入りました。 とはいえ、細心の注意を払わなければ、現代的な大都市は健全なコミュニティの代名詞にはならないでしょう。十分な研究により、スプロール現象(都心部から郊外へ無秩序・無計画に開発が拡散していく現象)や車への依存の増加が、いかに運動の機会を減らし、そしてそれがいかに人々の健康に影響を与えるかが示されてきました。1つだけ例をあげるとすれば、ユタ大学が実施した研究で、徒歩で容易に歩き回れるコミュニティに住む人々は、そうでないコミュニティに住む人々と比較して6~10ポンド(約2.7~4.5kg)体重が少ないことが示されました。 さらに、考えなければならない別の種類の重荷があります。それは全ての人に負担を与える可能性のある重荷です。それは人々の幸福感を押しつぶす重荷であり、将来への希望を制限するものです。これが耐え難い社会的孤立の重荷(社会的なつながり、顔の見える人間関係、親密な関係の実感の欠如)です。  たとえ人々が何千人、何百万人もの他者に囲まれていたとしても、都市生活はひどく孤立して孤独に感じられます。なぜでしょうか?1つには、あまりに多くの近代都市が公園や公共広場、人々が自然に集まる公共のスペースを犠牲にして、車を中心に設計されてきたためです。プリンス・ファンデーション・オン・ビルディング・コミュニティ (Prince’s Foundation on Building Community) の顧問ドミニク・リチャーズ (Dominic Richards) はこう説明します。「どこへ行くにも車に頼っていると、通りで人にばったり出くわし、ご近所さんとつながり、自分と異なる種類の人々と付き合う素晴らしい瞬間を失うことになります。」 こうした「素晴らしい瞬間」が欠如している時、人々が疎外感や孤独を感じる時、個人や家族、コミュニティに大きな損失を与えることがあります。 西部カナダのバンクーバーの市民が最も関心のあるコミュニティの課題が何であるかをよりよく理解するために、バンクーバー基金 (Vancouver Foundation) が2012年に実施した調査には、くぎ付けになりました。同基金が驚いたことに、最も顕著な課題は「孤 独感と孤立感の増大」でした。。。ますます個人主義的になる生き方がコミュニティへの配慮と参加を揺るがしているという感覚です。 回答した4人に1人が、自分が望んでいたよりも孤独であるとしました。 痛ましいことに、調査によると、この孤独感と「不健康、信頼性の低さ、他のコミュニティメンバーへの態度の硬化」の間には相互関係が認められました。 こうした新しい現実はバンクーバーに限ったものではなく、このような課題は、1人暮らしの人々が増えつつあり、多くの工業化社会が高齢化しているといった人口統計学的傾向によって悪化するだけでしょう。 例えば、およそ770万人が1人暮らしをしている英国では、リレイト(Relate) という組織の最近の調査で、英国人の10人に1人が親しい友人が1人もいないことが分かりました。米国では、全米退職者協会 (AARP) の2010年の調査で、45歳以上のアメリカ人の35%が孤独であり、バンクーバーでもそうであったように、孤独感と不健康の間には相関関係がありました。 もし都市が私たちの未来であるなら、英国の建築家、ラルフ・アースキン (Ralph Erskine) の言葉を思い出し、今こそ都市の未来について考える重要な時です。「建築の仕事は人間関係を改善することです。建築物は人間関係を悪化させるのではなく和らげるものでなければなりません。」 私たちの目標は、ドミニク・リチャーズの言う、人と人とが交流する「素晴らしい瞬間」を可能にする都市の場所、空間、システムによって、親密な関係を構築することでなければなりません。つまり、例えば歩いて行ける距離にあるご近所さん、自転車専用道路、バスなど、自家用車に代わる利用しやすくて安全なものについて考えることです。コロンビアの首都ボゴタの前市長、エンリケ・ペニャロサ (Enrique Peñalosa) はかつてこう言いました。「発展した都市とは貧しい人が車で走り回るところではなく、お金持ちが公共交通機関を利用するところです。」そこで、エンリケは在任期間中 (1998–2001) に、ボゴタ初の高速輸送システム、トランスミレニオ (TransMilenio ) バスを構築しました。 親密な関係を構築するということは、買い物をし、働き、学び、リラックスする機会を一体化した多目的環境を伴う、人々の生活の様々な局面に合わせて都市を設計することを意味します。そこでは、ご近所さんに歩いて行くことができ、異なる年齢、異なる収入の人々が混ざり合い、また、そこには歩道から公園、ファーマーズマーケットまで自然なつながりがあります。 親密な関係の構築は住宅の数と並行して住宅の質を優先することも意味します。例えば、手頃な価格の住宅が希少なロンドンでは 、開発業者とコミュニティ組織が一緒に取り組み、賞を獲得したハイバリーガーデン (Highbury Gardens) 団地をロンドンのイズリントン区に創りました。1ベッドルームから3ベッドルームの住宅が119戸あり、そのうちの42%は手頃な価格の住宅です。ハイバリーガーデンは伝統的な建築と現代的な居住空間を兼ね備え、住民がリラックスしたり考え事をしたり、遊んだりできる美しい共有の庭もあります。これは、低所得の家庭をコンクリートの高層建築物へ追いやった過去の手頃な価格の住宅戦略とは大違いです。また、ハイバリーガーデンは公共住宅の住人が適度に混ざり合い、キーワーカー(地域に必要不可欠な公共サービスの従事者)の共同出資購買者も全額出資する一般の購買者もみんなが一緒に1つの住宅団地に住むことを促進します。これは、コミュニティをさらにばらばらにして孤立させる所得層別の通常のゲットー化(貧民街が形成されること)とは対照的です。 親密な関係の構築のもう1つの重要な側面は、現地の人々の知識を尊重し、彼らが何に最も価値を置くかに耳を傾けることです。人々は、自分たちとコミュニティ(「自分の住む場所」を特別なところと感じさせてくれる景観、街の暮らし、そして環境)とをつなぐ場という感覚を望んでいます。 伝統文化の経験から現代社会が学べることはたくさんあります。例えば、私の母国カナダでは、北米先住民族の建築は、お互いを、そして自然環境を尊重し、またそれらに配慮する彼らの価値観と調和していました。友人のショーン・アトレオ (Shawn A-in-chut Atleo) 族長は、彼らの中心となる行動規範であるヌーチャーヌルス (Nuu-chah-nulth) はトサウォーク (tsawalk) だと説明。シンプルに「私たちは1つ。皆つながっている」という意味。これは、全生命体の間にある相互依存関係に基づく世界観を表しています。アトレオ族長は、子どもの頃、村のおばあさんが歌うのを聞いたことを思い出します。大地にささげる特別な歌で、あらゆる人間の活動と自然現象の間のつながりを際立たせます。彼は言いました。その古いヌーチャーヌルス曰く「岩でさえ生きている。」 ヌーチャーヌルスの住宅は全てこうした文化的な行動規範と精神性を尊重し、また、気候と地元の環境に合うようにデザインされました。建築する者は必要な材料だけを使用しました。現代の環境用語で言えば、彼らはわずかしかフットプリントを残しませんでした。けれども、こうした大地との調和や大地を任された者としての価値観は、環境の持続可能性以上のものでした。彼らは相互依存や人間と生きとし生けるもの全てが1つであることの感覚について語りました。 最も重要な建造物の1つは、木造のロングハウスでした。複数の家族が一緒に住み、1つ屋根の下に数世代が住み、杉の丸太造りのこうした細長い住居が集まり村を形成していました。その構造は、互助と学び合いという文化規範を反映し、強化するものでした。先住民族の人々にとって、存在することと親密な関係を持つことは、同じコインの裏表でした。 古くからの知識には現代の課題に対応する上で役割があると思います。都心にロングハウスを建設すべきだと言うのではありません。都市をデザインする時に、心の中にロングハウスの考え方を持つべきだということです。私たちが構築しているのは実はコミュニティであり、そこは個人や家族が成長でき、人々がお互いや自然環境と、、、そして聖なる命の循環全てとのつながりを感じる場所だという考えです。 都市建築によって人々が互いに関わり合い、学び合い、支え合えるようにしようではありませんか。 これが親密な関係を構築し、胸を張って「ふるさと」と呼べる都市を構築する方法です。見えない苦痛人間は社会的な生き物です。生まれた瞬間から、他者への接触と他者からの関心を切望します。生き延びるためにそれらが必要なのです。そして人間のつながりがなかったり、失われたりすると、物理的にも感情的、精神的にも苦しみます。社会的孤立は、うつ病から心臓病、早死にといった苦しみと関連があります。 社会的孤立の苦しみはほとんどの場合目に見えないと相場が決まっていますが、それは、私たちの周りの至るところにあります。社会の本流から除外されることがあまりにも多い身体障害者や知的障害者。高齢者(英国では全高齢者のほぼ半数が友達の基本形態はテレビとペットだと言います)。経済的に恵まれない人々や不安定な世界の厳しい風によって解雇された人々。そして、コミュニティや世襲的階級制度のせいで全ての関心から締めだされ取り残された人々などです。 親密な関係の構造を修復して取り戻し、個人と社会全体にレジリエンス(立ち直る力)を構築するために私たちができることはたくさんあります。これは私たち全員の問題です。親密な関係の結び付きは両方向に伸びているものだからです。誰かに手を伸ばす時、自分もまた相手から触れられるのです。キム・サミュエルは McGill University’s Institute for Studies in International Development の実務教授と Oxford Poverty and Human Development Initiative の政策顧問を務め、社会的孤立や多次元貧困に重点的に取り組んでいます。 またリサージェンス・トラストの理事会メンバーでもあります。翻訳:佐藤 靖子Building For Belonging • Kim SamuelCity planning must focus on ending social isolation

新しい年の新しい哲学

私たちは、自分だけがよければいいという利己心を超え、お互いさまという考え方を受け入れなければなりません。 みなが関係しています。すべての人がつながりあっています。お互いから作られているのです。 すべての存在は同じ七つの要素から作られています。地、空気、火、水、空間、時間、そして意識です。これらの要素はすべて 互いのために存在します。どの要素もそれだけで存在することはできません。根本的に命は調和し、百万通りの姿で生成しています。 調和と多様性は永遠のダンスです。物理学は、すべてが究極的には、素粒子と波動と呼ばれる一つのエネルギーなのだと教えてくれます。 多様性は分割とは違います。分離、断片化、二元論は、永遠が垣間見せる一瞬を認知しているにすぎません。暗闇は光と対立しているように見えます。左は右と対立し、 意識は物体と対立しているように見えます。しかし歴史的な視点では、暗闇と光、左と右、意識と物体(そしてすべてのその他の対立物)は、互いに依存しあい、補完し合っているのです。 中国人はそれを陰と陽の調和といいます。陰の中に陽があり、陽の中に陰があるのです。 もしも世界を見るときに、ホリスティック(全体的)に捉えるなら、私たちは政治的、宗教的、環境的な分裂を一瞬で癒すことができます。 サイエンス(科学)とスピリチュアル(精神性)とアート(芸術)の分裂を、つまりは、手と頭と心の分裂を癒せます。 プラトーは真・善・美の三位一体という考えを提唱しました。この三次元哲学は、ホリスティックな世界観を象徴しています。サイエンス(科学)を通じて真実を探求し、スピリチュアル(精神性)を通じて善を探求する。そしてアート(芸術)を通じて美を探求するのです。だとしたら、サイエンス、スピリチュアル、アートを三つの異なる分野や区画に位置づけることなどできるでしょうか。 同様に、私たちは頭脳で真実について考え、真実を知ります。それがサイエンスです。心で善をはぐくみ善良に生きます。それがスピリチュアルです。そして手を使って美を創造し美と交歓する、それがアートです。 サイエンスとスピリチュアルとアートは一つの連続体です。断絶や分裂はありません。私たちの身体とは、この統一性の完璧な具現なのです。 私たちは7つの要素すべての完全なる調和から生成されます。考え、感じ、作ることができます。私たちは全体なのです。 この全体性、完全性、関連性が、持続可能性への最初のステップです。 心と物の分裂はフランスの哲学者、ルネ・デカルトに始まりました。彼は考えることの優位性について、かの有名な命題で宣言したのです。「我思う故に我あり」 このデカルト派の二元論は西洋哲学と科学の基礎となりました。すべての学校、大学、その他の教育機関で、徐々に知識は分離した科目へと分割されました。 経済はエコロジーについて言及することなく教えられ、政治学は詩と無関係に、科学はスピリチュアルと無関係に、そしてすべての科目は専門家の専門分野になりました。 この伝統は勢いを失わずに続きます。部分の研究は全体性を無視して追及されました。学生は文脈なしに文献を学びました。 人類学抜きに哲学を、神秘抜きに歴史を、アート抜きに天文学を学んだのです。この部分的な教育は、政治、経済、医学、農業、そのほかすべての生活へと広まりました。 世界を国、宗教、政治経済システムによって分割し、人と人以外の自然を分断しました。 その当然の帰結として、度重なる環境、経済、地理、精神の不調和という危機に私たちは直面しています。 さて、ムッシュデカルトにお別れを告げなくてはなりません。世界を全体と相互依存するものとして見るのです。 利己心を超えて、お互いの利益を、互恵関係を、相互依存の考え方を認め合わなければなりません。 この統一の哲学によって、もしかしたら私たちは新たな年を始められるかもしれません。サティシュ・クマール、リサージェンス & エコロジスト編集長翻訳: 三国 志織New Year New Philosophy • Satish KumarWe must go beyond self-interest and embrace the idea of mutual interest

TTIP か民主主義か: 両立はできない

新たに提案されたEU米貿易協定につきものの危険性について、マイケル・ミーチャー(Michael Meacher)「EU官僚の誰かがイギリス国民の同意なしに法を課す恐れがある」それはデイヴィッド・キャメロンかナイジェル・ファラージのことだろうと考えられます。けれどもはっきり言われてはいません。ではなぜイギリス国民は、EUと米国との間で提案された環大西洋貿易投資パートナーシップ (TTIP) に対して、自国の主権を守るために立ち上がらないのでしょうか? 現在欧州に起こっているデフレの悪循環に対し、TTIPは1000億ポンドにものぼる経済効果をもたらす価値があるとして推進されています。世界貿易機構 (WTO) への加盟により大西洋をまたぐ関税は現在でも非常に低い(約3%)ため、TTIPは自由貿易協定として提示されていますが効果はかなり低いでしょう。しかし、本当の目的は、民主主義やプライバシー、環境と食品の安全性、それに公共調達や知的財産、金融改革を実施する権利を守る規制を奪うことです。危険なことに、TTIPは人々のニーズより利益最優先で運営されている民間企業に公共サービスを譲り渡すのです。 2013年6月17日に北アイルランドのアーン湖でG8先進国首脳会議が開催され、EUと米国は正式に交渉を開始しました。EU側の交渉の主導は貿易コミッショナーにありますが、コミッショナーはEU 外務評議会 (EU Foreign Affairs Council) が交渉3日前に承認した内容に忠実に従わなくてはなりません。当然、交渉は難航していますが、昨年12月のファイナンシャル・タイムズによると最良でも(見方によっては最悪で)2015年末までに「広い政治的合意」に達する可能性があるとのことです。これから詳細を説明します。 投資家対国家の紛争解決 (ISDS) というおかしな名前の議論が中心になっています。企業が民主主義を超える力を持つことを危惧している人にとって、これは大きな問題です。つまり、こういうことです。民営化が進むイギリスの国民保険サービス (NHS) で利益を得ている米国の多国籍企業があったとしましょう。その会社が、イギリス政府の今後の動き(民営化への逆行や外注化など)によってその分の利益が減少したり失われたりしたと感じたとしたら、TTIPを理由にイギリスを相手取って民事訴訟を起こすかもしれないのです。3人の貿易弁護士で構成される陪審団の内1人くらいは企業に買収されているかもしれません。もし企業が勝てば(実際には、判決は議長ひとりの判断にかかっています)、莫大な慰謝料が課される可能性があり、上訴する権利も得られないでしょう。 そんなばかげたことはありえないと思うかもしれませんが、既に起こっていることをよく見ましょう。多くの企業が自分達の商業的利益に反する政策に対し、取引協定を利用して積極的な投資者保護裁判を起こしているのです。スペイン政府は太陽エネルギーに関する政策を変更したことで多くの投資者保護裁判に訴えられています。ドイツ政府はスウェーデンのVattenfall社に投資者保護違反で訴えられ、福島原発事故後に原子力エネルギーを放棄すると決定した際の損失に対し37億ユーロの慰謝料を要求されました。オーストラリア政府は、たばこのパッケージに関する新しい法律が収用に等しいとの主張で、フィリップモリスに同様の取引協定によって訴えられました。 イギリスにとって最大の危険性は、民営化したサービスを公共に戻した場合、TTIPによって保険サービスを提供する民間企業や米国の投資家たちが政府を訴える新しい権利を持つことです。保守自由民主連立政権 (Conservative–Liberal Democrat coalition) の2012年健康と社会医療条例 (Health and Social Care Act2012) のおかげで、BlackRockやInvescoのようなウォール街の投資家や、United HealthやHCAのような米国の大きな保険会社はNHSに既に多額の投資をしています。現在およそ58億ポンドのNHSの事業が民営化に向けて宣伝され、昨年は14% 増加しました。イギリス政府が今のNHS民営化騒ぎを将来的に公共に戻したら、企業がイギリスで投資者保護裁判を起こす恐れは十分にあります。TTIPのお陰で企業側は、国内法や公明正大な裁判官、抗議、その他の法的手続きという全てと戦わなくてはならない裁判所 (national court) に進むこともなく、審判所 (tribunal) で勝つでしょう。保守党の保健省大臣であるハウ上院議員は、それすらもイギリスの製薬会社にとって良い機会だと正当化しています。NHSから搾取した罪に既に問われている人と全く同じです。 しかしNHSだけではなく、他の公共サービスも脅かされているようです。現在、遺伝子組換え作物はEUで厳重に規制されていて、EU委員会は他にも特定の成長ホルモンで処理した肉、塩素で洗った鶏肉の輸入および販売を禁止しています。米国は世界貿易機構でこれら全てに異議を唱えています。EUの用心深い姿勢を止めさせ、より曖昧なリスクアセスメントの姿勢にすることで、TTIPが農薬の規制を下げる可能性も指摘されています。もう1つは政府の調達市場に関する議論です。また、2012年の欧州議会で、インターネット上の検閲につながりプライバシーを妨げるという理由で猛反対された偽造品取引の防止に関する協定 (ACTA) を、TTIPが不正に再燃させるのではとも言われています。 では、このように不利で不評な結果になるTTIPに、なぜEUはISDS条項を編入することすら考えているのでしょうか?なぜそもそも必要でもない外国の仲裁を受けるのでしょうか?EUの交渉責任者であるイグナシオ・ガルシア・ベルセロ (Ignacio Garcia Bercero) は、「例えば契約の解約条件に関して、加盟国が適切な各国法とEU法を尊重することが既に求められている。」と述べています。先ほどの問いに対する答えは、ISDSは世界のいかがわしい地域で活動する投資家を保護する意図があるということです。2013年11月、イギリスの閣僚であるケネス・クラークが「控えめに言っても、投資者保護は法の原則が不透明な国に投資する企業を支えるためにできている」と宣言しました。それではEUにはほとんど適用されません!ISDSは破綻した国からビジネスを守るより、民主主義からビジネスを守るつもりのようです。 まだ信じられないなら、カナダで起こったことを見てみましょう。カナダと米国で危険な毒素と考えられているMMT(メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル)を製造しているエチルコーポレーションは、カナダ政府がMMTを禁止したことで政府を告訴。カナダ政府は多額の慰謝料の支払いを余儀なくされ、MMTを解禁しました。例は他にもあります。イーライリリー社は医薬品2種を無効とした判決を巡ってカナダ政府を告訴。世界の他の地域では、鉱業会社が環境保全地域から政府を排除するために、銀行が金融規制に反対するために、大手石油会社が石油流出管理の対策を無効にするために、ISDSが使われてきました。経済協力開発機構 (OECD) によると、2013年には57件の政府に対するISDS告訴があり、その内ほぼ半数は先進国でした。 一体なぜこうなったのでしょうか?婉曲な言い回しEU-米国間パートナーシップは、最初から企業の有力者や、有力者たちによる活動的なロビー団体が「共同立案」できると自慢し、実権を握ってきました。このことは、EU委員会がTTIPに関して市民団体と8回の会議を行ったのに対し、企業や企業のロビイストとは119回もの会議を行っていたことからも明らかです。しかも、企業との会議は密室でインターネットにも公開されずに行われています。 成長と雇用という大きな利益があるから、否定的な面ばかり考えなくて良いのでは?と思うかもしれませんね。ここで、過去の例を見てみましょう。元米大統領ビル・クリントンは、北米自由貿易協定 (NAFTA) は米国に20万の雇用を創出すると20年前に約束しました。それどころか、NAFTAは68万人の雇用を奪ったのです。米国の貿易収支を安定化させるはずが、実際にはかなりの貿易赤字につながりました。思いがけない結果をもたらした貿易協定は他にもあります。オバマ大統領は、2012年発効の米韓自由貿易協定は100億ドルの輸出増額効果があると約束しましたが、すぐに35億ドル減少。オバマ大統領は7万人の新たな雇用につながると言いましたが、4万人が職を失う結果になりました。対韓国の貿易赤字は改善せず、50%悪化。今度の約束は信頼できると言えますか?  しかし、TTIPは既に決定したという意味ではありません。まず疑問はTTIPが「共同権限 (mixed competence)」の協定かどうかということ。つまり、EUの権限外の要素が含まれているために、組織の伝統に従ってEU委員会と28の各加盟国の両方が承認する必要があるのかということです。EU委員会は、TTIPは確かに共同権限の協定だという見方をしているようです。その場合、TTIPは国の承認が必要な条約としてイギリス国会に勅令書が提出され、条約の承認は正式な手続き (secondary legislation) を経て進められるでしょう。議会の前に命令案が委員会にかけられ、上院と下院の賛成の下で承認。しかし、危機的なことに、国会では条約を修正することは一切できません。国際条約法により、条約の草案文面は交渉の過程でのみ修正が認められ、個々の政府や国会が承認手続きの途中で修正してはいけない決まりです。 つまり全ての加盟国がTTIPを拒否できるのです。英国の場合、条約が発表されて21日間に、承認を正当化しなければならない法律に反対投票することでも、条約に関する討論での承認に反対投票することでも、国会はTTIPの承認を中断することができます。更にその後条約が討論されていれば、反対投票し続けることで承認は停止します。これは新政府の下で今年後半の重大な決断になるでしょうが、国中で高まってきた社会運動と政治運動の影響力は大きいでしょう。準備はいいですか?マイケル・ミーチャーは1970年にオールダムウエスト選挙区から労働党の国会議員として初選出。その後1997年から2003年まで環境大臣を務めました。翻訳:國屋 真由美TTIP or Democracy? • Michael MeacherThe dangers inherent in the proposed new EU-US trade agreement

アマゾンを救うために愛を

世界最大の熱帯雨林は、私たちが親しみを感じれば感じる程、それを救うチャンスは大きくなるとカリナ・モットーは信じている。翻訳:斉藤孝子アマゾン熱帯雨林は世界最大の森林であり、地球の気候調節に極めて重要な働きをしています。それを守る必要性は疑いようもありませんが、その環境的な役割のために守るだけでなく、森林を生き生きした状態に保つ努力が必要です。 森林とそこに生息する全ての生命には、私たち人間と同じくらい生きる権利があります。これに気づけば、森林破壊を減らす解決策を見出そうとする中で、滅多に語られないことに目を開かされるでしょう。つまり、森林と精神的なつながりをもつことの重要性です。私たちの多くは、この母なる地球という生態系に対し、まだ深い感謝や畏敬の念を抱くに至っていません。しかし森が与えてくれる環境的役割ゆえの保全に重きを置きすぎると、それが妨げになることもあります。 シューマッハーカレッジのアーストーク (Earth Talks) で、作家チャールズ・アインシュタインはこう語りました。「理屈でいえば、もし私たちが自然に代わる物をなんらかの方法で見つけられるなら、アマゾン熱帯雨林をケアする必要などありません。私たちが今すぐ起こさなければならない変化とは、それより遥かに大きく、そしてそういう奥深い変化、勇敢な変化は、愛からしか生まれません。」 自然との一体感は、環境問題を扱う上でとても重要です。エモーショナル・アフィ二ティ・トワード・ネイチャー (EATN: Emotional Affinity Toward Nature) のコンセプトによれば、自然と一体感を感じれば感じる程、自然を大事にする行動をしたくなります。もちろんこれは地球上どこでも同じですが、今はアマゾンの例を続けましょう。 学位論文「アマゾンとのリコネクト: 熱帯雨林への深い感情に目覚める旅 (Reconnecting with the Amazon: a journey of awakening deep feelings for the rainfores)」ー シューマッハーカレッジ (Schumacher College) のホリスティック・サイエンス (Holistic Science) で理学修士として執筆 ー を書くためのリサーチをする中で、アマゾンに対し昔から主に2つの見方があるという研究を見つけました。1つは、アマゾンはエキゾティックで魅惑的だというもの。もう1つは、危険で人を寄せ付けない、というものです。 これは16世紀に現地に到達した欧州の探検家、科学者、博物学者たちの考えでした。彼らの観察は、被植民地時代及びその後のブラジル文化や教育に吸収され、人々と熱帯雨林がつながることより、分離する方向に働きました。ブラジル政府は1960年代以降ずっとアマゾン一帯を開発する必要性を強調してきました。 そのような既成概念が根強く続く中で、アマゾンは消失しつつあります。2013年には、森林破壊総面積は762,979 平方キロメートルでした。これがどんなことかを理解する手立てに、科学者アントニオ・ノーブル (Antonio Donato Nobre) が科学アセスメント「アマゾンの未来の気候リポート (Future Climate of the Amazonia)」で、こう説明しています。時間で考えると、この数は驚嘆に値します。つまりサッカー場が、1日当たり12,635個分、1時間当たり526個分、1分当たり8.8個分=36,291平方キロメートル、1秒当たり平方キロメートル、という勢いで過去40年間以上、休む事なしに失われてきたということです。 私がリサーチで探求したかったのは、人々のアマゾンに対する理解が大きくなれば、このシナリオはどう変わって行くだろうかということでした。人々は、行動を起こすことにもっと関心を持つだろうか、あるいは、少なくとも森林破壊の最大原因である牛肉の消費を減らすだろうか? です。答えは多分「はい」でしょう。 ホリスティック・サイエンスとは気づきやつながりをより促す道です。主流サイエンスは、可視的で名づけることができ説明できることの数量や証明に集中する一方、ホリスティックはその先を見て新たな考え方を呼び起こすものです。 ガイア理論により、アマゾンの森林は自己調整有機体、つまりそれ自身が生き物であると考えてよいでしょう。汎心論 [あらゆるものが心的な性質を持つとする世界観]、つまり心と事象を区別しない哲学を学べば森林自身が心を持つと結論づけられるでしょう。 「自然は、事象であるだけでなく魂でもある。」と、ユングは、その著書「地球には魂がある (The earth has a soul) 」に記しています。これを受け入れると、アマゾン熱帯雨林への私たちの感じ方、ふるまい方に、深く倫理的な変化が起こるでしょう。 私たちには、このより深い一体感を育てる時間はあまりありません。人類は既にアマゾンの20%を失ってしまいました。40%前後になれば、アマゾンの自己再生力は機能しなくなります。砂漠になるでしょう。 「アマゾンは極めて特別で他に類を見ない唯一無二のものです。それを失うことは、まさに、母なる源、神との関係の真髄を失うことです。」とスピリチュアル論者マシュー・フォックス (Matthew Fox) は言います。「私にはアマゾンを訪れる特権がありました。それはとてつもない幸運です。森は私たちを愛してくれます。私たちの気持ちの何が森を愛するのを阻むのでしょう?」 偏見、あらゆる類いの怖れ、野望、お粗末な教育、精神的つながりの欠如等も確かに答えの一部です。 この母なる地球という生命体と私たちの関係がいかに表面的であるかという例をもう一つ挙げましょう。アマゾンについてふつう学校で学ぶことは何でしょう?いくつか例を挙げると、面積は690万平方キロメートルで南アフリカ大陸の9つの国にまたがっているとか、地球上にある真水の1/3を保水しているとか、その流域は600万平方キロメートルに及ぶなどです。 アマゾンを説明するのにそんな数字がよく使われますが、そういう情報で私たちの心にどんな感情が目覚めますか? 私は、学位論文執筆中に、私たちは表面的なことに留まっていると判断しました。アマゾン熱帯雨林は、そんな数字などで表せるものではありません。「アマゾンは、生きて呼吸する繊細で広大な心なのです。知的で敏感で非常に賢いのです。」とは、環境論者であり哲学者であるデビッド・アブラム (David Abram) の弁です。 私たちはどこにいようとアマゾンとつながれます。エドワード・O・ウィルソンが提唱した生物自己保存能の仮説は、人は生まれながらにして自然への従属性が備わっていると断言しています。私たちは別々の存在ではなく、内的につながっており、つまり従属していて、「知っている何か」が、一人一人の心の中にあるのです。私たちはこの従属性を持って生まれて来ます。そして、アマゾンは自然界の見事な具現として在るのです。 以下をやってみて下さい。自然の中で静かな場所に座り、今いる場所と一体になり、そして熱帯雨林について考えて下さい。森が死につつあること、四六時中死に追いやられていることを思い出して下さい。そして森に愛を送り、それがあなたの中でどう感じられるか考えて下さい。 サティシュ・クマールは、昨年初めてアマゾンを訪れたにも関わらず、それ以前に、私にこう言いました。「私たちが、森や動物、人々、そしてアマゾンの全生物を愛するなら、私たちは全地球と一体になれます。それらは地球の心です。自然やアマゾンを愛する気持ちがない限り、どんな科学も知性も哲学的命題も用を成しません。アマゾンへの精神的一体感が最も基本的なアプローチです。 ステファン・ジェイ・グッド (Stephen Jay Gould) は、その著書「8匹の子豚: 自然の歴史における更なる考察 (Eight little Piggies: More reflections in Natural History)」でこう書いています。種の保存や環境保全の闘いに勝つためには、私たちと自然との精神的一体感が必要です。「というのは、私たちは、好きでないものを救うために闘うことはしないが、何か抽象的な感覚で真価を認めるから。」 アマゾンへの愛、慈しみ、感謝、そして畏敬の念を感じるべき時です。私たち自身の意識を目覚めさせる時であり、そのためにとるべき道は、アマゾンについての新しい教育、単に数値的情報を与えること以上に興味づけする教育に投資することです。想いを寄せる時です。つながる時、守る時です。望みを託す大きな理由です。これが、今、熱帯雨林を生き生きと保全するため、そして後に続く世代のための鍵です。カリナ・ミオッテ (Krina Miotto) : 環境ジャーナリスト、ディープエコロジスト、ホリスティック科学者。人々とアマゾン熱帯雨林を精神的に結びつけるプロジェクト、Reconexão Amazônia のリーダー。Article - We Need Love to Save the Amazon • Karina MiottoWhy we need to make an emotional attachment to conservation

小さな考えと大きな未来

社会正義、環境、平和がいっそう重要に。カオス理論では、関連が無いと見られる出来事に結びつきがあり得ると捉えます。蝶が羽をはばたかせると、ハリケーンが数週間後に吹き荒れます。連鎖反応があるのです。スコットランド独立に関する先ごろの住民投票をとりまく活動でも、同様な反響がありました。産み出されたのは広範な議論で、更なるローカリズムの必要性、私たちの生活の自立 ー 人々に真に引き渡されるべき力についての議論でした。本リサージェンス新年号では、この議論を掘り下げ、幅広い特集を組み、記者がスコットランドの活動を調査し、英国の他地域への影響について議論します。議論はブリテン諸島にとどまらず、カタルーニャの先の投票や、切望されていたパリ市民の都市全域の環境運動への投票(Frontline: 最前線ページをご参照)に及びます。ローカル化の考えは動き始めています。それは権力を弱める考え方で、地方行政のほうが人々のニーズに適すのではという考え方です。「小さいことは素晴らしい」というのは、リサージェンスが提唱してきたもので、環境、社会活動、社会正義、エシカルな暮らし、アートに関するその他の主張を伴い、創刊以来、およそ50年間推奨してきました。今日でも、こうした懸案は依然として妥当で、何かあれば、むしろより強いものとなります。そこで、今号の他のページには、Naomi Klein(ナオミ・クレイン)のインタビューがあり、気候変動に直面する中でのつながりある活動の必要性が語られます。また、Vandana Shiva(ヴァンダナ・シヴァ)とCraig Sams(クレイグ・サムズ)が明かすエコロジカルな必須事項もあり、これは土壌を守るためのもの。そして、Max Lawson(マックス・ローソン)は化石燃料産業のロビー活動の圧力を抑え込む緊急性を語ります。私たちが考え、興味を抱くのは、国際的でしかも地域に根差したものです。今号で、Adam Weymouth(アダム・ウェイマウス)がアラスカからレポートするのは、先住民の権利に関する活動、アメリカの高名な環境活動家、 そして、私たちの言語が失われる危険性を鋭く記す批評家 David Orr(デイビッド・オア)。それから、社会評論家 Jeremy Seabrook(ジェレミー・シーブルック)は市場の神話を追求。また、宗教と環境に関する記事の新シリーズの初回として、Rob Burbea(ロブ・バアベイア)は仏教自体とその自然との関わりについて検証しています。アートの誌面では、いつも通り、関心事と発想を考察。Fiona MacCarthy(フィオナ・マッカーシー)が論じるのは、偉大なヴィクトリアの先駆者で、芸術家で、政治的急進派の William Morris(ウィリアム・モリス)の作品と影響について。インドのサロッド奏者 Amjad Ali Khan(アムジャッド・アリ・カーン)が語るのは音楽とスピリチャルについて。Ian Skelly(イアン・スケリー)が訪れたのは、 Prince’s School of Traditional Arts(英国皇太子の伝統芸術学校)で、手工芸スキル向上のための学校です。それから、詩人 Matt Harvey(マット・ハービー)が述べるのは、再生可能エネルギー企業と活動した際のこと。多勢のレギュラーのコラムニストや特集を伴う今号で、読者のみなさんが楽しく元気になればと思います。休暇シーズンが過ぎ去っても続くような楽しさと活力で。2015年になり、リサージェンス & エコロジストが支持する主張は、きわめて重要になっています。私たちはそれらを追求し続けます。全読者にとって平和で満ち足りた新年でありますように。サティシュ・クマール、リサージェンス & エコロジスト編集長翻訳: 沓名 輝政Small Ideas Big Future • Satish KumarSocial justice, environment and peace are more important than ever

健全な生態系をつくる家族計画

リプロダクティブ・ヘルス/ライツが環境保全の重要な役割を果たすとデビッド・ジョンソンとカリナ・ハーシュは主張。翻訳:フリッツ郁美アイリーンは、マダガスカル辺境の乾燥した地域のタンポロヴ村に住んでいた時、まだ学校に通っていましたが、息子がいました。 医療へのアクセスが全くないため、近代的な避妊方法を利用するには、最寄りの診療所まで 50km 歩かなければなりませんでした。 彼女のような女性は平均して7人の子どもがいて、妊娠や出産で 1/20 が死亡するリスクに直面していました。これは英国の何千倍にもあたります。この地域の人口は10年から15年ごとに2倍になり、漁業への圧力が高まり、夫婦は家族を食べさせていくのに十分な魚を捕獲するのに苦労していました。 そこで女性たちは、この地域で活動する団体ブルーベンチャーズ(Blue Ventures)に支援を求めました。ブルーベンチャーズは、生活の糧をほぼ全て漁業に頼っている多くの辺境の地域で活動する海洋保全の社会的企業です。 ブルーベンチャーズの医療部長ヴィク・モハン (Vik Mohan) は次のように述べています。「女性たちは、家族計画サービスへのより良いアクセスを望んでいました。生計と自然資源管理イニシアチブについては彼女たちのコミュニティとすでにパートナーシップを結んでいたので、彼女たちは私たちに助けを求めました。 「それで、(保全組織にとっては)大胆で果敢と当時感じた取り組みをしました。私たちは地域社会で自前の家族計画サービスを開始したのです。」 それ以来、ブルーベンチャーズは、アイリーンのような地元の女性を地域の保健医療従事者として訓練し、マリー・ストップス・マダガスカル (Marie Stopes Madagascar) と提携しています。この組織は、長期的な避妊方法を提供し、より手の込んだケアをしています。 持続可能な生活と家族計画の取り組みを統合した環境保全と保健セクター間のパートナーシップは、女性を自然資源管理に参加させる機会を提供し、男性はリプロダクティブ・ヘルスを更に支持し、関与しています。 ロンドンで開催された家族計画サミットの一環で、マーガレット・パイク・トラスト (Margaret Pyke Trust) が企画したイベントでヴィックは、アイリーンの話をしました。 「人間と環境の健康のためのWin-Win:家族計画ニーズを満たすことで環境保全プログラムをどのように強化するか (A Win-win for Human and Environmental Health: How Conservation Programmes Can Be Strengthened By Meeting Family Planning Needs)」というこのイベントは、重大なのに見過ごされがちな問題に焦点を当てています。 世界の人口は増加しています(アフリカでは、2100年には今日の約10億人から約4倍の40億人に拡大すると予測されています。)。伴うのは地域で起こっている圧倒的大多数の成長で、特に開発で直面する複雑な問題。貧困と不平等、環境悪化 、健康障害、その他に関連する様々な社会問題。健康、教育、社会的ニーズが満たされなければならない人々の数がはるかに多い場合、これらの問題に対応する国の能力はさらに悪化するでしょう。 農村部はほぼ例外なく、保護が最重要ですが、一般的に言うと人口増加率が高い地域でもあります。こうなる原因の一部は、家族計画の情報、権利、およびサービスに対する大きな障壁です。辺境の農村部に住む人々は、食糧、水、生計、医薬品、建材のために、地元の環境や自然資源に最も直接的に頼る傾向があります。 人口増加が生態系の健全性に影響を及ぼす場合、それはまた、農村地域の健康にも影響を及ぼします。 リプロダクティブ・ヘルスと権利は、少女や女性の健康とエンパワメントだけでなく、より広域的に重要です。 この人口統計学的現実にもかかわらず、多くの自然保全主義者は、保全政策とプログラム設計を策定する際に、人口と家族計画を検討することには消極的ですが、変化していく兆候がみられます。 人口、健康そして環境 (PHE: Population, Health and Environment) と呼ばれる開発セクターでは、このつながりを認識する手法が使用されています。このモデルは、持続可能な生活の世代と家族の計画作業とを組み合わせることによって、家族、彼らの健康と環境との複雑なつながりに取り組んでいます。 PHEは、特に影響を受けやすい農村地域、医療システムの範囲外に住む人々に適しています。 人口基準局のクリステン・パターソン (Kristen Patterson) は、家族計画サミットの席上で、「PHEアプローチは、環境保全とリプロダクティブ・ヘルスに関する行動をまとめる折り紙つきのホリスティックな方法の1つです」と語りました。 ニジェールでの生活経験をシェアし、人口、健康と環境のつながりを目の当たりにし、それが彼女の世界観をどのように変えたのかを話しました。 米国国際開発庁によって行われる10年間のPHE実施チェックは、PHE計画の作成の重要な成果に光を投げ掛けています。コミュニティは、投資され関与されていると、より速く感じることが多く、そういった短期結果がより長期の持続可能な影響につながる傾向にあります。人々の最も緊急なニーズに応じることによって、PHEプロジェクトは地域でより大きな信頼を培い、地域の主体性を構築するのを援助しています。 事例の1つは、南アフリカの北西部の Groot Marico にあります。現地の A Re Itireleng によって命名されたこのプロジェクトは、 セツワナ語で「自分自身でやろう」という意味で、マーガレット・パイク・トラスト (Margaret Pyke Trust) とパスファインダー・インターナショナル (Pathfinder International) と 絶滅危惧野生生物トラスト (Endangered Wildlife Trust)によって運営されています。 気候変動と家族計画への不十分なアクセスの中で持続可能な生計の必要性を満たすために設計されたものです。 プロジェクトの地域の中心には、地域的に重要な水路であるマリコ川の上流域があります。 健全なマリコ川は、地域固有で脆弱な種の生き残りや農業共同体の生計を維持するために重要です。 下流の多くの地域社会は、クルーガー国立公園のように水が流れる生態系と同様に、マリコ川に依存しています。 その地域と住民は、干ばつと増加する人口による水の供給の要求にますます脅かされています。絶滅危惧野生生物トラスト (Endangered Wildlife Trust) は、地元の人々が家族計画サービスやPHEプロジェクトへと発展したプログラムへより多くのアクセスの必要性を認識した際に、集水やパーマカルチャーの原則を含んだ保護に重点を置いた農業の実践を可能にするために、持続可能な生計を訓練しています。環境生計行動や家族計画行動だけでは、相互に関連している課題に適切に対応することはできません。 コミュニティとエコシステムにはPHEが必要です。 影響を受けやすい辺境の農村地帯に住んでいるアイリーンのような人々が数億人もいます。そこでは人間の健康と福祉が生態系の健全性と密接に関係しており、ヘルスケアへのアクセスが制限されていて、コミュニティが地域環境に食物と水の保障を頼っています。 ブルーベンチャーズが活動する沿岸地域コミュニティや Groot Marico コミュニティなど、これらの地域の多くは気候変動の影響を特に受けやすいです。 人口増加の原因の一部は、家族計画の情報やサービスに対する障壁であり、これらの課題をすべて悪化させています。 しかし、変化させることは可能です。 今日、アイリーンはブルーベンチャーズの支援を受けて、海藻やナマコを育てて順調に生活していて、彼女の村の家族計画の熱心な提唱者です。 このようなプログラムは人々の生活をより良く変えてきました。 それでは、なぜ環境団体や資金提供者は、統合されたアプローチでこれらの開発懸念に対応していないのでしょうか? 現実には、ほとんどの開発援助が非効率に重複して資金提供されており、ほとんどの保全・保健機関はこれらの分野で同時に働くために必要な分野横断的な専門知識が不足しています。 あまりにも長い間、保全と人間開発懸案事項は、別々で、お互いに競合していることさえあり、人々とその健康と福祉と環境との間の重要な関係に対処できていません。2015年に国連によって策定された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17の「持続可能な開発目標」は、統合され、変革的であると歓迎されました。PHEプログラムは、統合を確実にして、目標を達成するための1つの方法です。 これは、今後数年ではますます一般的になることを私たちが望み、信頼しているアプローチです。 それは、人と環境の両方の健康にとって良いことづくめのニュースです。ブルーベンチャーズは、持続可能な開発の重要な要素であるリプロダクティブ・ヘルスと権利を促進するグローバル・アライアンスである「人口とサステナビリティ・ネットワーク (Population & Sustainability Network)」のメンバーです。 このネットワークは、2004年に「国連持続可能な開発委員会」の下、「持続可能な開発のためのパートナーシップ (Partnership for Sustainable Development)」として発足しました。「絶滅危惧野生動物保護トラスト (Endangered Wildlife Trust)」や「FoE (Friends of the Earth)」などの環境に注力する他のメンバー、英国国際開発省などの開発機関、国際家族計画連盟のような保健機関は、保健・保全団体の集まりのさらなる例です。 ネットワークは、国際自然保護連合のメンバーでつ50年の家族計画の専門知識を持つという比類のない慈善団体「マーガレット・パイク・トラスト (Margaret Pyke Trust)」によって運営され調整されています。 デビッド・ジョンソン (David Johnson) は、「マーガレット・パイク・トラスト〜人口と持続可能なネットワーク (Margaret Pyke Trust, with the Population & Sustainability Network)」の最高経営責任者です。 カリナ・ハッシュ(Carina Hirsch) は同トラストの擁護とプロジェクト (Advocacy & Projects) のマネージャーであり、同トラストの「A Re Itireleng」プロジェクトへの取り組みを調整しています。 www.margaretpyke.org www.populationandsustainability.orgFamily Planning Makes for a Healthy Ecosystem • David Johnson & Carina HirshReproductive health and rights play an important role in conservation

戦争と平和〜恐怖からの自由なくして平和はありえない

戦争根絶のための戦争であった第一次世界大戦の100年紀にあたる今年、それが全く不実な目標であったことは誰の目にも明らかです。平和への希望は戦後間もなく打ち砕かれたのですから。第一次世界大戦は第二次世界大戦の呼び水となり、その後には冷戦とその他の多くの戦争が続きました。これらの戦争はどれひとつとして平和のためのものではなく、実際は征服と支配のためのものでした。戦争が戦争を終わらせることはありません。戦争が戦争を呼ぶのです。 世界中の一般民衆が平和を渇望する一方、政治的・軍事的指導者や兵器商たちは、戦争が平和をもたらすという揺るぎない信念を持っているようです。彼らは、失敗の歴史を無視し、「国益」、「国土安全保障」や「領土保全(領土的一体性)」の名の下に戦争の準備を続けています。これらの目標はいずれも掴みどころのないものです。私たちは、絶え間ない恐怖という暴虐にさらされています。ですが、恐怖からの解放なくして平和はありえません。 戦争の世紀は、平和の力が発揮された時代でもありました。第一次世界大戦時、英国では、シルビア・パンカーストのような作家やバートランド・ラッセルのような哲学者をリーダーとした強力な平和運動が展開されました。従軍年齢の男性2万人が入隊を拒否し、6000人が懲役に服しました。それ以来、平和活動家たちは「目には目を」ではやがて全世界が失明してしまうということを世界に説いてきました。マハトマ・ガンディー、マーチン・ルーサー・キング、マザー・テレサのような人々が、他にもやり方があることを教えてくれたのです。 9月21日は、世界中でお祝いされる国連国際平和デーです。戦争と暴力の無益さを改めて感じさせてくれる日です。本号のリサージェンス&エコロジストでは、国際平和デーに寄せて、そして、50年前にE.P.メノン氏と共に歩いた(道中私たちに食事や旅の宿を提供し、ガイドを務めてくれた人々の寛容さ、信頼、そして平和を望む想いなくして実現できなかったであろう)1万3000キロの平和巡礼に思いを馳せながら、非暴力の力についてエッセイを寄稿しました。 2014年10月2日、史上屈指の平和主義と非暴力の擁護者である、マハトマ・ガンディーの生誕145周年を迎えます。本号では、ガンディーへの感謝を込めて、チベット亡命政府の初代首相であったサムドン・リンポチェ5世(ロブサン・テンジン)によるガンディーの精神的価値観と平和の政治学についての講演内容を掲載しました。 世界は変わろうとしています。少なくとも幾人かの政治家は人々が戦争というものにうんざりしていると気づき始めています。イラク戦争に加担したことが、トニー・ブレアの地位と信頼を失墜させる要因となりました。ジョージ・ブッシュの場合もそうでした。こうした戦争から良い結果がえられることなど無いに等しいのです。罪のない人々が巻き込まれ、殺戮が続いています。オバマ大統領は、多くの人々をおおいに落胆させたましたが、米国の国際的な戦闘行為への関与を削減しようとしています。米英の両国議会は、シリアに対する武力介入を支持しませんでした。ウクライナの状況も良好とはほど遠く、両勢力は非難し合っていますが、少なくともロシアと西側勢力が即座に武力衝突するようなことは起きていません。平和が勝ち取られたわけではないですが、戦争が好ましい選択肢だとも思われていないようです。 楽観的立場をとるなら、戦争や紛争は過去の遺物だと思いたいものです。ですが、残念なことに兵器商や軍事的指導者たちは平和を求めていません。武器の製造者が方向転換し、本号でジョナソン・ポリットが提唱するように太陽光パネルを製造するようになったら素晴らしいと思いませんか。 私が考えているほど世界は優しくも単純でもないと思われるかもしれません。ですが、「弱き者は幸いなり。彼らは大地を受け継ぐであろう。」というイエス・キリストの言葉を思い起こしましょう。人類の頭上に争いという暗雲が広がっていようとも、私はくじけることない人間の精神というものを信じ続けています。サティシュ・クマール翻訳:宇野真介ナマケモノ倶楽部ホームページより転載。

多様性は中心街を生かす

ナオミ・カントンは商店主がネットやスーパーマーケットの優位性を否定している街を訪れた。翻訳:馬場 汐梨小売業者でアナウンサーでもあるメアリー・ポータスは政府の指示で2011年にイギリスの中心街の未来についてのレビューを述べました。そこでの彼女の発見は、中心街が消滅に向かっているということでした。 おそらくリサージェンス&エコロジスト誌の読者のほとんどにとっては驚くことではないでしょうが、買い物の女王と称された女性が、郊外の小売店やショッピングモール、スーパーマーケットとインターネットが小さな店や小売店を危機的な状況に追いやっていると主張しました。 「自営の肉屋やパン屋、燭台屋に占められていた中心街の時代は、一部の例外的な環境を除いて終わった」とポータスは挑発的に述べました。 2017年初頭までに状況は更に悪化したようです。流通会社パーセルヒーロー (ParcelHero) の消費者研究所長デイビッド・ジンクスは、『2030年:中心街の終末 (2030: Dead End for the High Street)』というレポートを発表しました。その中で、小売業者や評議会、計画機関が行動を起こさないと、イギリスの店舗はEコマースや宅配会社との競争で2030年までに半数が消えるだろう述べられています。ネットは現在イギリスの小売の売り上げの15.2%を占めていますが、2030年には40%に到達すると予測されています。 しかし、私がたまたま立ち寄ったサマセットの伝統的な市場の街、イルミンスターはこういった絶望的な予測を否定しています。そこでは小さな店が栄えていて、閉店して板を打ち付けた店はありません。地元の人によると、外の人が街を羨ましがっていて、店はテスコの大型店舗と適切に共存しているそうです。では、その秘訣は何なのでしょうか? ペットショップに入ると、鳥の餌や猫のおやつ、うさぎのケージ、魚の餌や犬用バスケットがあるだけでなく、他のものに紛れて、ナットやボルト、ネジ、パズル、おもちゃ、釣り竿、洗礼の贈り物、チョコレート、ケーキ、電池、庭の飾り、クレヨン、ティーバッグ、ゴミ袋やモデルカーも売っています。 「まるでアラジンの洞窟です」と緑豆を買っていた客は言います。彼女の買う物の中にペットフードはありません。「もしペットフードしか売っていなければ生き残れていないでしょうね。何かを買いに入って別のものを買うんです」と付け加えます。 「今はたくさんの人がネットで買い物をします。ほら、バンが止まっていますね」と1980年代からBD Garden & Pet Suppliesを経営しているブライアン・ドルーリー (70) は言います。「店を続けるにはこれらのすべてを売らなければいけないのです」と言い、15年前にテスコが街にやってきたときに商品ラインを増やすことに決めたと付け加えました。「ひとつの商品ラインでは生き残れないと思いました。私たちは若い世代を惹きつけたいし、だから彼らを呼び込むなら何でも」。 しかし客は入る店が何を売っているかわからなければ混乱するのではないでしょうか? 「いいえ、イルミンスターではみんな慣れています。」 トランジション・タウンで試みているように、イルミンスターのローカルビジネスはお互いをサポートすることに尽力するのだということが分かりました。 「地元の獣医は私たちからペットフードを買って支えてくれようとします」とドルーリーは言います。 イルミンスター書店 (The Ilminster Bookshop) に、もちろん、本を買おうとして立ち寄りました。そしてそこには本がずらりと並んでいる一方で、ブルゴーニュのピノノワール、アルザスのゲヴュルツトラミネールなどのワインボトルやサイダーやビールが側の棚に陳列されています。イリーナ・グエンは「私たちは中にカフェを置くことも考えたのですが、他のコーヒーショップと争いたくなかったんです。それで私たちはワインにしました。地元のワイン商店も閉店したところだったので。義理人情があるので、近くに酪農家のお店があるので私たちはチーズを売り始めることはしたくありませんでした。でも、風の中で立っていられるのは最も根の多い木ですよね」と、夫と一緒に店を経営するドリュー(40)は付け加えます。 彼らは地元の独立卸業者から仕入れたワインを売り、地元のヘアサロンが夜遅い営業の時にはボトルをあけてくれます。彼らは今プロのワインテイスターとのイベントを企画しています。「クリケットのクラブと協力してガーデンパーティーでのワインテイスティングをする予定で、それにはネット告知も必要です」とグエンは言います。 次に私は毛糸店に目をつけました。毛糸の束があるだけでなく、グリーティングカードやラッピングペーパー、靴、靴下その他の服やおもちゃ、台所用スポンジも置いています。 ではこの多様化の戦略は段取りされたものなのでしょうか?イルミンスターの商工会議所長のフィリップ・ワイアットによると、店主たちは同時に多様化し始めたそうです。「特に計画は何も作られていません。おそらく店主たちは客に欲しいものを聞いて、街で売っていないものを売り始めたのでしょう」 「高まる圧力に直面して、スモールビジネスや自営の小売業者は伸びるために多様化し続ける必要があるのです」とスモールビジネス連盟 (FSB) の全国会長のマイク・チェリーは言います。「資産に依存しているため賃料の上昇に伴うビジネスレート [英国の事業用固定資産税] の上昇の影響を受ける小売業者にとってこれはとても的を得ています。 チェリーは小さな小売業者は地域経済にとってものすごく重要であると付け加えます。FSBの調査によると、小中規模のビジネスに使われた1ポンドあたり63%が再びその地域で使われるのに対し、チェーンや大規模なビジネスで使われた1ポンドでは40%しか使われません。 「私は店が多様化したことにとても満足しています」と、世帯数6,000のその街に11年間住んでいるコリン・ガーランド (45) は言います。「欲しいものが手に入るチャンスが増えますからね。毛糸店に行ってグリーティングカードや服を手に入れるのもいいと思います。」 次にリサイクル・アップサイクルのインテリアショップ、The Green House に入ってみました。ざるで作られたランプのかさやスケートボードで作られた時計の反対側にはグルテンフリーのカフェがあります。 その店のオーナーの娘、マーサ・ヴィッカリー (21) は、次のように説明します。「人々は入ってきて私たちが売っているものに少し混乱して出て行くか、2時間見て行くかでした。私たちがカフェをしていることの意味は、人々は入ってこれて私たちがしていることを理解してくれるということです。それはお互いを助けて全体としてよりよく働けるということを象徴しています。母と父は店をコミュニティ・ハブにしたいと考えています」と、誰がひいてもいいように置いているピアノを指しながら言います。 マーガレット・ポーレイン (84) はそのカフェにいます。「テスコは家族向けです。私はオレンジの大きな袋はいらないから、食品を求めて小さなお店にいきます」と言います。「ここの多くの人は、小さい店が続くようにテスコを使わないようにしています。」 彼女は「ここには最も素晴らしい肉屋があります」と付け加えます。「彼らにどうやって料理するかを聞くこともできます。会話があり、顔を覚えています。交通手段がなくてもここで何でも買えます。賃料が高い分店はできるだけたくさん売る必要がありますからね。」 私は八百屋に立ち寄ります。今はもう陳列棚にシルバーのジュエリーが置いてあってペポカボチャが置いてなくても驚きません。人参やクレソン、ネクタリン、ブラックベリー、花豆類などの側にリボンや編み物のゾウ、地元で生産された紅茶やコーヒー、リンゴジュースやビスケットが置かれています。「人々は種類の多さを好むし、それによって普段は来ない客も来ます」と9年ビジネスを経営しているマイク・アダムス (44) は言います。 「フルーツや野菜は当店の主力ですが、あまり多くの利益幅はありません。もし別の商品を扱っていなければまず間違いなく閉店していたでしょうね」と彼は言います。 それでも、店は売りに出されています。 「来店数は始めたときから50%まで落ち込んでいます」とマイクはいいます。「そのいくらかは、うちの固定客が亡くなったり引っ越してしまったことと関係があるでしょう。その代わりをまだ見つけられていません。」彼はまた別の意見も伝えてくれました。「人々はここに来て季節ものを買っていましたが、最近ではネットで欲しいときに買うようになりました。でも、この近所の人たちは買うのを増やして与えてくれるのです。」 彼は魚を売ろうとしたが客が支払いたい金額で供給することは不可能だとわかったと言います。「お客はまとめ買いが必要になり、ただ私たちは十分な客を呼び込めない。それでは利益幅がありません。」 それにもかかわらず、すぐにでも店舗が取り上げられそうなのはおそらくイルミンスターの再生力を表すのでしょう。 「もし店が空になったらすぐに取り上げられます」と南サマセット地区カウンセラーのキャロル・グドールは言います。 ほとんどの市議会議員はテスコが街の他の店の来店数を増やすのに寄与したと思っています。しかしその大型店の開店に反対した州市議会議員のリンダ・ヴィジューはその意見に同意せず、来店数が増えたのは近年新しい家が建っているからだろうと言います。 テスコは独自の分析をしています。「大型店の駐車場は買い物客が中心街を訪れることに寄与したでしょう。そして我々の存在は街が提供する小売りを上乗せしています」とスポークスマンは教えてくれました。「私たちの店の同僚たちはローカルコミュニティの中でとてもアクティブです。去年は2万ポンドもの慈善寄付金を集めましたから」と彼は付け加えます。 「人々は今もう少し個性的なものを探しているのです」と The Green House で創作物を売っているアーティストのカーリー・ブラウンは言います。「Nando’s や Topshop ならどの街でも行けますが、イルミンスターではもう少しニッチなものがあります。」 実際、Local Data Companyと英小売協会によると中心街の自営店は 2017年の前半に急成長を見せました。国のチェーン店が減少した一方で、自営店の新規開店は2016年よりも大幅に増えました。 「チェーン店は面白みがなく味気ないんです — でも、こちらの店では違うのだという点は、味気なくはないということなんです」とブラウンは結論付けました。 もしイルミンスターの店がテスコとうまく共存しているのなら、ネットの脅威にも負けず生き残れるでしょうか?ジンクスの予想に基づくと生き残るということかもしれません。もし伝統的な中心街が生き残るならば、私たちはヴィクトリアン様式に戻って主に自営の店を含めてサービスや専門技術を奨励し、買い物の社会体験の中での地位を再び高める必要があります。おそらくイルミンスターのような街はその道を示してくれています。中心街の変わりつつある顔 PwC に集められた調査によると、2016年の最初の6か月でイギリスの中心街で2,656の店や小売店が閉店しました。これは1日に15店のペースです。 英小売店協会 によれば、最も減少したのがパブや女性用洋服店、新聞販売業者、電化製品店で、理髪店やカフェ、タバコ店/電子タバコ店や美容院の数は増えています。 しかし小さいことが今もうまくいく…自営小売店や店主はイギリスの全小売、レジャー施設の65%を占めています。イギリスのトランジションネットワークは地元の商品を売る自給自足の街作りを勧めてフードマイレージの無駄をなくそうとしています。2007年には 初期のトランジション・タウンのひとつ、デヴォンのトットネスがローカルビジネスでしか使えないトットネスポンドを始めて、お金が地域経済の中に留まるようにしました。そして各地で同じような枠組みが生み出されました。ウェールズとイングランドの境界のポーイスにあるヘイ・オン・ワイに新しいスーパーマーケットをつくる計画に反対して成功した圧力団体がありましたが、それは20の本屋を含む街の自営店の多くが閉店に追い込まれることを恐れてのことでした。スーパーマーケットは新しい学校を作ることを約束しましたが、そのグループ、プランB (Plan B) はスーパーマーケットを作らない違う方法で学校を建設する方法を考え出しました。サマセットのフルームの街では、Pixieと呼ばれるスマホアプリがスタートし、買い物客が自営店でものやサービスに支払ったらポイントがもらえるようになっています。Diversity Keeps a High Street Alive • Naomi CantonSmall traders defying the advance of online and supermarket shopping in their town

サンゴ礁との邂逅

いかに熱帯魚が気候変動を自分事にしたのかレオ・バラシが明かす。翻訳:佐藤 靖子 不安はいつも私の人生の一部でした。それはたいてい見えない場所にあるのですが、常に潜んでいて、私はそれに対処することを学ばなければなりませんでした。 私が気に入っている方法は、魚のことを考えることです。厳密には黄色いハコフグです。このハコフグは立方体で太ったチーターのような黒い斑点があり、熱帯地方に生息しています。そして未熟とはいえ情熱的なスキューバダイバーとして私が時折訪れるサンゴ礁の周りをゆっくりよろめきながら日々を過ごしているように見えます。不安が私をつまずかせそうな時、私を心配させているものが何であろうと気にも留めずサンゴの周囲を静かにかぎ回るハコフグのことを考えます。たいていはその対比に私の心配は吹き飛びます。 気候変動が世界一のサンゴ礁のどれをも脅かしているというニュースに私は打ちのめされました。サンゴ礁がこれまでに経験した温度上昇は既に世界中で十分サンゴ礁を白化させていますが、世界が直ちに炭素排出量をゼロに削減しなければ、サンゴ礁はそれよりずっと高い温度上昇に直面する可能性があります。私の人生の精神的な隠れ家であるハコフグの世界は消滅してしまうかもしれません。 気候変動が私を精神的に打ちのめしたのは初めてのことです。不思議に思われるかもしれません。気候変動の分析は私の仕事の一部で、ちょうどそれについて本を書いたところです。とはいえ、その詳細から視線を移し、それがなぜ自分にとって問題なのかを思い起こすことはほとんどありません。ハコフグによって、脅威は気候変動について私が感情的になる自分事になったのです。脅威を現実のものと思わせたのは、とある無名の魚に思いをはせることでした。  気候変動を心配する私たちは、往々にして感情について忘れています。私たちは大きな抽象的な事柄に注目して、小さな個人的なことを忘れています。私たちは北極の氷の溶解や世界の平均気温の変化について警鐘を鳴らします。こうしたことは問題であり、私のように、中には危機に瀕している遠くの土地と偶然個人的な繋がりを持っている人もいます。けれども多くの場合、抽象的な概念や遠くの土地に関する警鐘が感情に与える影響はわずかです。 これは問題です。豊かな国の一握りの人々が極端な温暖化の脅威に対し本能的に反応しても、それを阻止するのに必要な対策のための幅広い支持にはなりそうにありません。 風力や太陽エネルギーが石炭に取って代わり、冷蔵庫や電球の効率が良くなることに本気で反対する人はわずかです。こうした変化はお金を節約するか、空気をきれいにするか、あるいはその両方です。とはいえ、排出量削減の対策がもっと立ち入ったものにならざるを得ない時がくるでしょう。多くの人が旅行する方法や私たちが食べる物は変わらざるを得ないでしょう。大半の人々が気候変動を遠くの他人事と考えている限り、すぐさま目に見える利益をもたらすことのない日々の生活の転換に対する情熱を見るのは容易ではありません。 気候変動を私に現実のものと思わせたのは、黄色いハコフグの故郷にとっての脅威でしたが、多くの人々は氷床溶解のニュースに接しているので熱帯魚について感情的になることはなさそうです。課題は、地球の気候変動について私たちみんながなぜ配慮するべきなのかを物語る個人的な事柄を見つけることです。レオ・バラシ (Leo Barasi) は 、New Internationalistから出版された新刊「The Climate Majority: Apathy and Action in an Age of Nationalism(仮訳:気候変動と大衆:ナショナリズムの時代における無気力と行動)」の著者。Reef Encounters • Leo BarasiHow tropical fish made climate change personal